心理医療科学専攻

 経済性と効率のよさを追求する“ビジネスの原理”から、人間性を大切にし、心身ともにすこやかな生活者であろうとする“いのちの原理”へと、私たちの生き方の基本原理は、大きな方向転換のときを迎えています。心と体の両面から、いのちと人生と生活の質(QOL=Quality of Life)を捉えなおし、それを高める方策を見直し、新たに得られた知見を地域貢献に生かすという、高度な専門性と学際性の求められる時代です。
心理医療科学研究科は、そうした時代のニーズに応えるべく開設された、時代を先取りする教育・研究の場です。この研究科の前身は、心理学と医療福祉の二つの研究科です。
その一つ、心理学研究科は、生理・認知心理学、社会心理学、発達心理学、臨床心理学という4領域を幅広く学びながら、それぞれの領域の専門性を身につけることのできる教育・研究の場として発展してきました。
医療福祉研究科は、ソーシャルサービス専攻とコミュニケーション障害学専攻から構成されていました。ソーシャルサービス専攻では、多様化する社会福祉ニーズに対応して、地域連携をはかるコーディネーターや福祉施設のリーダーとなりうるソーシャルサービスの専門家育成をめざしてきました。コミュニケーション障害学専攻には、基礎となる言語聴覚学に明るい言語聴覚士の育成をおこなう言語聴覚学コースと、視覚科学と視能訓練学に習熟する視能訓練士を養成する視覚科学コースとがありました。いずれも、最新の知見を身につけて臨床研究能力を有する専門家の育成に重点を置いてきました。
今の研究科は、こうした実績を基盤におき、体と心の健康を生活の中で実践する健康科学という領域を加えて、さらなる専門性と学際性を実現しようとする試みです。研究科と同時に開設された、愛知淑徳大学 健康・医療・教育センター(AHSMEC/アースメック)と一体的に運用されることにより、大学という教育・研究の場が、これまで以上に高度な地域貢献機能を実現していく道が拓かれます。生活者のQOLを守るという地域貢献のための多様なプロフェッショナリティの根幹は、謙虚でいながら諦めない心です。実践と研究を両輪として取り組みながら学ぶ場の創造を、この研究科はめざしています。

設置の趣旨

 少子超高齢化社会を迎えているわが国では、健康や福祉に対する人々のニーズが一つの学問領域に収まりきらないほど複雑化・多様化し、心理学、社会福祉学、医療科学、臨床心理学の横断的な連携が強く求められています。こうした要請に応えるために、教育・研究の成果を地域社会に還元してきた二つの研究科、心理学研究科と医療福祉研究科を発展的に統合し、より広い枠組みのなかで教育・研究をすすめます。高度な専門性と学際性を併せ持つ研究科として、人々が豊かに暮らすための心理的環境、社会的環境、心身の健康、医療を総合的に探究していきます。