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随想

100周年をふりかえって (「学園随想」より)

愛知淑徳学園理事長 小林 素文

100年の昨日が明日になる。

 本年度は、愛知淑徳学園の100周年でした。
 そのための記念行事の企画を数年前から進めてきましたが、生徒・学生達を前面にだしていきたいとの思いから、キャッチコピーとシンボルマークを、生徒・学生達から募集しました。
 いずれも甲乙つけがたい作品ばかりでしたが、キャッチコピーは大学生の作品、シンボルマークは高校生のそれぞれ表題の作品となりました。
生徒・学生から数多くの応募があったこと、そして、それぞれの作品レベルが高かったことが、誠にうれしく、幸先のよい100周年の企画となりました。

ありがとうございます。

100周年の年度に入り、最初の企画は、創立記念日の5月17日に行なわれた「物故者追悼式」でした。
当日の式辞の中で昭和36年、20才の若さで先天性心臓病のために亡くなられた、愛知淑徳生の詩を紹介いたしました。

私の夢
それは、私が受けたものを、社会に返すこと
社会のために何らかのことをすること
私という人間が、長い歴史の一瞬間
生きた意味のあるように

 この淑徳生の夢は、短くとも、ひたむきでけなげな生き様に、ご家族・友人・先生達が勇気と感動を与えられたことにより、かなったものと信じます。
 それぞれの時代に、それぞれの立場で精一杯愛知淑徳とかかわり、百年の礎を築いてくださった物故者の皆様に心よりの感謝を申し上げます。ありがとうございます。

本音の語りと歌

 5月20日には、名古屋市国際会議場センチュリーホールで、中学・高校での100周年記念コンサートが挙行されました。
 本校卒業生の、女優であり歌手の宮本信子さんの心をこめた歌と、本音の語りは、中高生の心に響き、しみわたっていくようでした。
 先日、宮本信子さんにお会いした折、「あのコンサートのあと、愛知淑徳の生徒さん達からたくさんメールがきて、嬉しかった。その代表的なものはホームページにのせておきました。」と語ってくれましたので、早速ホームページを開いて見ると、「『傷ついてもいい。でも傷ついたら自分で立ち上がって』という言葉にドキッとしました。こんなに素晴らしい人が通っていた学校に、自分も通っていることをとても誇りに思います。」とありました。
 今学んでいる生徒さん達も、将来、あこがれてもらえる存在、誰かにしたわれていく人に育っていくことを心より祈りたいと存じます。

飛躍天満天

 学生・生徒達も100周年を盛り上げてくれました。9月25日から26日までは愛知淑徳高校学園祭、11月3日は愛知淑徳学園100周年記念祭、5〜6日は愛知淑徳大学祭がそれぞれ行なわれ、学生・生徒達は、若い感性で様々の企画をしてくれました。
 愛知淑徳学園祭での野外ステージでは、歴代制服のファッションショーでのモデルウォーク、模擬店では、「S」マーク入りの金太郎飴や100周年オリジナル焼き印のどら焼。
 きわめつけは、6階建ての中央棟に愛知淑徳の制服を着せてしまったことです。
 聞くところによれば、生徒達は5ケ月もの準備をして、この日に備えたとのこと。学園祭のテーマの通り、飛躍天満天(100点満点)三重花マルの生徒達でした。
 また、大学においても、記念祭では大学グランドで盛大に200発もの花火を打ち上げたり、大学祭では「きっかけはから」をテーマに多種多様な企画を練り、盛り立ててくれました。これまた飛躍天満天(100点満点)三重花マルの学生達でした。

同窓生パワー

 10月15日、愛知県芸術劇場大ホール にて「愛知淑徳学園創立100周年、大学開学30周年記念、三同窓会合同コンサート」が行なわれました。三同窓会とは、愛知淑徳高校・短期大学・大学の同窓会のことです。
 当日は、招待者を除き有料であるにもかかわらず、3000名の満席、大盛況でした。大先輩である高等女学校の同窓生には優先席を、小さなお子様連れの方には託児サービスなど、きめ細かな配慮が行き届いていました。
 一部のセレモニーでは、同窓生による見事な器楽合奏と合唱が披露され、二部では、雅楽師の東儀秀樹さんをはじめ、第一線で活躍する6人の男性アーティストのコラボレーション「光源氏さかさまに行かぬ年月よ」が上演されました。
 過去の世界の中に息づく日々の美と心を全く新しい形で表現したこの「源氏物語」のステージは、「古いけれども新しい」テーマの追求であり、伝統を大切にしつつ明日へ羽ばたこうとしている本学園のイメージにもあったものでした。素晴らしいステージに感動するとともに、こうした企画を大成功に導いてくださった、三同窓会に感謝いたします。当日は、同窓生パワーに感服した一日でもありました。

はなやかにおごそかに

 10月29日、愛知県芸術劇場コンサートホールで、学園として最大の行事「学園創立100周年記念祝典・コンサート」が開催されました。
 それは、名古屋フィルハーモニーによる祝典序曲で始まりました。この祝典序曲は、指揮を自らされた北爪道夫先生の作曲です。北爪先生は、愛知淑徳大学歌「青春無限」を作曲されていますが、国内作曲家に与えられる最高の栄誉「尾高賞」を受賞された素晴らしい方です。先生は、この祝典序曲への思いを次のように述べています。
 「学園創立100周年、誠におめでとうございます。明治・大正・昭和そして平成と多くの時代と様々な歴史の流れのなかをくぐりぬけながら、幾多の立派な先達を育てあげてこられた貴学園の壮大な偉業を思うとき、この記念すべき催しに微力ながら参加させて頂けることは、私にとってこのうえなく光栄なことであり、その感慨は胸に迫るものがあります。『愛知淑徳学園祝典序曲』にはそうした私の思いとともに、今日の学園の繁栄をともに祝賀し未来へのあらたな希望をもって歩み進めたいという願いを込めています。」
 この祝典序曲は大好評で、多くの方からCDがあれば是非送っていただきたいと依頼されました。
 この序曲にこめられた思いの通り、愛知淑徳も、100周年を機に未来への新たな希望を抱き、一歩一歩進んでまいりたいと存じます。
 祝典序曲のあと、やはり北爪先生作曲によるファンファーレにつづき、学園の在学生・卒業生・教員など、100周年を記念して結成された200名をこえる音楽仲間、キルシュ・ブリューテ(さくらの花)楽友会と名フィルとのコラボレーションによる学園歌と大学歌は、華麗で荘厳でした。ご招待をしました多くの方から、涙が出てしかたがなかったとの便りをいただきました。
 舞台はさらに、ヴァイオリンのライナー・ホーネック氏、三輪郁さんのピアノ、ヴォルフガング・トンベックさんのホルン、錦織健さんのテノール、いずれも名フィルをバックにプロの技を披露し、聴衆を魅了いたしました。
 最後の曲「美しき青きドナウ」は、キルシュ・ブリューテ楽友会と名フィル、そしてホーネック氏やトンベック氏も加わっての合奏。そして、アンコール曲は、私が唯一選曲をお願いした「ラデッキー行進曲」で、聴衆と一体感の中、さながら新年のウィーンでのコンサートを思わせる、華やかでおごそかな中、全ての幕を閉じました。
 学園としての最大の行事でしたが、学園に関係する全ての皆さんのご協力と献身的な努力の中で成功裡に終えることができましたことに、心よりの感謝の気持ちで一杯となりました。

 百周年の様々の行事を通じて、学園に関係するものが一体感をもちえたことが、一番の成果だと存じます。これからも、こうした一体感を大切に生徒・学生達の教育にあたっていき、皆様のご期待に応えてまいりたいと存じますので、今後とも宜しくご指導の程、お願い申し上げます。