報告

2011年10月20日

studio-L 山崎亮 講演会 コミュニティデザイナー 人と人とをつなぐ仕事とは

studio-L 山崎亮講演会 コミュニティデザイナー 人と人とをつなぐ仕事とは

山崎亮氏 <プロフィール>

 1973年愛知県生まれ。コミュニティデザイナー。株式会社studio-L代表。京都造形芸術大学教授。
「人と人をつなぐ」ことを第一に考え、まちの課題を、まちに住む人たち自身の手で解決するための方法を提案する「コミュニティデザイン」という仕事に携わる。離島、地方自治体、公園、デパート、病院など、仕事のフィールドは多岐にわたる。
著書に『コミュニティデザイン 人がつながるしくみをつくる(学芸出版社)』、『テキスト ランドスケープデザインの歴史(学芸出版社:編著)』、『震災のためにデザインは何が可能か(NTT出版:共著)』などがある。

デザインは、社会の問題を解決するために生まれたもの。
その本来の力を、山崎氏はさまざまなまちで発揮させています。

10月20日(木)、コミュニティデザイナーとして活躍している山崎亮氏を講師に迎えた、「studio-L 山崎亮講演会 コミュニティデザイナー 人と人をつなぐ仕事とは」が開催されました。
「コミュニティデザイン」とは、地域の課題を解決するために、地域に住む人々が自ら行動していくときの手助けとなるデザインです。山崎氏が代表を務める株式会社studio-Lは、「デザインの力で人と人を結ぶ」ことをコンセプトに幅広いプロジェクトに取り組み、まちづくりや公園の運営計画、施設のデザインなどさまざまなデザインワークをおこなっています。
全国のまちを奔走している山崎氏の貴重な講演会とあって、約280人収容の大教室には本学の学生や教職員、卒業生だけでなく、建築を学ぶ他大学の学生や建築業界の方々など大勢が集まりました。会場に期待感が満ちる中、大きな拍手と共に登壇した山崎氏は、デザインの歴史から語り始め、世界のコミュニティデザインやご自身が手掛けたプロジェクトについて事例も交えながら力強く説明していきました。

 デザインが生まれたのは産業革命のとき。都市に集中する人々の暮らしを向上させるために、まちや住居の空間を美しく、機能的にするためにはどうしたらいいか?という問いの答えとして、「デザイン」が発生したといわれています。山崎氏は「現代のデザインには"コマーシャルデザイン(売るためのデザイン)"と"ソーシャルデザイン(よりよい社会をつくるためのデザイン)"があります。本来、"デザイン"は社会的なものであるはずなのに」と語りました。今、世界では、困っている人を解決へと導くためのコミュニティデザインが注目されています。マラリア予防のための蚊帳、水の汲み上げや運搬を楽にするアイデアアイテム、大型ハリケーンの被災者自立のための仕組み...。「日本ではこうしたデザインはなかなか紹介されないため、コミュニティデザインの認知度も低いのが現状。だけど僕は困っている人のために、デザインの力を役立てていきたい」と力強く語った山崎氏。会場の皆さんは熱い言葉の数々を真剣に受け止め、熱心にペンを走らせながら聞き入っていました。

 山崎氏の数あるプロジェクトの中からは、2件の事例が紹介されました。
ひとつは、鹿児島にある「マルヤガーデンズ」。地域に人を呼び込み、かつての賑わいを取り戻すために、老舗の百貨店を「ショッピング+さまざまなコミュニティが活動できる場」に変えました。山崎氏は「地元のNPOやクラブの活動場所となり、今では約130団体が登録中。料理教室、ヨガ、写真展、コンサートなど、毎日13団体がイベントを開催し、多くの人が集まっています。人と人とのつながりが生まれていき、新しいコミュニティがつくられています」と笑顔で説明しました。

 もうひとつは、三重県の島ヶ原地区で現在進行中の「穂積製材所プロジェクト」。都市・農村交流、地域の人材育成、環境保全を目的に、製材所内に家具づくり教室や宿泊スペースをつくり、人が集まる場所へと変えています。「プロジェクトがスタートして4年目。林業やものづくりに興味がある関西圏の大学生約1,300人も参加しています」と山崎氏が写真を見せながら紹介すると、学生たちは興味深そうに見入っていました。
そして講演の締めくくりとして山崎氏は、「さまざまな問題を解決する方法のひとつが、デザイン的思考。僕はデザインの力で"人と人のつながり"を必ずつくりたい。今、デザインや建築を学んでいる学生の皆さん、そのスキルを活かして世の中のどこに切り込むのか?と考えながら自分の道を進んでください」と力強いメッセージをくださいました。
今回の講演会で発せられた山崎氏のパワフルな言葉の数々を胸に、学生たちはデザインの力を信じながら学びを広げ、深め、社会でその力を発揮させていくことでしょう。

「studio-L展 愛知巡回展」を山崎氏も見学。時間が許す限り、学生たちと交流しました。

 10月18日(火)から11月4日(金)まで、長久手キャンパス8号棟のミニギャラリーにて「studio-L展 愛知巡回展」が開催されました。株式会社studio-Lのプロジェクトパネルやプロジェクトブックなどが展示され、東京や大阪でも好評を博したスペシャルイベントです。講演の後、山崎氏も立ち寄って見学。多くの来場者とその関心の高さに目を細めていました。また、新幹線の時間が迫る中、学生たち一人ひとりと交流し、激励の言葉もかけてくださいました。