報告

2011年10月27日

第4回 文学部 講演会 文化資産としてのイェイツとアイルランド

第4回 文化部 講演会 文化資産としてのイェイツとアイルランド

アイルランドの国民的作家・イェイツの生涯と作品を通じ、
英文学科の学生たちが文学の奥深さを学びました。

20世紀のアイルランドを代表する詩人・劇作家である、ウィリアム・バトラー・イェイツ。1923年にアイルランドで初めてノーベル文学賞を受賞し、いまなおアイルランド文化に大きな影響を与え続ける偉大な作家です。そんな彼の生涯をたどる全国巡回パネル展「ウィリアム・バトラー・イェイツ―その生涯と業績―」が、10月19日(水)から30日(日)まで星が丘キャンパスにて開催されました。その関連イベントとして10月27日(木)には、英文学科主催の講演会「文化資産としてのイェイツとアイルランド」がおこなわれました。
講師は、25年間、本学文学部英文学科で教鞭を執られた、名誉教授の大野光子先生。日本を代表するアイルランド文学研究者として、アイルランドにも多くのファンがいるほど国内外で広くご活躍されています。会場となった長久手キャンパス ミニシアターには英文学科の学生を中心に大勢が集まりました。

 大野先生は、ご自身が撮影されたアイルランドの風景写真などを使ってアイルランドの地理・歴史・文化などをわかりやすく説明し、その上でイェイツについて話を進めました。イェイツが生きた19世紀後半から20世紀前半のアイルランドは、激動のさなかにありました。未曾有の大飢饉、イギリスからの独立運動など、人々の暮らしを揺るがす大きな出来事が相次ぎ、政治的・社会的に大きな変化を遂げていた時代です。大野先生は「アイルランドのケルト神話を深く愛し、祖国の変わりゆく姿を多くの詩に込めたイェイツは、アイルランド文化の復興や国家の確立に大きく貢献しました」と力強く語りました。
イェイツの詩を数作品、英語の原文そのままで読み上げ、その世界を解説した大野先生。学生たちはイェイツの愛情や愛国心などにふれ、先生の言葉を熱心に書きとめながら、イェイツの作品や彼自身の生涯、奥深いアイルランド文化への知的好奇心を強めていました。

 「21世紀に入り、近年のアイルランドはバブル崩壊という経済危機を迎えました。国を建て直すために話し合われた結論は、"アイルランド文化を国内外にアピールすることこそ、国の力になる"ということ。そして、イェイツを広告塔としたイベントなどが次々と打ち出されました」と大野先生。10万人以上の来場者を記録したアイルランド国立図書館でのイェイツ展、イェイツ文学と観光産業を融合させた「エデュケーショナル・ツーリズム」を例に挙げ、イェイツがアイルランド国内外の人々に愛され続けていることを教えてくださいました。さらに、今回の講演会やパネル展もアイルランド文化を伝える活動の一環であるとの説明に、学生たちはより真剣なまなざしで話に耳を傾けていました。
最後に大野先生は、「アイルランド文化の伝承者としてイェイツが選ばれたのは、彼の人生や作品をたどると、アイルランドの社会・歴史・文化・人々が見えてくる、稀有な存在だからです」とアイルランドやイェイツを知る醍醐味ともいえるお話で講演の幕を閉じました。
今回の貴重な講演会を通して学生たちは、アイルランドへの興味を深め、さらに、国の経済や人々の心も支えるイェイツ文学の力強さに深く感動し、学びへの意欲をいっそう高めたことでしょう。

全国巡回パネル展 ウィリアム・バトラー・イェイツ ―その生涯と業績―

平成23年10月19日(水)~30日(日) 星が丘キャンパス
主催アイルランド大使館
共催愛知淑徳大学文学部英文学科
愛知淑徳大学国際交流センター

 世界各国で開催され、日本では早稲田大学や同志社大学などを巡回した、イェイツの巡回展。この秋、愛知淑徳大学での開催となりました。会場には13枚のパネルが展示され、年を重ねるごとに作風を成長・発展させていったイェイツの生涯について、時代背景とリンクさせて理解を深めることができました。訪れた人々は、100年以上前の激動の時代を生き抜き、刻々と変わり続ける祖国を見つめ続けたイェイツの作品の奥深さを、じっくりと味わっていました。