報告

2012年01月27日

表現文化・メディアプロデュース学会共催学術講演会 短歌の楽しみ

愛知淑徳大学 表現文化・メディアプロデュース学会共催学術講演会 短歌の楽しみ

穂村弘 氏<プロフィール>

歌人として歌誌「かばん」に所属し、短歌、エッセイ、評論など幅広いジャンルで活躍。
大学在学中に短歌を詠み始め、1986年、連作「シンジケート」で角川短歌賞次席。
第1歌集『シンジケート』(沖積舎)を刊行後、『手紙魔まみ、夏の引越し(ウサギ連れ)』(小学館)、エッセイ『世界音痴』(小学館)、『君がいない夜のごはん』(NHK出版)、詩集『求愛瞳孔反射』(新潮社)、ショートストーリー集『車掌』(ヒヨコ舎)など数々の著書を刊行。
2001年、高校教科書に短歌が収録される。
2008年、評論集『短歌の友人』(河出書房新社)で第19回伊藤整文学賞、「楽しい一日」で第44回短歌研究賞を受賞。日本経済新聞歌壇選者に就任。

心の機微を豊かに表現する、言葉の選び方、組み合わせ方...。
歌人・穂村弘氏が短歌の奥深い魅力について熱く語りました。

短歌、エッセイ、評論など多彩な分野で活躍している歌人・穂村弘氏を講師にお招きした表現文化・メディアプロデュース学会共催 学術講演会「短歌の楽しみ」が1月27日(金)に開催されました。会場となった大教室には、短歌などの言語表現に関心を寄せる本学の学生や学外の方々など多くの方が集まりました。穂村氏のユーモアを交えた講演会は、やさしい笑いに包まれた、あたたかな時間となりました。

 穂村氏は、さまざまな作家の短歌と、それをあえて改悪した短歌を詠み比べ、短歌特有の表現方法についてわかりやすく解説してくださいました。「短歌には、本来あるべき説明が省かれていることがあります。その省かれているものを、人は自分の心で想像する。この"想像する過程"こそ、短歌の楽しみです。想像することで詠み手とのコミュニケーションが生まれ、わずか5句31音からさまざまなものが見えてきます。人は他者とのコミュニケーションを欲する生き物。短歌が今の時代にも流行する理由は、人の本能的なところからきているのでしょう」と語った穂村氏。学生たちは短歌の奥深い世界に触れ、真剣なまなざしを向けて聞き入っていました。

 「さまざまな人が生きる社会が成り立つためには、効率的なもの、均一的なものが必要となります。しかし、私たちは、唯一無二の存在として生きたいという気持ちを持っています。だから、効率が悪くて、無意味で、お金にならないものも、ときとして重要なものになります。短歌にはこうした人の心がストレートに反映され、それゆえに人の心に響くのでしょう」。穂村氏は人が求める本質的な価値観にも言及しながら、人々が短歌に込める心情について語り、短歌という表現手法の魅力について学生たちに伝えました。
講演会の最後に質疑応答がおこなわれ、会場からは短歌のスキルを磨く方法、これからの短歌が発展する方向性、日々を楽しく過ごすヒントなど、さまざま質問が投げかけられました。穂村氏は1つひとつ丁寧に答え、学生や一般の方々との交流を楽しみながら熱い短歌談義に花を咲かせました。
5句31音に人のさまざまな思いを込めることのできる、可能性に満ちた短歌の世界。今回の講演会を通じて学生たちは短歌のおもしろさを再認識し、さらに穂村氏の言葉から各自の創作活動への大きなパワーを得たことでしょう。