報告

2012年03月16日

現代社会学会・メディアプロデュース学会共催講演会 「あいち」におけるトリエンナーレの可能性 ~「あいち」という固有の場所からグルーバルなアートの受発信~

現代社会学会・メディアプロデュース学会共催講演会 「あいち」におけるトリエンナーレの可能性 ~「あいち」という固有の場所からグルーバルなアートの受発信~

「あいちトリエンナーレ2013」の開催に向け、
都市におけるアートイベントの可能性が語り合われました。

3年ごとに開催される、国際芸術祭「あいちトリエンナーレ」。会期中の72日間に57万人を超える来場者を記録した「あいちトリエンナーレ2010」の成果をふまえ、現在は第2回目となる「あいちトリエンナーレ2013」の開催に向けた準備が進められています。3月16日(金)には、「あいちにおけるトリエンナーレの可能性 ~あいちという固有の場所からグローバルなアートの受発信」と題した講演会が長久手キャンパスでおこなわれました。
講師としてお迎えしたのは、あいちトリエンナーレ2013の芸術監督を務める五十嵐太郎氏、横浜トリエンナーレの開催に携わる池田修氏、本学の非常勤講師であり、あいちトリエンナーレ2013のアーキテクトを務める武藤隆氏。「あいち」で国際芸術祭を開催する意図、アートイベントにおける建築やデザインの可能性などについて語り合っていただくことを目的に、メディアプロデュース学部とその前身である現代社会学部の共催講演会としておこない、一般の方々にも広く聴講を呼びかけました。会場には本学の学生をはじめ、建築やアートの分野に従事する方々が大勢集まり、3名の貴重なお話に熱心に耳を傾けていました。

 あいちトリエンナーレ2013のテーマは、"揺れる大地-われわれはどこに立っているのか:場所、記憶、そして復活"。五十嵐氏は、「このテーマには、東日本大震災の被災地を訪れた私自身の実感や考えが強く反映されています。アートの重要な役割のひとつは"記憶"。アートには、人の心に印象深くとどまり、記憶を呼び戻し、希望を復活させる力があります。そのアートの力を社会に問いかけ、震災以降に開催される都市型の国際展としての意義も持たせたいと考えています」と芸術監督としてトリエンナーレにかける思いを力強く語ってくださいました。また建築史家・建築評論家でもある五十嵐氏は、建築もアートと同じように鑑賞し、都市建築やまち全体の魅力が再発見できるアートイベントにしたいという構想についても言及しました。

 あいちトリエンナーレ2010に引き続き、アーキテクトとしてあいちトリエンナーレ2013にも携わる武藤氏は、アートにおける空間の重要性について、あいちトリエンナーレ2010の作品をスクリーンに映し出しながら解説してくださいました。「2010年のメイン会場のひとつだった長者町会場には、ビルの壁を使ったアート作品が数多く展示されました。都市部にも関わらず空き地や更地が多くあるというまちとしてのデメリットを、広い空間があるというメリットとして有効に活用した事例です。長者町が持つ空間の個性が、アートを成り立たせたのです」と語ってくださいました。

 また、横浜トリエンナーレの開催に長年携わっている池田氏は「今、話題になっているイベントはすべて都市が関わっているものばかりです。私たちがおこなっている横浜トリエンナーレもまちを元気にしていくためのツールとして捉えています。3年に1回開催するお祭りを通して、3年の間に横浜がどれだけ成長したか、皆さんに見てもらう場であると考えています」と都市型のアートイベントとまち全体の関わりについて説明してくださいました。

 講演会の後は、来場者を交えたトークセッションがおこなわれました。東日本大震災の復興支援に関わる話、まちにアートを根づかせるためのポイントなど、さまざまな意見を熱く交わすことのできた、講師・来場者双方にとって有意義な時間となりました。そして建築やデザイン、メディアなどを学ぶ学生たちにとって、都市型アートイベントへの考えを深める機会となり、さらに、あいちトリエンナーレ2013への期待を高めるきっかけとなったことでしょう。