報告

2014年10月08日

日進市制20周年 7大学連携学長記念講座

日進市制20周年 7大学連携学長記念講座

平成26年9月6日(土) 日進市立図書館 視聴覚ホール

地域の方々を対象とした日進市の記念イベントで
本学の島田修三学長が特別講座をおこないました。

 名古屋市の東に位置する日進市は、2014年で市制20周年。その記念イベントとして「7大学連携学長記念講座」が9月から12月にかけておこなわれます。その第1回目の講師を務めたのが、本学の島田修三学長でした。朝から市民の皆さんが続々と来場し、定員100名をこえる盛況ぶり。会場は特別講座への期待感で満ちていました。
 開講に先立ち、挨拶をした萩野幸三市長は「7大学のご協力を得て、先生方の講座を開講できるのは、各大学との連携協定を結ぶ日進市ならではの貴重な機会です。高度な教育・研究機関が近隣に集まる、素晴らしい地域で暮らしていることを実感しながら、受講していただけたらと思います」と語りました。そして、あたたかな拍手とともに登壇した島田学長。20年以上前に日進市で講演会をおこなったエピソードを交えて自己紹介し、和やかな雰囲気のもとで講座をスタートさせました。

四季を愛でる日本人のルーツを、和歌から紐解く。

 「日本人は、四季やその移ろいを感じる感覚に優れています。どんな花が咲くか。どんな生き物が鳴くか。季節の風物に敏感です。雨ひとつとっても、春雨、五月雨、時雨など多様な言葉があり、降り方の違いを細やかに表現しています。そうした季節感は、実は"和歌"の発達とともに磨かれたのです」。

 歌人としても活躍する島田学長が語ったテーマは、「季節と和歌」。日本の時間的秩序を司る暦の歴史から、順に説明しました。天皇は、天の動きを読み、国を治める責任者。季節の節目ごとに宴を開き、天への感謝の気持ちを込めて詩歌を捧げていました。それが、人々の心に季節感を生み、自然を鑑賞する美意識を芽生えさせ、歌に結晶。「季節歌は暦の普及、歌会の流行とともに広まり、室町時代の連歌、江戸時代の俳諧として引き継がれました。その過程で、日本人の伝統的な季節感が形づくられ、今の私たちの心に息づいています」と島田学長。市民の皆さんは、当たり前のように感じていた"季節感"の成り立ちを理解し、日本文化の繊細さや奥深さに感銘を受けていました。

わずか31音から美しい景色を心に広げる。その言葉の力に感嘆。

 また、講座では島田学長が14首の和歌を一つひとつ解説し、市民の皆さんとともに味わいました。中でも島田学長が「これはすごい歌です!」と紹介したのが、次の3首でした。

霞立ち木の芽もはるの雪降れば花なき里も花ぞ散りける――紀貫之『古今和歌集』
大空は梅のにほひに霞みつつ曇りも果てぬ春の夜の月――藤原定家『新古今和歌集』
秋風にうき雲たかく空すみて夕日になびく岸の青柳――京極為兼『風雅』

 「雪を桜に見立てたり、花の香りで霞むと表現したり、目と心の動きを同時に表したり...。こうした和歌を読むと、わずか31音にもかかわらず、詠まれた季節の風景が映像として心に浮かびますね。"ことばの力"に驚かされます」と島田学長が力強く語ると、皆さんも感嘆の声をあげ、季節感を日本人の心に花開かせた"ことばの力"を噛みしめていました。

 地域の皆さんの知的好奇心を刺激し、新たな学びのトビラを開いた、今回の講座。今後も愛知淑徳大学は地域との連携を深め、大学の知を皆さんに還元していけるよう努めます。