成長

2018年03月19日

先生やゼミの仲間たちの協力を得て、書き上げた小説。「第9回日経小説大賞」の最終候補5編に選ばれました。

vol.51

メディアプロデュース学部(現・創造表現学部)OG [2016年度卒]

「第9回日経小説大賞」の最終候補5編に。

 日本経済新聞社と日本経済新聞出版社が共催する「第9回日経小説大賞」。その最終候補5編に卒業制作で書いた小説『サイレントレター』が選ばれました。
 私は当時、清水ゼミに属していました。清水ゼミは小説の執筆を主として行うゼミで卒業制作の課題は、自分の作品を小説のコンテストに応募すること。小説のコンテストはそれぞれカラーがあるので、作品の内容を分析し、どのコンテストに応募するのがいいのかなどを自分で考え、作品づくりをしていきます。
 日経小説大賞は400字詰め原稿用紙換算で300~400枚程度の長編小説を募集しており、ジャンルは限定していません。私の小説の内容を考えると日経小説大賞がいちばん適していると考えたのですが、文字数が既定の量に達していませんでした。現状、150枚程度しかなかったので、そこから文字数を足し、何とか300枚まで延長させました。小説の最後が続きを匂わせるような終わり方だったので、その先を書き足した、という感じです。

先生やゼミの仲間たちの協力を得て、書き上げた小説。「第9回日経小説大賞」の最終候補5編に選ばれました。

死刑囚施設で働く主人公と死刑囚の関わりを描く。

 『サイレントレター』は、死刑囚収容施設で働く主人公の青年が死刑囚とかかわり、コミュニケーションを取っていく中で、死とは何か? 死刑とは何か? を考え、その倫理観に悩み、苛まれる物語。主人公の青年のほかに検事、死刑囚、被害者家族、施設の職員、死刑反対を訴える人々などが登場し、さまざまな立場から死と死刑を捉えていきます。
 私はもともと「死」に関心があり、卒業制作も死をテーマにした小説を書こうと思っていました。私たちにとって死や死刑は、非日常の世界ですが、死刑を仕事として関わっている人たちにとっては日常の世界です。これから死のうとしている死刑囚と、死刑を仕事にしている人たちは、いったいどのような日常を送っているのか。実際に死刑囚収容施設なんてものはありませんが、そういった舞台を用意することで、物語化しやすいように設定しました。小説を書く上で、図書館で死刑に関するルポルタージュを読んだり、刑務官が執筆した書籍などを読み込み、小説の材料にしました。

先生やゼミの仲間たちの協力を得て、書き上げた小説。「第9回日経小説大賞」の最終候補5編に選ばれました。

書くことに意欲的なゼミの環境が刺激と励みに。

 この小説は自分の作品ですが、一方で自分の作品ではないとも言えます。それは清水先生やゼミの仲間たちからいろいろな意見をもらい、それを反映しているからです。私が死に関心があることは、ゼミ生も知っていて、これまで死をテーマにして書いた小説の多くを読んでもらっています。「田中の小説は必ず人が死ぬ」と揶揄されながらも、仲間からたくさんの意見を元に何度も書き直し、精度を高めていきました。
 私は長編小説を書くのが苦手で、これまで短編小説ばかり書いてきました。今回、これだけの量にチャレンジできたのも、仲間たちの影響が大きいです。ゼミに来れば、全員が"小説家"です。書くことに意欲的で頑張っている仲間たちの中に入り、小説を書けたことは大きな刺激になったし、励みにもなりました。最終選考に残ることができたのも、みんなの想いが後押ししたのだと思っています。