交流

2023年04月10日

建築・インテリアデザイン専攻 優秀作品展2023

建築・インテリアデザイン専攻 優秀作品展2023

2023年2月21日(火)~26日(日) 名古屋市民ギャラリー栄 第1・第2展示室

名古屋市民ギャラリー栄に1~4年生の優秀作品を展示。
建築家によるミニレクチャーも実施され、建築についての学びを深めました。

 創造表現学部 建築・インテリアデザイン専攻は、建築や都市などの空間設計、まちづくりなど建築分野について幅広く学修しています。2023年2月21日(火)から26日(日)の6日間、専攻に所属する1~4年生の作品を展示する「優秀作品展」が、名古屋市民ギャラリー栄の第1・第2展示室で開催されました。展示されたのは、卒業プロジェクトの設計制作12点・論文3編と、1~3年生の実習課題の優秀作品18点です。戸建住宅や集合住宅のほか、文化施設や火葬場、学校などの設計図面・模型、名古屋城やコンクリート耐性に関する論文など、独創的なアイディアや社会貢献への考察がされた多様な作品が並びました。

建築・インテリアデザイン専攻 優秀作品展2023

教育学科 松井ゼミ「国際交流フェスタ in ながくて2023

建築・インテリアデザイン専攻 優秀作品展2023

教育学科 松井ゼミ「国際交流フェスタ in ながくて2023

建築・インテリアデザイン専攻 優秀作品展2023

教育学科 松井ゼミ「国際交流フェスタ in ながくて2023

 展示会の初日である2月21日(火)には、建築家の中山英之氏によるミニレクチャーと、出展作品の審査が行われました。中山氏は2021年に「デザインワークショップ」の授業の一環として、中山英之展「,and then」の愛知巡回展と講演会を本学の長久手キャンパスで開催しました。展覧会場の空間設計から広報活動までを、今回の卒業プロジェクトに参加した4年生が手がけており、中山氏は学生との再会を大変喜んでおられました。ミニレクチャーでは、中山氏の考える「建築のアプローチ」について語られ、建築などの人工物は他の人工物と比較されることで初めて「大きさ」という概念が生じることを、過去の建築作品や作品「かみのいし」などを例に挙げながら解説されました。また、建築家は縮尺を用いることで人の認知に入り込み、新たな大きさの基準を制作することが可能であることを伝えました。

建築・インテリアデザイン専攻 優秀作品展2023

教育学科 松井ゼミ「国際交流フェスタ in ながくて2023

建築・インテリアデザイン専攻 優秀作品展2023

教育学科 松井ゼミ「国際交流フェスタ in ながくて2023

建築・インテリアデザイン専攻 優秀作品展2023

教育学科 松井ゼミ「国際交流フェスタ in ながくて2023

建築・インテリアデザイン専攻 優秀作品展2023

教育学科 松井ゼミ「国際交流フェスタ in ながくて2023

 ミニレクチャーの後に行われた出展作品の審査では、ポスターセッションとして30名の学生がプレゼンテーションをおこないました。学生たちは制限時間の中で作品のコンセプトや設計意図、計画する上で意識した点などを発表し、作品への想いを簡潔ながらも熱くアピールしました。中山氏は学生一人ひとりの発表に対し真剣に耳を傾け、作品への質問や感想、アドバイスを伝え、一次審査の結果、5作品が選定されました。二次審査では中山氏から学生へのヒアリングが追加で行われ、審査の末、優秀作品賞1名と奨励賞2名が決定しました。

 中山氏は「前例がない設計に挑んでいる学生が多く、建築の世界にいて良かったと改めて思える作品ばかりでした。また、愛知淑徳大学には、本質的なことについて近道をせず遠回りをして議論する良い風土があることを、どの作品からも感じられました。高レベルな教員や学生に囲まれた環境で学べるのはとても素晴らしいことだと思います。今後も、自分にしか考えられないことに取り組み続け、未来につなげてください」とメッセージをいただきました。その後受賞者へのトロフィー授与が行われ、会場は盛大な拍手に包まれました。

 中山氏からのミニレクチャーや審査は、建築家を目指す上で必要となる考え方を知る貴重な機会となりました。今回の優秀作品展で得た学びや発見が、今後の設計課題や卒業プロジェクト、就職先での業務など、学生たちの将来に大きくつながることでしょう。学生たちの今後の成長が大変楽しみです。

受賞者のコメント

建築・インテリアデザイン専攻 優秀作品展2023

■優秀作品展賞(中山賞)
建築・インテリアデザイン専攻3年 
牧 嘉乃さん
「移牧集住」

 受賞した作品は「空間設計Ⅲ」の課題で、商人の街として栄えた名古屋市の那古野町を対象地域とし、こだまのように周辺環境を汲み取って新しい形にする設計をテーマとした「歴史性を取り込んだ集合住宅」を提案しました。
 中山さんのレクチャーや作品への講評から、自分が疑問に思っていることを追求して形にしていくことが大切であると改めて感じました。今回は3作品を出展し、ハードではありましたが今の自分の実力を知るよい機会となりました。また、昨年に優秀作品展賞をいただいたことが、1年間の励みになりつつもプレッシャーになっていたため、今回の受賞は自分にとって意味あるものになりました。今後はもっと高みを目指し、さまざまな設計課題で力試しをしていきたいと考えています。

建築・インテリアデザイン専攻 優秀作品展2023

■奨励賞
建築・インテリアデザイン専攻2年 田口 廣さん
「RYOICHI KUROKAWA - 黒川良一 -」

 演習科目「空間設計Ⅱ」において、市営の美術館を仮定し、アーティスト「黒川良一」さんの美術館を設計しました。黒川さんの現実の風景を分解し再構築する制作手法から、作品の持つ偶然性に着目し、「脱・計画建築」を掲げ、建築に携わっていない方へ外観の模型を制作してもらい、建物として成り立つよう内部設計をおこないました。中山さんからアドバイスをいただいたことで「計画からの脱却」という今後のテーマを発見することができました。これからも建築課題に真剣に取り組み、スキルだけではなく表現力や思考力を磨き、よりよい設計ができるよう成長したいです。

建築・インテリアデザイン専攻 優秀作品展2023

■奨励賞/卒業プロジェクト 設計制作 優秀賞
建築・インテリアデザイン専攻4年 石本 瑞姫さん
「娑婆聖地抄」

 卒業プロジェクトとして自分と周りの人との付き合い方を考えるきっかけを与えたいと考え、さまざまな価値観や考え方を持つ6つの聖地を提案しました。例えば「投げ入れ堂」をモチーフにした作品では、高層ビルの上階に、地下から連なる階段を上ることでしかたどり着けないお堂を設計しました。実在する修行の場を身近な場所に置き換えることで、異なる価値観も理解しやすくなるのではと考えています。無理に理解しようとせず、相手の価値観を認め合うことが多様性であるという気づきを卒業制作を通じて表現することができ、中山さんからも作品を通して伝えたかった本質を評価していただけました。今後も、他者理解や多様性について知識を深めていきたいです。

建築・インテリアデザイン専攻 優秀作品展2023

■卒業プロジェクト 設計制作 UAD賞(卒業制作最優秀賞)
建築・インテリアデザイン専攻4年 三輪 ひとみさん
「おなじそらの下で~母子生活支援施設現代化計画~」

 母子生活支援施設のほとんどが塀に囲まれ、社会との距離を感じる建築物が多いことを知り、自立支援を本当の意味でサポートする施設を設計したいと考えました。愛知県内に13軒ある母子生活支援施設の調査だけではなく、実際に施設へボランティアに行き、利用者や施設の方の現状を見聞きしたことで、現実的な課題を発見することができました。「ウチ」「ナカライ」「ヨリドコロ」という空間性質を持ち、パーソナリティを保ちながらも、社会とのつながりを持つことができる施設を設計しました。今回、学内の審査会でUAD賞をいただけたことに、確かな手ごたえを感じており、学外のコンペティション等へも挑戦したいと考えています。

建築・インテリアデザイン専攻 優秀作品展2023

■卒業プロジェクト 設計制作 優秀賞
建築・インテリアデザイン専攻4年 坂野 未奈さん
「光陰感じる弔い ― 命ある定め 最期迎える拝送建築 ―」

 祖母の葬式に参列した際、葬儀場や火葬場が暗く重々しい空間であると感じ、光や自然にあふれた開放感のある建築にしてはどうかと考えました。建物は、広い窓を設けることで自然光が入り、建物全体が明るくなるように設計しました。また、建物のどこからでも自然豊かな景観が見えるよう形状や素材を工夫し、最期のお別れを明るく穏やかに迎えられるような空間を目指しました。景観を損ねず地域になじむ建築になるよう、地形に沿った形状や煙突を無くすことなども設計に取り入れています。卒業プロジェクトの当初から目標であった賞をいただき嬉しく思います。今後は、住宅だけではなく施設の建築に携われるよう、努力を重ねていきたいです。

建築・インテリアデザイン専攻 優秀作品展2023

■卒業プロジェクト論文 UAD賞(卒業論文最優秀賞)
建築・インテリアデザイン専攻4年 渡邉 澪さん
「ダウエル効果による内部応力の分布に関する実験方法の開発」

 コンクリートに埋め込んだ鉄筋にせん断力を与えた際、ひび割れによる非弾性状態になったコンクリートのメカニズムは明らかにされていません。実験を用いた卒業研究を行いたいと考えていたため、コンクリートの内部応力を解明する実験方法の開発を行うことを決めました。研究を進める中で、コンクリートが割れにくくなるよう、部材を全ねじから丸鋼への変更を行うことや、鋼材の破断を起こすためにはコンクリート強度や厚みを意識する必要があることに気づくなど、実験の土台となる情報を修得することができました。研究を通して部材の特徴をより理解できただけではなく、失敗を分析し改善策を考え実行する力も身につきました。今回の経験を、仕事にも大いに役立てていきたいです。

建築・インテリアデザイン専攻 優秀作品展2023

■卒業プロジェクト論文 優秀賞
建築・インテリアデザイン専攻4年 磯谷 響さん
『健康寿命延伸の観点からみた集落環境整備の在り方に関する基礎的研究~岐阜県可児市久々利を事例として~』

 農業が盛んである地元地域の高齢化に着目し、高齢者が安心して農業に従事できる集落環境づくりについて、課題把握とサポート内容を考察しました。まずは地元地域の65歳以上の世帯の方にアンケートを行い、支援や介護を受けている人を健康レベル別に分類し、次に農業意向や課題についてクロス集計を実施しました。結果、多くの高齢者が現役で農作業に携わっており、続ける意向を示していることが明らかになり、農業が行える環境づくりには農副サービスの提供が求められるため、農業サポートとの連携が必要であることが分かりました。日本が直面する課題の解決に貢献する研究結果となり大変嬉しく感じています。

建築・インテリアデザイン専攻 優秀作品展2023

■卒業プロジェクト論文 優秀賞
建築・インテリアデザイン専攻4年 塚本 恵伍さん
『歴史的建築物の復元保存の意義~名古屋城天守を事例として~』

 現在、名古屋市で進められている「名古屋城天守木造復元計画」について、議論や問題点が多いことを知り、計画の利点と欠点について過去の事例をもとに考察しました。調査するうち、現存する鉄筋コンクリート造りの天守閣は、戦争復興のシンボルが目的であったため、構造の全く違うまま建てられていたことが発覚し、城の文化財的価値を取り戻すため、木造復元計画が実行されていたことを知りました。また、城を再建する上で「エレベーター問題」と「石垣問題」の解決が議論されていることを知り、計画実行のためには市民への丁寧な説明が必要であるとの結論を得ました。事例研究に注力したことで、過去や現在の課題に対し具体的な理由付けを行うことができたと感じています。