交流

2023年09月08日

健康相談室 医療講演会「今こそめざそう 健康長寿」

2023年7月8日(土)長久手キャンパス ミニシアター

大学とクリニックが連携し、市民の方々を対象とした医療講演会「今こそめざそう 健康長寿」を開催しました。

 2023年7月8日(土)、愛知淑徳大学 健康相談室主催の医療講演会「今こそめざそう 健康長寿」が開催されました。
 健康相談室は、2013年4月に開設した「愛知淑徳大学 健康・医療・教育センター(通称AHSMEC/アースメック)」の中の機関の一つで、本学の学びの財産を地域の皆さまに還元することを目的に、講演会や栄養相談会の企画・運営をしています。また愛知淑徳大学には、長久手キャンパスに「愛知淑徳大学クリニック」があり、医師以外にも視能訓練士、言語聴覚士、公認心理師、管理栄養士、理学療法士といったスタッフや、診療・リハビリテーションのための施設、設備などが整っています。

 今回の医療講演会は、長久手市や周辺にお住まいの方々を対象に、愛知淑徳大学クリニックの医師や本学教員が、健康長寿にまつわる病気や予防法について講演しました。当日は事前申込制で定員とした100名の皆さまにご参加いただき、健康相談室室長であり愛知淑徳大学クリニックの内科・糖尿病内科医でもある植村和正先生が司会を担当。はじめに参加者の緊張をほぐすエピソードやご自身の体験談を披露し、リラックスした雰囲気で講演会が始まりました。
 以下では、13:00~16:30の開催時間を4部構成として実施された内容をご紹介します。

■第1部
テーマ『高齢者糖尿病とフレイル予防』
登壇者/愛知淑徳大学クリニック
内科・糖尿病内科 医師 三浦 久幸先生

 まず三浦先⽣は、65歳以上の⾼齢者糖尿病の特徴として、「低⾎糖を起こしやすく、認知症の発症要因となりやすい」ことや若年の人に比べて「脳卒中などの動脈硬化性疾患をきたしやすい」といった特徴を挙げつつ、食事療法や運動療法を組み合わせて、血糖コントロールを良くすれば、怖い合併症は防ぐことができることをお話されました。
 後半のお話では、糖尿病の人にかかわらず、高齢者では「フレイル」が大きな問題であり、長寿を全うするには糖尿病などの生活習慣病にかからないことも重要だが、「フレイル」予防も重要であることをお話しされました。この「フレイル」は日本語では「虚弱」に近い言葉で、ストレスなどに弱く、障害や疾病に移行しやすい状態と説明されました。この「フレイル予防」をすることで高齢者に特徴的な障害や疾患を防ぐことができることや、予防のためにはロイシンなどの良質なアミノ酸摂取と運動が重要で、ビデオ映像を用いて、自宅でもできる運動方法についてわかりやすく説明されました。最後に「フレイル」と「ロコモティブ症候群」、「サルコペニア」との関連もお話しされ、次の講師のお話につながれました。

■第2部
テーマ『人生100年時代を生きる ―健康寿命延伸のヒケツ―』
登壇者/愛知淑徳大学健康医療科学部教授
愛知淑徳大学クリニック
整形外科・リハビリテーション科 医師 和田 郁雄先生

 人生100年時代と言われる現代において、これからさらに100歳人口が増えてくるという予測の紹介から始まった和田先生の講演。健康寿命についてのお話から、75歳以上で入院する患者の中で骨折の割合が増えていることや、要支援・要介護になった主な原因のうち運動器(関節や骨など)のトラブルが4分の1を占めることを伝え、参加者の興味をひいていきます。そのうえで、運動器不安定症という、「高齢化により、バランス能力および移動歩行能力の低下が生じ、閉じこもりや転倒のリスクが高まった状態」について解説。前半は運動器に関する注意喚起に重きを置いたお話となりました。
 後半からは、ロコモティブ症候群を簡易的に自己診断するための「7つのチェックリスト」や、予防するために自宅でできる運動法を紹介。ご自身の研究結果や、世界で発表された論文の内容をもとに運動の効果を伝えるなど、参加者の納得を促し、自分の生活に取り入れたくなる気持ちをつくっていきます。また、医学的な側面から、歩く際の注意点や推奨する靴の形状などを伝えたり、実際に軽い運動を講演中に行うなど、自宅で活かせる内容をいくつも伝授。参加者からのあふれる満足感が印象的でした。

■第3部
テーマ『サルコペニア予防のための栄養』
登壇者/愛知淑徳大学健康医療科学部教授
管理栄養士 榎 裕美先生

 榎先生の講演は、高齢者が勘違いしやすい「タンパク質の必要量」に焦点を当てることからスタートしました。ご自身が過去に策定に携わった経験のある「日本人の食事摂取基準」を紹介し、高齢者こそタンパク質の必要量が多いことを伝えました。参加者は意外に思ったようで、先生のお話に感嘆の声があがります。さらに、実は高齢者においては、男女とも痩せている人の方が、生命予後が悪いことも紹介。バランスの取れた食事が簡易的にわかる、食品の分類表(魚介類・肉類・卵・牛乳・大豆製品・緑黄色野菜・海藻・いも類・果物・油脂類)を提示しながら、食品摂取の多様性と日常生活活動能力の低下との関連について、栄養のプロフェッショナルの視点からお話しされました。「筋肉のもとになるタンパク質を3食バランスよく摂取する」「いろいろな種類の食品を意識して食べる」といった、サルコペニア予防のための食事のポイントをわかりやすくアドバイスされていました。
 また、愛知淑徳大学が愛知県内の市町村と共同した栄養と運動のセルフプログラムによる介入研究についても紹介。実際の研究内容をもとにしたお話は、参加者の皆さんにとってより身近に感じられたようでした。

■第4部
パネルディスカッション

 第4部は、植村先生がファシリテーターとなり、講演された三浦先生、和田先生、榎先生とのパネルディスカッションを実施。参加者からの質問が会の終了時間まで途切れることなく続き、参加された方々の熱気に包まれながらの講演会となりました。学生の姿も見られ、彼らにとっても学びのある時間になったようです。本学の健康相談室では、今後も一般の方を対象とした講演会などを実施する予定です。