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2014年04月26日

教育に志す者の会《教志会》プレイベント第一弾 「今、学校は...」

教育に志す者の会《教志会》プレイベント第一弾 「今、学校は...」

教職を志す在学生と、教職に就く卒業生が、共に学び合い、互いに支え合う「教志会」を発足。

教職を志望する在学生・卒業生と、教職に就く卒業生・教職に就いていた卒業生が、共に学び合い、互いに支え合う場所をつくりたい――教職員の熱意のもと、2015年8月、本学に「教育に志す者の会『教志会』」が発足します。教職をめざす「志」を育て、教職に就く「志」を貫き、「教員が一生の仕事」となるよう、在学中から卒業後の長きにわたって支援していく組織です。

教員養成の伝統校である本学は、これまでに延べ1,000人をこえる卒業生を教育現場に輩出してきました。教職教育の目標として掲げているのは、子どもたちの個性や社会の動きなどに柔軟に対応できる「実践力のある教員」を世に送り出すこと。地域や各市の教育委員会との連携を強めて体験学修を充実させ、学生が講義で得た専門知識や力を実践的に深めていく環境を整えています。

こうした実績をさらに発展させるのが、「教志会」です。正式発足に向けて準備を進める今年度は、プレイベントを実施していきます。その第一弾として、4月26日(土)に講演会「今、学校は...」を開催。教育実習や教員採用試験を目前に控えた4年生を中心に、全学年の学生が意欲的に参加し、教職への志をさらに熱くしました。

プレイベント第一弾・講演会「今、学校は...」

教員から教職志望の学生へ、熱い思いを手渡す。

 今回、教育現場の「今」を学生に伝えるために、校長を歴任された先生方や本学出身の若手教員の方々をお招きし、教育への思いや教職の魅力などを語っていただきました。開会に先立ち、教職・司書・学芸員教育センター長・小倉斉先生は「『教志会』は、在学生と本学出身の教員とを結ぶネットワークづくり、即戦力としての教員の養成をめざします。今回のプレイベントが、その第一歩になるよう願っています」と挨拶。さらに、本学で教職教育に力を注ぐ後口伊志樹先生は「"教職をめざす"ということは"生涯学び続ける覚悟を持つ"ことです。この講演会への参加は、覚悟を行動に移すチャンスのひとつ。聴講した学生の皆さんには、お聞きした話を胸に新たなスタートに立ち、志を果たしてほしいと期待しています」と心からのエールを送りました。

第1部 講演「校長先生のホンネ」

 第一部は、小中学校・高等学校の校長を務めた2人の先生方が、教育者に求められる力や学校教育で大切にすべきことなどをお話しくださいました。

子どもたちと向き合い、よりよい授業を求めて「勝負」を続けてほしい。

講師:川口 啓先生(元名古屋市立小中学校校長)

 体育を専門とされる川口啓先生は、40年以上もの教員人生を語り、学生たちにメッセージを投げかけました。「私は現役の教員だったとき、『教師は授業で勝負する』という先人の言葉に感銘を受け、自分の信条としていました。学校教育では、"できる"ことを伸ばすだけではなく、学びによって"わかる!"という実感を得ること、"仲間と関わる"なかで人間的な成長を促すことも大切です。指導案通りに淡々と授業するのではなく、子どもたちとまっすぐに向き合い、真剣勝負をする。授業を通して子どもたちの成長を実感する。そんなふうに、皆さんも日々の授業に挑む教員をめざしてください」と川口先生。学生たちは教職に対する無限の可能性を実感するとともに、現場で「勝負」できる力を今から養おうと向学心に燃えていました。

「思います」から卒業して、論理的な思考力を身につけよう。

講師:渡邉 泰治先生(元岐阜県立高等学校校長)

 「客観性・論理性・抽象性の高い言語能力(≒思考力)を養うために、"思います"を避けよう!」と力強く語ったのは、渡邉泰治先生。農耕・牧畜革命、産業革命を経て言語革命に直面している現代、言語を駆使して国際化・情報化に対応し、あらゆる人と円滑にコミュニケーションするには「客観性」「論理性」「抽象性」が欠かせないと説明しました。「日本の学校教育では、体系的な言語教育が重要。言語能力を培うことが思考力の向上につながり、子どもたちの可能性を大きく広げることにもなります。教員になる皆さんも、何でも"~だと思います"と曖昧に言うのではなく、まず語尾を明確に使い分けることから始めましょう。"言葉"を変えると"思考"や"行動"が変わります」。渡邉先生のお話に、襟を正して聞き入っていた学生たち。基幹科目「日本語表現」での学びを思い返しながら、的確な言葉で考え、表現することが、教職においても大切であると理解を深めました。

第二部 シンポジウム「センセイ!と呼ばれて」

 続く第二部では、教育現場で活躍している4人の卒業生がシンポジストとして登壇。教員となって直面した壁やそれを乗り越えたエピソード、教職のやりがいなどを等身大の言葉で語り合いました。

たくましく育ちゆく教え子たちと共に、教員として日々精進あるのみ。

●小学校教員2年目/文学部 教育学科 卒業 ●中学校・英語教員3年目/交流文化学部 卒業 ●高等学校・国語教員2年目/文学部 国文学科 卒業 ●特別支援学校教員2年目/文学部 教育学科 卒業

 名古屋市の小学校に勤務し、発達障害通級指導教室で障がいのある児童のサポートに努める早川先生は「多動性障がいのある児童が集中して授業を受けられるよう、その子と一緒に"頑張りカード"をつくり、担任の先生の協力も得て見守りました。すると5カ月目には『早川先生、ぼく、もう頑張りカードがなくても頑張れるよ!』と。落ち着いて授業を受け、発言も積極的にできるようになりました。その成長を目にして胸が熱くなり、教職の大変さも吹き飛ぶほどの嬉しさが込み上げました」と笑顔を輝かせました。

 同じように、障がいのある児童を支援・指導しているのが、京都市の特別支援学校で働く伊藤先生。「知的障がいのある子や肢体不自由の子と日々向き合い、一人ひとりの発達に合わせた授業づくりや保護者の皆さんとの話し合いに励んでいます。昨年、担任をしていた脳性まひの子が、今年、手引きで20メートルも歩けるようになりました。どうすればこの子が自分の足で歩けるようになるのか。1日1日を大切にしてサポートしたことが力になったのだと、教職の重要性ややりがいを実感しています」と学校教育や特別支援教育の意義を語りました。

 岐阜県の中学校で英語教員として働く田中先生は、クラス担任になって2年目。吹奏楽部の顧問も務めています。現在の教員生活を紹介しながら、後輩へ応援の言葉を贈りました。「"正義"、"思いやり"を生徒の心にどう育むのか。常に考え、クラス運営や授業、生徒指導などに力を注いでいます。一人ひとりと積極的にコミュニケーションしたり、自信につながる"頑張り"を認め、力を引き出したり、試行錯誤を重ねています。教職をめざす皆さんも、今、できることに全力を尽くしてください。そこから道が拓かれます」。

 「担任している40人の新たな可能性を引き出すために、厳しく叱ることを大切にしています」と毅然と語ったのは、愛知県の高校で国語教員として働く紅林先生。「昨年は現代文3クラス、古典2クラスを受け持っていました。『紅林先生の教え方がわかりやすいと聞いた』と他のクラスからも生徒たちが質問に来てくれるなど、生徒の向学心、向上心に応えられることに喜びを感じています。生徒たちが大きく成長できるよう、私も教員として学び続けます」と話す横顔からは、教育へのあふれる情熱が伝わってきました。

 「先生!」と呼びかける教え子たちと真摯に向き合い、教員として経験や自信を積み重ねている4人の先生方。いきいきと語る姿を憧れのまなざしで見つめた学生たちは、「自分も先輩方のように志を貫きたい!」と刺激を受けました。

今回のプレイベントから本格的に動き始めた「教志会」。教員採用試験合格の先を見据え、地域や日本の未来に貢献する教育者を育みます。