追究

2017年09月11日

平成29年度 第1回 文学部講演会「しぶとく、林 芙美子 ―『放浪記』の戦略性を中心に―」

平成29年度 第1回 文学部講演会「しぶとく、林 芙美子 ―『放浪記』の戦略性を中心に―」

2017年6月29日(木) 長久手キャンパス 511教室

『放浪記』を読み解きながら、作者・林芙美子の
「自己演出」や「想い」に迫りました。

 6月29日(木)、文学部主催の講演会「しぶとく、林 芙美子―『放浪記』の戦略性を中心に―」が開催されました。講師としてお招きしたのは、慶應義塾大学の教授である小平 麻衣子先生。近代文学におけるセクシュアリティやジェンダーについての研究がご専門で、今回は林 芙美子の『放浪記』を題材に、彼女の女性作家としての自己演出や作家性の変遷について迫りました。

平成29年度 第1回 文学部講演会「しぶとく、林 芙美子 ―『放浪記』の戦略性を中心に―」

平成29年度 第1回 文学部講演会「しぶとく、林 芙美子 ―『放浪記』の戦略性を中心に―」

 まず、小平先生は『放浪記』が何度も書き直されて出版されたことを紹介。そのうえで初出と決定版の違いを読み比べながら、どのような意図で林 芙美子が作品に手を加えていったのか、社会的背景や林芙美子自身の想いを紐解きながら解説されました。たとえば、決定版の出版は戦時中だったため、性的な表現は検閲にひっかかり、ほとんどカット。さらに、初出では意識的に「おてんばで破天荒な自分」を表現している一方、決定版では主人公が「貧しい一人の女性」と書き換えられつつ、その女性が健気に生きる物語に変わっていると小平先生は指摘されました。「時代の流れや売れる本の主流が変化していく中で、文壇における自己のイメージをどのように打ち出していくのかを考え抜いた上で、林 芙美子は作品を書き直しています。彼女は自分を常に演出する女優だったといえるかもしれません」と小平先生。「女性作家は社会からの目や人々のイメージに左右されやすい」と学生たちに伝えることで、近代文学の新たな読み解き方を示してくださいました。

平成29年度 第1回 文学部講演会「しぶとく、林 芙美子 ―『放浪記』の戦略性を中心に―」

平成29年度 第1回 文学部講演会「しぶとく、林 芙美子 ―『放浪記』の戦略性を中心に―」

 講演会終了後は、この会を運営した「国文学科・国文学会」のメンバーと懇談会を開催。学生たちは自らの研究テーマを紹介したり、講演会の内容について質問したり、終始和やかな雰囲気で小平先生と意見交換をおこないました。
 近代文学を「セクシュアリティ」や「ジェンダー」といった新たな角度から見つめるきっかけとなった今回の講演会。文学部はこれからも、講演会を通じて多くの価値観や視点を学生たちに提供し続けていきます。