追究

2019年04月26日

2018年度 初年次教育部門 教育実践・研究発表会

2018年度 初年次教育部門 教育実践・研究発表会

2019年3月5日(火) 長久手キャンパスK1会議室

より良い初年次教育を展開していくために。
研究成果を教員・職員で共有する発表会を開催しました。

 本学の特長的な教育の一つに「徹底した初年次教育」があります。本学は他大学に先駆けて実践的な初年次教育のカリキュラムを設計し展開。日本語運用能力を鍛える科目群「日本語表現」がその具体的な授業です。また初年次教育を効果的に実施するために、本学の教員や専門職員により構成される「初年次教育部門」を組織し、本学の学生の学修傾向や授業の成果などを研究し、より良い授業を実施できるようにカリキュラムの改善に役立てています。2019年3月5日(火)には、その研究成果を学内に発信する「教育実践・研究発表会」を開催。会場に集まった全員で知見を共有し、来年度以降の授業に活かそうと意見交換がおこなわれました。今回は登壇した3組の先生方のプレゼンテーションをダイジェストで紹介します。

2018年度 初年次教育部門 教育実践・研究発表会

2018年度 初年次教育部門 教育実践・研究発表会

本学入学者の現状と課題
―「新入生学習力調査」の結果をどう活用するか―
発表者:初年次教育部門長・創造表現学部教授 永井 聖剛

2018年度 初年次教育部門 教育実践・研究発表会

 本学では入学者全員を対象に「新入生学習力調査(新入生アンケート、学習力調査 国語、TOEICⓇ IPテスト、基礎学力テスト(数学))」を実施し、調査の結果は新入生面談時にフィードバックするなど、学生一人ひとりのより良い学習サポートに活かしています。初年度教育部門長の永井先生は、新入生学習力調査のうち「新入生アンケート」と「学習力調査 国語」を対象に、2011~2018年度の結果を横断的に分析し、本学に入学した学生の特徴をつかもうと研究しました。「学習力調査 国語」の設問ごとに正答率を比較した結果、極端に正答率が低い問題があることが浮かび上がり、比較的正答率の高い問題との質的な対照の結果、全体的な傾向として評論文を読解するための語彙やスキルに課題があることがわかりました。さらに、学科・専攻や入試形態別に分析したところ、それぞれの群により、正答率の差があることがわかり、「新入生アンケート」の情報とも照らし合わせた結果、志望度の高さと学力は必ずしも一致しないことが浮き彫りになりました。永井先生は、「入学者の学習力不足に対し、どの層の、どの部分を、どう補えばよいのかをきめ細かに同定するには、より平易な文章の読解力を試すテストの実施も必要かもしれない」と示唆し、会場からは「成績優秀者とそれ以外の学生と分けて分析すれば、より効果的な指導に結びつくのではないか」といった意見が寄せられました。

「日本語表現T2」必修化後3年にみる成績の推移と学修への取り組みについて
―医療貢献学科言語聴覚学専攻1年生の事例から―
発表者:初年次教育部門講師 杉淵 洋一

2018年度 初年次教育部門 教育実践・研究発表会

 初年次教育部門の「日本語表現科目」には、1年次必修の「日本語表現T1」と1年次選択(一部の学部は必修)の「日本語表現T2」があり、さらに「ビジネス文書の書き方の習得」や「敬語の使い方の習得」「小説の創作」などの目的に合わせて履修できる、7種類の発展科目「日本語表現A・B・C」が用意されています。それぞれの授業では学習力調査の結果をふまえ、学生の日本語力や学修傾向を分析して作成したオリジナルテキストを使用し、グループワークを多く取り入れた演習中心の授業を展開しています。このうちの「日本語表現T2」を受け持つ杉淵先生は、医療貢献学科言語聴覚学専攻の1年生を対象に研究。選択から必修に変わった平成28年度から3年間の成績の推移を多角的に分析することで、成績変動の原因を突き止めようとしました。杉淵先生は成績の評価項目(出席率、小テスト、提出課題、プレゼンテーション、最終レポート)ごとに成績の推移を分析。その結果、最終レポートの提出の有無が、全体の成績に大きな影響を与えていると結論づけました。しかし「最終レポート提出の有無がなぜ成績に大きく影響するのか」という点については、まだ研究の余地があることも明言。評価方法や配点についても再検討する必要があることを示唆し、次年次以降の課題を投げかけました。

学部生を活用したライティング支援の現状と課題
―他大学ライティング支援施設との交流をとおして―
発表者:初年次教育部門教授 外山 敦子、初年次教育部門助教 増地 ひとみ

2018年度 初年次教育部門 教育実践・研究発表会

外山 敦子先生

2018年度 初年次教育部門 教育実践・研究発表会

増地 ひとみ先生

 初年次教育部門では、日本語文章作成の疑問や悩みの相談窓口として「ライティングサポートデスク」を開室しています。長久手キャンパス・星が丘キャンパスの両キャンパスに専門のスペースを持ち、教員や研修を受けたチューター(大学院生や学部上級生)が原則としてマンツーマンで学生の相談に応じます。対象となる文章は全ジャンルOK。授業の課題レポート、進学・留学・就職関連書類、スピーチ原稿など幅広く対応しています。本学のライティングサポートデスクには毎年多くの大学が見学に訪れ、また今年度は本学からも他大学に見学に行きました。その結果を踏まえ、他大学と本学の支援の方法を比較することで、「チューターに学部生を採用することにおける課題と解決策」を述べました。発表では視察した「信州大学」「大分大学」「共愛学園前橋国際大学」「追手門学院大学」の4つの大学について、チューター育成の方法を中心に紹介。それぞれの特徴を示し、「学部生チューターに何を、どこまで求めるか」という運営方針を明確に打ち出していくことが大切であると指摘しました。その上で「学部生チューターを早く現場に投入する仕組みづくり」や「学部生チューターが参加しやすい研修プログラムづくり」、「チューター同士が教え、学び合う環境づくり」に注力していきたいと今後の展開も示し、チューター候補者の推薦やライティングサポートデスクの利用促進を参加した教員に呼びかけました。