追究

2019年12月27日

愛知淑徳大学 ジェンダー・女性学研究所主催 第38回定例セミナー「脳の性差と社会 脳の男女差について科学的に考える」

愛知淑徳大学 ジェンダー・女性学研究所主催 第38回定例セミナー「脳の性差と社会 脳の男女差について科学的に考える」

2019年11月19日(火) 長久手キャンパス 3号棟 325教室

脳には性差があるのだろうか? そんな問いかけを通じて、
物事を公平な目で見つめることの大切さを学びました。

 2019年11月19日(火)、本学のジェンダー・女性学研究所が主催する定例セミナー「脳の性差と社会 脳の男女差について科学的に考える」を開催しました。お招きしたのは、東京大学大学院総合文化研究科 准教授の四本 裕子さん。脳の性差はあるのか否か、脳の性差を考える時どのような観点で研究を進めればよいのか、多くの実験結果を提示しながら話を進めていきました。

愛知淑徳大学 ジェンダー・女性学研究所主催 第38回定例セミナー「脳の性差と社会 脳の男女差について科学的に考える」

愛知淑徳大学 ジェンダー・女性学研究所主催 第38回定例セミナー「脳の性差と社会 脳の男女差について科学的に考える」

 まず「脳の男女差を検討するために必要な3つの視点」と題し、脳の性差を正しく捉えるためのポイントを伝授。1つ目の「科学的根拠に基づいているか?」については、学者が論文を発行するための過程である「査読システム」を紹介。数人の学者が論文を審査し、情報の正当性などをチェックする工程のことで、このチェックをパスした論文は科学的根拠を踏まえていると概ね言えるだろうと結論付けました。2つ目の「その差は一般化可能か?」という点においては、統計学的に優位な差があっても、その差が大きくないと一般的であるとは言えないと注意を促し、「有意な差であっても、個人差によるものも大きいので、慎重に検討する必要がある」とまとめました。3つ目の「それは因果関係か?」という点においては、「脳」「社会・教育」「行動・思考」の3者がそれぞれ関わり合い、互いに原因にも結果にもなりうると紹介。訓練や行動によって脳が変わることを「可塑性」と呼ぶことを紹介し、「加齢によって脳が委縮していくように、経験や社会背景によって脳は変化する」ことを伝えました。

愛知淑徳大学 ジェンダー・女性学研究所主催 第38回定例セミナー「脳の性差と社会 脳の男女差について科学的に考える」

愛知淑徳大学 ジェンダー・女性学研究所主催 第38回定例セミナー「脳の性差と社会 脳の男女差について科学的に考える」

 この3つのポイントを紹介したのち、「男性は空間認知能力が高い?」「女性はよくしゃべる?」「数学は男性のほうが得意?」「男性のほうが成績のばらつきが多い?」「男性のほうが競争的?」「男性と女性は脳に違いがある?」といった、一度は耳にしたことがあるような性差について検証。3つのポイントに照らし合わせると、どれも科学的根拠に基づいていなかったり、一般化可能ではなかったり、正しい情報とは言えないと評しました。しかし一方で、脳の男女差はある可能性があることを示唆し、正しい視点を持ち合わせて研究を進めていくことが大切であると訴えました。さらに、「男性だから」「女性だから」というバイアスが世の中にあふれていることを海外のCMやビデオを上映しながら紹介。社会や教育における男女差が大きいにもかかわらず、「男性脳だから」「女性脳だから」と語ることはとても危険なことだと警鐘を鳴らし、「科学的か否かを正しく見極める目を持つこと」「個人差や多様性があるとわかったうえで脳の男女差を考えること」「男女の格差を広げず正していくような社会になること」が大切であると訴えました。
 脳の男女差について公平な視点で見つめ、考えを深めることができた今回の講演会。聴講者にとって情報やバイアスに惑わされず、物事を正しく見極めることの大切さを再認識する絶好の機会となりました。