追究

2021年01月13日

創造表現学会主催 講演会 「南極氷床―地球でいちばん大きな氷のかたまり―」

創造表現学会主催 講演会 「南極氷床―地球でいちばん大きな氷のかたまり―」

2020年12月12日(土) 長久手キャンパス824教室

南極氷床が地球に与える影響とは?
南極での調査活動に関わる研究者がその実態を伝えました。

 2020年12月12日(土)、創造表現学会が主催する講演会「南極氷床―地球でいちばん大きな氷のかたまり―」を開催しました。講師としてお招きしたのは、北海道大学の低温科学研究所に所属する杉山 慎先生。地球環境科学を専門としており、パタゴニア、南極、グリーンランドなどを舞台に、氷河や氷床に関する物理現象と変動メカニズムの解明に取り組んでいます。講演会当日はその経験をもとに、南極の氷床は地球にどのような影響をあたえているのか、現在、南極氷床はどのような状態にあるのかなどを語り、地球の神秘を伝えました。

創造表現学会主催 講演会 「南極氷床―地球でいちばん大きな氷のかたまり―」

創造表現学会主催 講演会 「南極氷床―地球でいちばん大きな氷のかたまり―」

 まず、杉山先生は「南極氷床とは何か」について解説。南極はその98%を厚さ約2000mの氷や雪に覆われていると言い、まさにこれを、「南極氷床」と呼んでいると紹介しました。さらに、地球にある氷床の中でもっとも大きな氷床が「南極氷床」であり、全体の89%も占めているとも。地球上で大きな割合を占めているからこそ、氷床の状態が変わると地球全体に大きな影響を与えることを示唆し、話題を後半へと続けました。
 氷床について解説した後は、南極での活動をたくさんの写真や動画を用いながら紹介。そして「南極氷床が地球にどんな影響を与えるか」についても解説。地球の水のうちたった3%が淡水で、そのうちの75%を氷河や氷床が占めていると語り、その分、南極氷床が融けた場合、海水面が大きく上昇すると続けました。さらに、氷床は地球上で一番、宇宙からの光を反射しているので、それが融けてなくなると、地球に吸収される光エネルギーが増え、地球全体の気温が上昇してしまうことや地球の海洋の循環をコントロールしていること、地球規模の地形変化を起こさせることなどさまざまな影響について言及。南極氷床が地球にとって欠かせない存在であることを伝えました。

創造表現学会主催 講演会 「南極氷床―地球でいちばん大きな氷のかたまり―」

創造表現学会主催 講演会 「南極氷床―地球でいちばん大きな氷のかたまり―」

 そして講演会は「地球温暖化と南極氷床」の話へ。実は10年程前まで、南極の氷が増えているのか減っているのか、正確にはわからなかったと前置きしたうえで、気温は「10年で0.2℃ほど」上昇していることを紹介。しかし気温が上がったとしても、南極の気温は冬で-80~-70℃、夏でも中央部は-40~-30℃であり、氷が融けるには寒すぎると結論付け、まだ解明されていない「南極の氷はなぜ融けているのか」について調べるための活動を紹介していきました。最近の調査でお湯をジェット噴射して氷に穴をあけ、氷床と海面が接している環境を調べた結果、そこに生物がいることがわかったり、氷の下の海水の温度分布がわかったり、多くの新しい発見があったと言います。そして南極の氷は地球温暖化に起因する「カービング」と「底面融解」が原因で南極の氷が減っていると考えられると現在の研究成果を語りました。最後に「広大な南極氷床のうち、微々たる変化を定量的に測定し、調査していくことはとても難しいこと」と語り、講演会を結びました。
 南極氷床をテーマにダイナミックな地球の変化やその変化の解明に挑む研究者の活動を知ることができた今回の講演会。参加した学生にとって、地球の不思議とおもしろさの一端に触れることができた貴重な時間となりました。