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2021年02月10日

創造表現学部 メディアプロデュース専攻 富樫ゼミ 動画で伝えるオンライン旅行体験のビジネストライアル

創造表現学部 メディアプロデュース専攻 富樫ゼミ 動画で伝えるオンライン旅行体験のビジネストライアル

(画像提供:EXest株式会社)

 創造表現学部 創造表現学科 メディアプロデュース専攻の富樫ゼミでは、積極的に企業連携を行い、メディアコンテンツに関わる商品企画や、PR施策立案を実際のビジネスの場で学び、深めています。2020年度後期は、訪日外国人観光客に、旅行前・旅行中に体験型情報提供を行うサービスサイト『WOW U』を運営するEXest株式会社様と連携させていただき、動画やオンラインツールのZoom(ズーム)を用いて旅行体験をするコンテンツ「オンライン・ティザー・トリップ(Online Teaser Trip、以下、OTT)」の商品開発を行いました。

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■オンライン・ティザー・トリップ(OTT)「豊田市小原地区の四季桜」(映像提供:豊田市小原町観光協会)

 EXestのOTTは、『WOW U』というサイトに登録をおこなえば、プロのガイドはもちろん、一般の人も学生も、動画を活用し、オンラインで自分の地域の魅力、日本の文化などを伝えられるサービスです。単に動画を作成して観てもらうだけではなく、実際に世界中から参加する人々とコミュニケーションをとり、「ガイドに会いに行きたい」という気持ちを醸成する点もポイントです。

 富樫ゼミの3年生は2020年度後期授業で、5つのチームを作り、地元愛知県の魅力を世界に発信するOTTに取り組みました。9月には、EXest株式会社の中林幸宏CEOが来校し、日本におけるインバウンド観光のデータに基づいたOTTサービスの可能性や、EXestのミッションである、サービスを通じて「人と人がつながる」という意味について講義を行ってくださいました。

 学生たちは、中林氏から学んだ「マーケティングの視点を常に意識してコンテンツを創る」という点に基づき、ターゲット選定、企画立案、調査と動画制作を行いました。

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■EXest株式会社中林CEO講義の様子(2020年9月29日)

 5つのチームはそれぞれ、「豊田市小原地区の四季桜」「岡崎市の八丁味噌」「半田市の日本酒」「名古屋市の那古野地区」「名古屋名物の喫茶マウンテン」を企画立案しました。
 2020年度後期授業は、新型コロナウィルスの感染対策のため、ゼミの大半はオンラインとなり、動画制作を大学で行う時間も限られる中で、60分間のオンラインで旅行体験を提供するためのシナリオ作成や、動画作りを行いました。動画制作にあたっては、OTTで紹介する地域の観光協会や企業に企画書を提出しての撮影交渉、ご担当者様へのインタビューや、取材内容を英語字幕にする一連のプロセスを、学生がチームで協力して行いました。

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■豊田市小原町で四季桜を取材する学生

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■レンタサイクルで半田市を取材する学生

 このようにして創り上げたOTTのコンテンツを、2021年1月12日(火)と1月19日(火)に、ビジネス化前のマーケティング調査として、シンガポール国立大学の大学生に参加してもらい実施しました。


 岡崎市の八丁味噌を取材したチームは、合資会社八丁味噌(屋号 カクキュー)様のご協力で『カクキュー八丁味噌(八丁味噌の郷)』の見学ルートを動画で見せ、370年以上前から変わらない味噌蔵の様子を伝えるとともに、「味噌ディップ」のレシピ動画を作り、味噌の美味しい食べ方を紹介しました。日本に訪れた時に味噌を食べたことがあるというシンガポールの学生は、味噌の製造プロセスやレシピに興味津々で、味噌桶の上に乗せた石の重さについて質問が出るなど食文化・歴史に強い興味を持ってくれました。八丁味噌のOTTは、カクキューの企画室・野村さんにもご参加いただき、八丁味噌の歴史や、重石に使う石の由来など詳しい説明をしていただきました。

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■《八丁味噌OTT》岡崎市『カクキュー八丁味噌(八丁味噌の郷)』で取材をした
 伝統的製法で造る八丁味噌に用いる木桶(2021年1月12日実施)


 名古屋駅から歩いて10分ほどの場所にある、江戸時代から戦前の面影を残す那古野地域をガイドしたチームは、「一緒に街を散歩する体験」をシンガポールの学生ができるように、実際に歩きながら撮影した映像を編集して動画を制作しました。那古野地域のみに残る、屋根の上に神社を置く「屋根神様」の紹介では、その由来や日本の神道文化について対話をしました。また、那古野の円頓寺商店会で学生が実際に見つけた「買い食いスポット」の紹介では、シンガポールの学生たちが自分たちの国で親しまれている屋台フードを教えてくれるなど、OTTの醍醐味である相互コミュニケーションが盛り上がりました。

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■《那古野地域OTT》江戸時代から残る町並みを紹介(2021年1月19日実施)


 江戸時代から酒、酢、たまりといった醸造業が盛んに行われてきた半田市をガイドしたチームは、日本酒「國盛」で知られる中埜酒造株式会社様のご協力を得て、酒の文化館の見学ルートを動画で撮影し、伝統的な日本酒の作り方を案内しました。実際に酒蔵で使われていた道具の名前などをクイズにし、シンガポールの学生との会話の接点をたくさん作る工夫をしました。また、日本酒をアレンジするカクテルのレシピ動画には、お酒にジュースなど他のものを混ぜて飲む文化のないシンガポールの学生がビックリ。「日本では普通にお酒にほかのものを混ぜるのか」「大学生もそのような飲み方をするか」など会話が弾みました。
 シンガポールでも日本酒が買えることもあり、参加者から「ぜひ自分で作ってみたい」「日本に行って半田の酒蔵に行ってみたい」と満足のコメントをいただきました。

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■《日本酒の街・半田市OTT》半田市の地酒「國盛」を使ったカクテル(2021年1月19日実施)


 名古屋市にしかない工夫をこらしたメニューを取り揃えることで知られる昭和区の喫茶マウンテンを取材したチームは、見た目と味が全く違う学生に人気の喫茶フードを紹介。イチゴを練りこんだピンク色のパスタなど、インスタ映えもするメニューを紹介すると、同世代のシンガポールの学生から、自分たちの国で流行っている地元で人気の食べ物や、インスタ映えするメニューを多数教えてもらい、同世代でのコミュニケーションが弾みました。学生たちは、喫茶マウンテンの魅力として店主の加納隆久さんが新作メニューを創る想いをインタビュー取材。「安い値段で、たくさんのメニューを食べてほしい」と、学生街の喫茶店らしいこだわりを持つ店主の言葉に、シンガポールの学生から「コロナが収束したら名古屋を訪れて、(ガイドの学生たちと)一緒にマウンテンに行きたい」という言葉が飛び出しました。

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■《喫茶マウンテンOTT》学生たちが店主の想いを伝えるインタビューを行なった(2021年1月12日実施)


 また、豊田市小原地区で見ることができる、春と秋に開花する「四季桜」をガイドしたチームは、豊田市小原観光協会様から協力提供いただいた美しい桜の里山映像を見ながら「オンライン花見会」を行う企画を実施。日本での一般的な花見の時期に見られるブルーシートの場所取りや、お弁当作りなど「花見のやり方」を動画で紹介すると、シンガポールの学生から「ふりかけはシンガポールでも売っているが、ご飯にかけるのは知らなかった。そのまま食べていた」という意外な話も出て、驚く場面もありました。参加したシンガポールの学生からは、「日本で桜を見てみたいと思っていたが、咲いている季節がとても短いと聞きあきらめていた。ぜひ小原町に行ってこの目で見たい」という感想が出ました。また、学生たちが桜の花を通じて参加者に伝えた「一瞬を大切にする日本人の心」に、シンガポールの学生は深く共感し、日本文化への理解を深めるOTTとなりました。

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《四季桜OTT》お花見の方法を動画と解説で伝える(2021年1月19日実施)


 動画とオンライン会議を用いたOTTは、2020年に世界がコロナ禍に包まれ、渡航規制が続く中、旅行ならではの発見や楽しさを体験してもらうサービスとしてニーズの高まりが期待されています。しかし、ゼミ学生は取り組みをする中で、普通の動画とは違った「双方向コミュニケーション」のきっかけとなるコンテンツ作りの難しさに直面し、全体のストーリー作りや英語字幕作成に試行錯誤を重ねました。また、本番直前に「やはり自分の言葉で、学生が伝えよう」とEXest様からアドバイスをいただき、学生が英語でガイドに挑戦もしました。
 今回は、商品化のトライアルでしたが、シンガポールの学生からは「このサービスはインターネット動画でただ映像を見るだけとは違い、ガイドとリアルタイムにコミュニケーションを取ることで共感や親近感が湧く、今までにない体験だった」「日本に行って、みなさんと愛知県を巡ってみたい」という感想をいただきました。
 ゼミ生たちはOTTに挑戦してみて、「インタラクティブなコミュニケーションをとれる場面が多いため、ホストが提供する情報だけでなく、最終的には互いの国の文化や習慣について知れることが魅力だと感じた」「オンラインでツアーを行うと、見せたい部分に焦点を当てて紹介できるため、場所の魅了をよりアピールできると思った」と、確かな手応えを掴みました。

 ゼミ生が取り組んだOTTにご協力くださった岡崎市・合資会社八丁味噌(屋号 カクキュー)企画室・野村健治さんからは「コロナ禍で観光客が『八丁味噌の郷』を訪れることが難しくなっている中で、見学コースの見せ方に新しい可能性を感じた。学生だけでここまでやり遂げたことを頼もしく思いました」というお言葉をいただきました。

 EXestの中林CEOからは「OTTは旅行体験を提供しながらも、地域や地域企業のPRとなっていくことがひとつの目標。このプロジェクトを通じて、地域の活性化には大学生の力が非常に有効だと再認識した。今回はあくまでテストマーケティングの段階でしかなく、実施してみて学生が『もっとこうすれば良かった』と感じたことや、外国の参加者にコンテンツを伝えていく難しさをぜひ次に活かしてほしい。とても頑張ったけれど、これからブラッシュアップをして、ぜひ商品として正式なリリースをしていきましょう」という講評をいただきました。

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■OTT実施後のオンラインゼミ(2021年1月26日実施)

 2020年は新型コロナウィルス感染拡大の影響で、大学では多くの授業がオンラインとなりました。メディアプロデュース専攻・富樫ゼミも、後期授業の大半をオンラインで行い、ストーリーや動画の修正指導も動画会議で学生と教員がやりとりをしていました。
 この後期授業のEXest様と富樫ゼミの産学連携は、学生もまたオンラインという制約を体験しながら、動画コンテンツやコミュニケーションを通じた旅行体験の商品化に挑みました。メディアプロデュース専攻の学生の強みを活かした動画制作と、前期授業で学んだプロモーション・マーケティングの知識を駆使して顧客分析やテーマをいかにオンラインで伝えるか、頭をひねりました。
 ゼミ生全員が、愛知県の企業様、地域の協会様からご協力をいただき、制作した経験を通じ「学ぶことばかりだった」という前向きな達成感を得られました。今後も、富樫ゼミはEXest様との連携を続け、学生たちが商品化を目指していきます。

■《株式会社EXest様と愛知淑大学徳富樫ゼミの産学連携プレスリリース》
「動画を使ったインタラクティブ体験」で地元を紹介、来訪につながる取り組みを地元の大学生と実施(配信日:2021年1月14日)>
■《旅行業界専門の情報サイト『Travel Vision』の掲載記事》
EXest、愛知淑徳大学と連携でOTT実施 オンラインで「一緒に旅する経験」提供(配信日:2021年1月18日)>