追究

2021年03月19日

文学部 退任記念座談会

文学部 退任記念座談会

2020年2月18日(木) 長久手キャンパス 文学部 学部長室

30年以上にわたる教員人生を振り返り、
人を育てることの素晴らしさ、
人生を力強く生き抜くための秘訣をお伝えいただきました。

 2020年2月18日(木)、2020年度で文学部の教授の職を退任し、名誉教授になられる国文学科 久保朝孝先生と教育学科 二宮昭先生のお二人にお話を聞く、座談会がおこなわれました。
 久保朝孝先生は、1982年に愛知淑徳短期大学の国文学科専任講師として着任されて以来、39年間にわたり、専門の中古文学に関する学識を本学の学生たちに伝え、研究者としても『源氏物語』をはじめとする多くの中古文学の研究成果を発信してこられました。
 二宮昭先生は、1991年に愛知淑徳短期大学コミュニケーション学科助教授として着任されて以来、1999年に愛知淑徳大学文学部コミュニケーション学科、2000年に愛知淑徳大学コミュニケーション学部コミュニケーション心理学科、2009年に愛知淑徳大学文学部教育学科に所属し、専門の障がい児(者)支援についての学識を学生たちに伝えてきました。研究者としては動作法を専門とし、幅広い障がい児(者)の発達支援に尽力されてきました。

文学部 退任記念座談会

文学部 退任記念座談会

 このお二人をお迎えし、現・文学部長の太田 直子先生が司会進行を務めた座談会を実施。お二人の教員人生を振り返りつつ、教育や研究への情熱の根幹に触れる、素晴らしい時間となりました。
 まず、太田先生が「退職の日を迎えるにあたっての心境」をお二人に尋ねると、「採用面接の日のことが思いだされる」と答えた久保先生。「面接のために星ヶ丘の校舎を訪れたのですが、ちょうどその時、テニスのクラブサークルにいそしむ元気いっぱいの高校生を目にしました。もともと高校の教員でしたから、“とても素敵な環境だな”と思いまして。中学生から大学生まで教育に関われる愛知淑徳学園で働けることに胸を躍らせたことを今でも覚えていて、その気持ちを持ち続けたまま退職の日を迎えられることが、大きな喜びです」と、今の思いを語られました。二宮先生は「着任した時は、年齢構成的に“若手”だったのですが、自分はいつまでも“若手”のつもりでした。それが知らない間に、一番年上になっていて、今に至るという感覚です。ある意味、“老いを知らず”ここまでこられたのは、ひとえに、いろんな方々の支えがあったから。それに愛知淑徳大学がとても、“住み心地が良かった”ということなのだと思います」と、本学のあたたかな風土にも触れながら、これまでの日々を振り返りました。

文学部 退任記念座談会

文学部 退任記念座談会

 次に太田先生が「いかにして、自らが専門とする分野に行きついたのか」と質問すると、もともと法曹界をめざしていた久保先生は、浪人中に出会った予備校の先生がきっかけで、文学の道を志すことになったと回答。二宮先生は大学在学中に「飯と風呂は保証する」という話に惹かれて参加した「脳性麻痺児への支援キャンプ」がきっかけで動作法への道が開かれたと語り、お二人とも不思議なご縁と、意図せず訪れたきっかけをつかみ、今があることを伝えられました。
 さらに、教育者として感じていることを問われたお二人は、「近年は“実感を得ること”が難しい」と話題を展開。久保先生は「授業をする際は、全員に向かって伝える“マスの視点”と、ある一人に訴えかける“個に伝える視点”の両者を持ち合わせて語ることを意識してきました。けれど近年は、“伝わった”という実感を得ることが難しくなっています」と分析。二宮先生は「特に昨年は、リモートでの授業だったため、相手の思いを感じ取れなかった」と、久保先生の言葉を引継ぎ、そのうえで「自分が伝えたかったことが、ちゃんと伝わっているという実感が得られることが、教育者としての何よりの喜びです」とまとめ、教育実習の訪問指導に訪れたときなどに、活躍する卒業生の姿を見ると、とてもうれしくなると、教育者としてのやりがいについてもお伝えいただきました。

文学部 退任記念座談会

文学部 退任記念座談会

 座談会では「これからの愛知淑徳大学のあるべき姿」についても話題が及び、大学の応援歌を作詞した経験がある久保先生は「たとえば、卒業式で大学歌を教員も学生も、全員が声を揃えて歌う。そんな光景が実現されたとすれば、その時こそ、愛知淑徳大学が本当の意味で“大学になった”と言えるのではないでしょうか」と語り、「自分は集団の中で活動することが苦手で、文学部の中でも異質な存在だったと思います」と自らを評した二宮先生は、「それでも、こんな私を仲間にしてくれて、存在を認めてくれたところに、愛知淑徳大学らしさがあるように思います。そんな愛知淑徳大学を象徴している大学の理念“違いを共に生きる”という言葉は、障がい児(者)支援に従事する者としては、とても感心してしまう言葉で……。この大学が持つ“懐の深さ”をこれからも、未来につないでいってほしい」と大学のこれからに期待を寄せました。

文学部 退任記念座談会

 最後に、卒業生や学生へのメッセージを求められたお二人。久保先生は、「人に贈る言葉は、自分の人生を反映した言葉になるほかはなく、そのことを承知のうえで、いかにも貧しい人生の一部をお伝えしたい」と言葉をつないだ後に、現下の状況において大きな影響を受けた昨年の卒業生に向けた言葉を紹介。「渦中に福あり、福中に禍あり。号泣してよい、意気阻喪してよい、失意を引きずってよい。ただ、絶望の一歩手前でとどまろう。再起の芽は、悲しみのうちに確実に育っている。用心を忘れるな。人の失敗は、そのほとんどが、自分の得意分野で発生する」と、力強い言葉を贈りました。
 二宮先生は「障がい児(者)と付き合っていると、なかなかすぐにはいろんな成果は現れません。なので、いつも、“焦らず、慌てず、諦めず、やっていきましょう”と言っています。私もまだまだ、焦らず、慌てず、諦めず、生きていきますので、どんな状況でもそれぞれの立場で、がんばっていきましょう」と、やさしい人柄あふれる言葉で、教え子たちにエールを贈りました。
 人生の指針となるような、力強く、時にユーモアあふれる言葉に満ちた今回の文学部退任記念座談会。この模様は、下記のURLより閲覧が可能です。お二人の言葉は、卒業生や学生はもちろん、愛知淑徳大学文学部に関わるすべての方々にとって、あたたかく心に染み入るはず。ぜひとも、動画投稿サイトを訪れ、お二人のメッセージを受け取ってみてください。

【愛知淑徳大学公式Youtube】
■2020年度文学部談話会(前半)はこちら>
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