追究

2022年01月07日

創造表現学会主催講演会「知球儀」02 ミュージアム体験の長期記憶を探る

創造表現学会主催講演会「知球儀」02 ミュージアム体験の長期記憶を探る

2021年12月4日(土) 長久手キャンパス 825教室

ミュージアム研究の最前線に触れながら、
学術研究のおもしろさを知る講演会が開催されました。

 本学の創造表現学部は、言語・メディア・建築など多様な表現領域から、自己表現力や創造力、情報発信力を身につけ、社会を豊かにする人材を育成しています。実際に創作活動を通じて自らのスキルを高めることはもちろん、社会の中で活動する機会を多く用意し、表現の力を借りて人々を巻き込み、課題を解決する経験を通じて、「表現を活用する力」も養っています。また、学生が学外に出て活動するだけでなく、第一線で活躍するプロフェッショナルを本学にお招きし、自らの経験談を語っていただくトークイベントも積極的に開催。学生たちはたくさんの成長のチャンスを得ながら、日々の学修に打ち込んでいます。
 2021年11月・12月には、創造表現学会が主催する講演会を開催。この講演会は全3回シリーズで構成されており、さまざまな専門分野の研究者からご自身の研究の「今」を語っていただくことで、これからの時代を生きるヒントを得てほしいと開催されました。

創造表現学会主催講演会「知球儀」02 ミュージアム体験の長期記憶を探る

創造表現学会主催講演会「知球儀」02 ミュージアム体験の長期記憶を探る

 第二回となった12月4日(土)には、北海道大学総合博物館教授である湯浅万紀子先生が登壇。ミュージアム活動に関与するさまざまな人のミュージアム体験の長期記憶に注目し、その質的な分析をおこなっている湯浅先生は、聴講する学生から事前に「最も印象に残っているミュージアム体験のエピソード」を回収。集まった119のエピソードすべてを紹介・分析しながら、ミュージアム体験は人々にどのような影響を与えるのかを紐解きつつ、「社会におけるミュージアムの意義」についてご講演いただきました。

創造表現学会主催講演会「知球儀」02 ミュージアム体験の長期記憶を探る

創造表現学会主催講演会「知球儀」02 ミュージアム体験の長期記憶を探る

創造表現学会主催講演会「知球儀」02 ミュージアム体験の長期記憶を探る

創造表現学会主催講演会「知球儀」02 ミュージアム体験の長期記憶を探る

 まず湯浅先生はミュージアムの種類別に、学生たちのエピソードを紹介。科学系ミュージアム、美術館、歴史博物館、動物園、水族館など、さまざまなミュージアムが取り上げられ、学生たちの豊かな経験を会場全体でシェアしていきました。続いて、体験の種類を人との関わり、時を経て変わる意味づけなどに注目して解説しました。エピソードで言及される内容は「家族や友人との会話」や「展示空間や建物、ミュージアムグッズ」、「においや感触」そして「現在考える体験の意味と今後の再訪への思い」などにまでおよび、実に色鮮やか。湯浅先生も「みなさんの経験談がとてもいきいきと綴られていて、当時の様子が目に浮かぶようです」と語られ、ミュージアムが人々に感動や思い出を与えることを、丁寧に伝えていきました。
 さらに湯浅先生は「ミュージアムは社会に必要か?」という問いに明確に答えるために、長年研究を続けていると語り、人々のミュージアム体験の長期記憶はミュージアムを評価する質的資料となりうると解説し、研究のおもしろさも学生たちに伝えました。
 最後に「私がこのテーマに取り組んだきっかけは本当に純粋な問題関心からでした。学際的な共同研究として発展させていくとそれが研究として確立していきました。みなさんもぜひ、夢中になれるテーマを見つけてください」とメッセージを伝え、講演会を締めくくられました。
 「記憶を紐解く」という新たな研究手法に出会い、「学術研究」の可能性の広さに気づくことができた今回の講演会。「自身の問題関心が研究対象として発展し得る」という発見は、学生たちの今後の学生生活において、自らの向学心を加速させるための一助になることでしょう。創造表現学部では、今回の講演会のように学生たちの知的好奇心を刺激するさまざまな機会を用意し、一人ひとりの成長をうながしていきます。