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2022年05月06日

「花開くコリア・アニメーション2022」韓国アニメーション映画の字幕翻訳のためのミーティング

「花開くコリア・アニメーション2022」韓国アニメーション映画の字幕翻訳のためのミーティング

2021年2月25日(金)オンライン開催

交流文化学科の学生が、映画の字幕翻訳を通して韓国人監督と交流。
言語のみならず歴史・文化の理解にも繋がった貴重な経験に。

 交流文化学科の学生たちは、大学で身につけた語学スキルを活かし、学外活動にも積極的に取り組んでいます。これまでにも、韓国のインディーズ・アニメーション映画祭「花開くコリア・アニメーション2018+アジア」や「あいち国際女性映画祭」などで上映された作品の字幕翻訳に挑戦。本学科の授業「韓国・朝鮮語映像翻訳」を担当する三重野 聖愛先生の監修のもと、翻訳作業に取り組んできました。
 今年度は、在学生10名と卒業生5名が、「花開くコリア・アニメーション2018+アジア」でもご縁のあった韓国の映画監督カン・ヒジン氏の短編アニメーション作品「May・JEJU・Day」の字幕翻訳に挑戦しました。翻訳作業をするにあたり、2月25日(金)には、監督を招いて、学生と三重野先生、チョ先生によるオンラインミーティングを開催。作品についての解説や作品に込めた監督の思いなどについて、有意義なやり取りが繰り広げられました。

 「May・JEJU・Day」は、1948年に起きた「済州島四・三事件」の生存者の証言をまとめたドキュメンタリーアニメーション映画。米軍政の統制下で当時の島全体の約10人に1人が犠牲になった虐殺事件について、生き残った人々が自身の記憶を絵に描き、証言する内容となっています。そこで、オンラインミーティングでは、映画で使用した絵を画面共有しながら、監督が事件の描写について考慮した点を解説することから始まりました。「歴史の苦しみを次の世代がどのように認識して伝えていくべきか、悩みながら制作しました」と作品づくりについて語った監督。こうした思いを受け止めながら、学生たちは翻訳に関する質問をしていきました。ここで注目したいのは、監督が表現したいことや登場人物が伝えたいことを翻訳するための質問が出たこと。例えば、作品に登場する童謡の「鳥は白い」という歌詞の「白い」が意味するものは何なのか、という質問。これには、ただ直訳するのではなく、言葉の意図を正確に把握したうえで翻訳したいという学生たちの気持ちが表れています。さらに、済州島の方言や専門用語、文化、歴史についてなど、学生たちは、一語一語丁寧に翻訳するための質問を重ねました。
 監督からは、「みなさんが感情にフォーカスして翻訳していることがわかり、私はいま感動しています。私も登場人物の感情を伝えたくて作品を制作したので。同じ目標に向かって、翻訳してくれることを信じています」という素敵な言葉をいただきました。

 参加者同士のやり取りは全て韓国語でおこなわれ、監督の人柄がにじみ出る和やかな雰囲気で進行したミーティング。充実した時間は終盤を迎え、見守っていたチョ先生は「監督と学生のやり取りを聞きながら、翻訳者というのは、こういったところに着目するのだと新たな気づきがあり、翻訳の実践を通してみんなが修得する尊い学びに触れられる良い機会になりました」と感想を述べられました。さらに、「作品を子どもたちにもぜひ見てほしい」という監督に、「子どもたちに何を伝えたいですか?」と質問。監督は、「作品の中でおばあさんがデモに向かうシーンがあるのですが、それを見て、『なぜ事件から70年経った今もデモをやっているのか』という疑問が子どもたちに芽生えるだけでも良い変化だと思います。映画を見た人に何か疑問を抱いてもらうことも、今回の作品の目的のひとつですから」と答えました。
 ミーティングの進行をされた三重野先生からは、「日本語の字幕翻訳は、セリフ1秒あたり4文字というルールがあり、時間を計って文字数を決め、短く要約します。直訳ができないので、言葉の意図を正確に把握しないと翻訳ができません」と、プロの翻訳・通訳者として活躍している先生ならではの解説も。続いて「こうした厳しい制約がある中で、学生たちは熟考しながら、誠意を持って翻訳に取り組んでいます。監督が描かれた作品の世界を、美しい日本語で、日本のみなさんに伝えてください」と学生たちへエールを贈りました。最後に監督から「済州島四・三事件について話し合えたことを嬉しく思います。またコラボレーションできるといいですね」と今後への期待を込めた言葉をいただき、ミーティングは終了。監督と翻訳者が作品について語り合った時間は、学生たちにとって貴重な経験になりました。

学生たちが翻訳した映画「May・JEJU・Day」は、5月18日(水)から22日(日)までの5日間、韓国のインディーズ・アニメーション映画祭「花開くコリア・アニメーション2022+アジア」でオンライン上映されます。

「花開くコリア・アニメーション2022」韓国アニメーション映画の字幕翻訳のためのミーティング

■花開くコリア・アニメーション2022
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 今回、学生たちは、映画作品の翻訳を通して、韓国語のスキルアップはもちろん、人の気持ちに寄り添う姿勢や言葉の背景にある歴史、異なる文化や価値観への理解など、翻訳者に欠かせない多くのことを学びました。交流文化学部では、今後も学生たちのスキルを磨き、学びへのモチベーションを刺激する機会を提供していきます。