追究

2022年11月15日

高校生のためのスタートアップ心理学講座

高校生のためのスタートアップ心理学講座

2022年8月25日(木) 長久手キャンパス 7号棟4階741教室

心理学部の教員による高校生向け講座が3年ぶりに対面で開講。
心理学部の学生もスタッフとして携わり、
創造表現学部の学生もこれまでの学びを活かして撮影と編集を担当しました。

 本学の心理学部が高校生向けの一日体験講座として毎年行っている、「高校生のためのスタートアップ心理学講座」。心理学の魅力について本学の専任教員が講義をするこの講座は、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、しばらく対面での開催を中止していました。しかし、今年度は厳重な感染症対策のもと、3年ぶりに対面での講義の実施が可能に。2022年8月25日に開催された本講座には、定員150名が満席となる申込みがありました。本講座には、心理学部の学生もスタッフとして携わり、さらに昨年に引き続き創造表現学部 メディアプロデュース専攻の学生にも講座の様子の撮影や編集を担当してもらいました。今回のレポートでは、心理学講座の内容と、撮影・編集に協力した創造表現学部 メディアプロデュース専攻の学生の声をお届けします。

高校生のためのスタートアップ心理学講座

高校生のためのスタートアップ心理学講座

1. 心理学とは/丹藤克也先生

高校生のためのスタートアップ心理学講座

高校生のためのスタートアップ心理学講座

 初めに本講座の導入として、丹藤先生が「心理学とは何か」をテーマに、心理学の分野や概要を紹介。こころや行動の法則を科学的に探究・解明する学問である心理学について、わかりやすく解説しました。心理学に対する一般的なイメージと、実際の心理学では大きなギャップがあることを説明した後、講義は錯覚についての話へと移ります。主観的な錯覚という体験を、客観的に測る・捉えることを「チェッカーシャドウ錯視」を用いて解説。ほかにも、人の性格を表す性格の5大要素「ビッグファイブ」や、心理学に必要な統計学についても紹介し、参加者の関心を高めました。

2. 発達心理学/久保南海子先生

高校生のためのスタートアップ心理学講座

高校生のためのスタートアップ心理学講座

 発達心理学について、「発達=成長と捉えがちですが、それでは全体の半分しかイメージできていません」と話す久保先生。発達とは、人間が生まれてから死ぬまでの変化、つまりヒトの生涯にわたる変化のすべてであることを説明し、発達心理学の研究対象年齢の幅広さを伝えました。加えて、本学の心理学部の教員がすべての年齢層の研究に対応していることを話し、参加者の期待を高めます。研究テーマも文化や記憶、友人関係、家族、社会活動、生きがいなど多岐にわたる発達心理学。本講義では「感情の発達」をテーマに、「エクマンの基本の6感情の理論」や「ラッセルの感情の円環モデル」などについてワークシートを使いながら解説。久保先生は「何か一つ気になることがあれば、他の視点から見てみましょう。多様で幅広い視点を持つことを心掛けることが、大きな成果を得る鍵となります」と伝え、講義を締めくくりました。

3. 臨床心理学/浜本真規子先生

高校生のためのスタートアップ心理学講座

高校生のためのスタートアップ心理学講座

 さまざまな心理学の知識を活かし、人の心を支援するために応用する実践的な学問である臨床心理学。本講座では、心理学の知識だけでなく医学的な知識も使いながら行う「カウンセリング」について、心理学部の学生による実践を交えながら浜本先生がわかりやすく解説しました。主に日常会話とカウンセリングの違いや、相談者に対する心理士としての返答の仕方などを説明。相手のペースを尊重し、心理士から質問するのではなく、相談者が自発的に話せるような状況を作ることが大切だと浜本先生は話します。また、人はみな自分の固有の脳で話の内容を処理するため、会話において誤解やズレが生じることは当たり前であり、そのことを前提に対応することも心理士として大切なことだと説明。話す技術よりも聴く技術が重要であることを、講義全体を通して伝えました。

4. 認知心理学/吉崎一人先生

高校生のためのスタートアップ心理学講座

高校生のためのスタートアップ心理学講座

 認知心理学では、知覚や言語、記憶、思考、学習などの働きがどのようなメカニズムになっているのかを、実験を通して研究します。今回吉崎先生は「ヒトの記憶の不思議さの理解」をテーマに、実際に大学で行っている演習授業を実施しました。2分間スクリーンに流れてくる単語を記憶するよう説明した後、回答用紙を配布。回答用紙に書かれている70単語がスクリーンに表示されていたかどうかを答えるシンプルな実験です。実験終了後に記憶の3つのプロセスである「符号化」「貯蔵」「検索」について説明し、ヒトは記憶をする際に知識(意味のつながり)を使っていることを解説。連想による記憶は、ヒトの優れている点でもあり、落とし穴でもあります。知識に左右された連想が記憶をゆがめるということを、実験を通して伝えました。

5. 社会心理学/小川一美先生

高校生のためのスタートアップ心理学講座

高校生のためのスタートアップ心理学講座

 「あなたはどんな性格ですか?」という問いから始まった本講座。参加者が各々自身の性格を書き出した後、「なぜ自分がそのような性格だと思ったのか」とさらに問いかける小川先生。「友達に明るいねと言われたから」「周りよりも気配りができるから」などの例を挙げ、自分の性格を判断するときでさえも、他者の影響を受け、他者と比較をしていることを説明します。その点を踏まえ、他者が人の心のはたらきに与える影響や、他者との関係性について検討する学問である社会心理学について、講義を進めました。小川先生は、「アッシュの同調実験」を紹介し、人の同調行動について詳しく解説。規範的影響や情報的影響を受けることによっておこる同調行動の実験結果に、参加者は強い興味を示します。最後に小川先生は、生活の中に潜むさまざまな出来事の理由を解明し、研究結果をもとに対策を考える社会心理学の魅力を伝え、講義を締めくくりました。

《取材・編集を担当した学生コメント》

高校生のためのスタートアップ心理学講座

高校生のためのスタートアップ心理学講座

創造表現学部 創造表現学科 メディアプロデュース専攻 4年 大西 創一朗さん
創造表現学部 創造表現学科 メディアプロデュース専攻 4年 石原 光さん
創造表現学部 創造表現学科 メディアプロデュース専攻 1年 山岡 拓真さん

 創造表現学部ではさまざまな分野の授業を履修でき、自分はどのような分野が向いているのかわからなくても、それぞれ1から教えてもらえるため初心者でも安心して学べます。主体的に行動さえすれば自分のレベルを上げることができるので、成長の場としてうってつけだと思います。(大西さん)

 私はゼミで「人の感性をメディア表現に活かす」ことを研究しており、そのなかで培ってきた知識やスキルを、学生という立場で今回の心理学講座の編集に活用できたことに誇りを感じています。(石原さん)

 今回、仕事として本格的に撮影するのは初めてだったので少し緊張しましたが、先輩方のサポートのおかげで徐々に慣れていき、スムーズに撮影に臨むことができました。技術的な学びも多く、現場の雰囲気も体感できたのでとても勉強になりました。(山岡さん)

 今回のイベントは、メディアや情報発信の理論・表現方法を学んでいる創造表現学部の学生にとっても、学部の枠を越えて実践を学ぶよい機会となりました。この経験が今後さらなる研鑽のモチベーションとなることでしょう。