追究

2023年01月12日

創造表現学会主催 くどうれいんトークショー「震災と文学」

創造表現学会主催 くどうれいんトークショー「震災と文学」

2022年11月18日(金)長久手キャンパス8号棟824教室

くどうさんの個性が光るトークショー。
90分があっという間に過ぎてしまった有意義な時間でした。

 11月18日(金)、作家のくどうれいんさんをお招きし、トークショーおこないました。くどうさんは1994年生まれの小説家、エッセイスト。俳句・短歌では「工藤玲音」名義で活躍されています。初の中編小説『氷柱の声』が第165回芥川賞候補になった後は、エッセイ集『虎のたましい』『人魚の涙』、絵本『あんまりすてきだったから』などを上梓。現在は講談社「群像」でエッセイ『日々是目分量』、日本経済新聞夕刊「プロムナード」で食エッセイ、小学館「本の窓」で長編小説『オーバーオーバー』を連載中です。

創造表現学会主催 くどうれいんトークショー「震災と文学」

創造表現学会主催 くどうれいんトークショー「震災と文学」

創造表現学会主催 くどうれいんトークショー「震災と文学」

創造表現学会主催 くどうれいんトークショー「震災と文学」

 トークショーは創造表現学科の柳井貴士先生と対談形式で展開。冒頭はくどうさんの幼少時代、育った環境やどんな子どもだったのかを紹介してくれました。石川啄木と同じ小中学校に通い、自然に親しみ、草木の名前を覚えるのが得意でした。小中高では作品を書き、さまざまなコンテストに応募するも、なかなか1位を取ることができず、悩んだことも。「あなたは1位を取れたら書くのを止めてしまうかもしれない。だから神様が1位を取らせないのだ」と言われたこともエピソードとして話してくれました。また、作家の定義についても「私は絶対に作家になりたいと思っていたわけではない。作家とは職業ではなく『状況』である。私の場合は作品を文芸誌などに連載させてもらっている状況があるだけ。作品を書き続けている人は、その時点ですべて作家だと思っている」と、くどうさんらしい言葉で表現されました。

創造表現学会主催 くどうれいんトークショー「震災と文学」

創造表現学会主催 くどうれいんトークショー「震災と文学」

 その後、トークショーのタイトルにもなっている「震災と文学」について、自身の著書である『氷柱の声』について話していただきました。『氷柱の声』は東日本大震災を題材にした小説ですが、最初はノンフィクションで20ページくらいのものを書いてほしいと出版社の担当者に依頼されたそうです。しかし、書き上げてみると35ページほどに増えてしまい、その後も被災者への取材をおこなうことで、ボリュームを増し、中編小説として発売されることになりました。地震が起こって2ヶ月経った頃、くどうさんの父親が家族に見せておくべきと、車で現地に連れて行ってくれたそうです。「空はいつもと変わらない青空なのに、地面は全部土の色になっていた。正体の分からない匂いが漂う景色を見て、私にはこれを語る資格はないと思った」と当時16歳だったくどうさんの絶望感を語ってくれました。それから10年が経ち、言葉にできなかったことと向き合い、このような作品として世に出たのは不思議なことであり、運命のようなものを感じさせます。
 その他にもなぜ東京で暮らさず、地元の岩手に居場所を求めるのか。就職活動時にエントリーシートに書くと面白いと思われるネタなどを話していただきました。事前に集めたくどうさんへの質問には真正面から真摯に答えいただきました。そして最後には集合写真を撮り、サイン会もおこなわれました。終始、飽きさせることのないあっという間の90分でした。