追究

2023年11月02日

健康栄養学科 榎ゼミ3年生 愛媛県石川ヘルスケアグループ施設見学

2023年9月21日(木)HITO病院、空中庭園「HITO/TERRACE」

 健康医療科学部 健康栄養学科の榎ゼミでは、「栄養改善に向けた介護予防セルフプログラムの開発」をテーマに高齢者栄養、生活習慣病と食の関わりなどについて研究を進め、病院や行政機関、福祉施設など多様な場所で活躍できる管理栄養士を目指しています。学外の医療機関や企業とも積極的に連携し、実践力を高められることが魅力の一つです。

 2023年9月には、現場の管理栄養士がどのような視点を持ち、どのように働いているのかを学ぶため、愛媛県にある石川ヘルスケアグループの施設見学を実施しました。
 今回は、当日の見学の様子と見学会への事前学習のレポートをお届けします。

事前学習

 2023年7月27日(木)、9月におこなわれる石川ヘルスケアグループの施設見学に向けて、同グループが運営する病院や介護老人保健施設で活躍されている、管理栄養士の小野晋平先生による事前学習としてのオンライン授業がおこなわれました。

 はじめに、石川ヘルスケアグループについてご紹介していただきました。愛媛県四国中央市の中核医療機関として地域をサポートする同グループは、病院や介護老人保健施設、特別養護老人ホームなどを運営されており、急性期治療から在宅治療まで地域住民一人ひとりの課題に対応する地域包括ケアシステムをチームで構築しているといった特徴をお話いただきました。学生たちは小野先生のお話に真剣に耳を傾け、見学をおこなう施設についての理解を深めます。
 また、施設が求める人物像として「人と関わること、人のために動けること、人を幸せにすること、これらが好きな人」が挙げられました。この考え方について「医療施設に勤める上で重要な価値観なので、ぜひ意識してもらいたいです」と伝え、学生たちもそのメッセージを忘れぬように熱心にメモを取っていました。

 後半は、学生時代の経験や現在の業務内容などを語っていただきました。高校時代から料理が好きで、管理栄養士を目指されていたという小野先生。大学で受けた「臨床栄養学」の授業で「患者さんを元気にするために栄養がとても重要になる」ことを学び、その際の学びを原動力として国家試験合格に向けて勉強に励まれました。
 現在、小野先生は訪問栄養指導や各施設の栄養管理士の育成などに従事されています。これらの業務内容について「管理栄養士の仕事は大変ですが、利用者さんが元気になったときや、自分で考えたメニューが喜んでもらえたとき、後輩の成長を感じたときに、この仕事を続けてきて良かったと思います」と、管理栄養士のやりがいを語られました。

 事前学習を通じて、石川ヘルスケアグループの詳細や、管理栄養士の心構えなどについて学んだ学生たち。管理栄養士の業務だけでなく、後輩たちの指導も担当されている小野様の視点や考え方は、学生たちに新たな気づきをもたらしたことでしょう。今回の学びを踏まえて、さらなる疑問点や学ぶべきポイントなどを深掘りするなど、施設見学でより深い知見を得るための準備を進めました。

四国中央市施設見学

 9月21日(木)、石川ヘルスケアグループの施設見学を実施しました。川之江駅に到着後、初めに、主に急性期医療を提供している「HITO病院」へ伺いました。管理栄養士の三木千春先生の案内で厨房での作業や栄養指導の様子を見学し、現場での動き方や患者の方への接し方を学びました。さまざまなスタッフと協働されている様子を見た学生たちは「管理栄養士は栄養について考えるだけでなく、他職種と連携しながら多角的な視点で栄養介入をおこなうことの必要性を改めて理解できました」と語りました。また、HITO病院では緩和ケア病棟の見学もさせていただきました。授業で学んだことを実際に現場のスタッフの方も実践していることを知り、今後の学修へのモチベーションにつながったことでしょう。

 続いて、特別養護老人ホーム「萬翠荘」と、地域密着型介護老人福祉施設「三島の杜」をそれぞれの管理栄養士である福岡奈央先生と石川七海先生の案内で見学しました。萬翠荘では管理栄養士が調理も担当しており、調理員の方とともに献立づくりや食材の確認をする様子を見学しました。主となる給食業務は業務量が多く、限られた時間で効率的に作業することが求められます。当日は、新人の管理栄養士でも効率的に動けるように先輩スタッフが作成したスケジュール表なども見せていただき、学生たちは段取りをうまく計画することの重要性が身に染みたようです。

 三島の杜では、学生たちがグループホームの入居者の方とお話しする機会を設けていただきました。学生たちが「私たちのほうが入居者の方から元気を分けてもらった」と語るほど、入居者の方は生き生きとしてパワフルで明るく、洗濯や洗い物など、できる限りの家事を自分でおこなっている方も多いそうで、学生たちの入居者の方に対するイメージが変わる体験となりました。

 最後に介護老人保健施設「アイリス」を訪問しました。アイリスの給食施設では、管理栄養士の徳永春奈先生にご説明いただき、糖尿病や貧血など対象の方の病状によって担当が分かれており、それぞれの献立の立案や調理の様子を見学して介護老人保健施設での管理栄養士の働き方を学びました。当日は、併設の通所リハビリテーションにおいて、利用者のためのイベントが開催されており、「利用者もスタッフも楽しそうにイベントに取り組んでいる様子が印象的でした」と学生は振り返りました。

 見学後に開かれた座談会では、小野晋平先生を座長として、徳永春奈先生、石川七海先生、福岡奈央先生にご出席いただき、見学後の質疑応答の時間を用意していただきました。学生たちから「働いていて苦労していることは何ですか」「学生時代のイメージと実際の現場で違ったこと」「他職種との連携方法」など、さまざまな疑問が寄せられますが、各施設の担当者の方々はどの質問にも丁寧にご回答いただきました。「管理栄養士のやりがいは何ですか」という質問には、「患者さんの栄養状態が改善して少しでも元気になってくれることです」と、先生方が口を揃えて話されました。その言葉を聞いた学生は「私も食事を通じて患者さんの体調を良くしたい」と考え、病院や介護施設などに勤務する管理栄養士への思いが強まったと語りました。

 管理栄養士の視点や患者や利用者の方とのコミュニケーション、勤務スケジュール、他職種との連携方法などを、体験しながら学んだ施設見学。病院・特別養護施設・介護老人保健施設と各施設における管理栄養士の働き方や役割の細かな違いなども発見でき、今回の経験を通じて、学生たちが抱く将来のビジョンがより鮮明になったのではないでしょうか。本学では今後も、学生たちに実践的な学びを提供し、社会や地域に貢献できる人材育成を実現していきます。

榎裕美先生から一言

 学生たちは、臨地実習で、特別養護老人ホーム、グループホーム、サービス付き高齢者向け住宅(今回、レインボーを見学)、通所リハビリテーション等の職域を経験することが無かったため、介護保険施設での利用者の様子、管理栄養士の役割を直に見て学び、介護保険における管理栄養士の評価を理解するきっかけになったと思います。学生たちからの強い希望があり、四国中央市の1日見学を計画しましたが、学生たちにとって貴重な経験となり、快く受け入れていただいた石川ヘルスケアグループの関係者の皆様に感謝しています。