追究

2015年10月30日

愛知淑徳大学大学院 図書館情報研究会 このゆびとまれ2015 ―卒業生からの報告と大学院研究への希望―

愛知淑徳大学大学院 図書館情報研究会このゆびとまれ2015―卒業生からの報告と大学院研究への希望―

平成27年9月20日(日) 愛知淑徳大学長久手キャンパス 国際交流会館

図書館情報学のあり方を探る勉強会。
本学大学院の卒業生と在学生が講演し、意見を交わしました。

 9月20日(日)、愛知淑徳大学 長久手キャンパスで、図書館を取り巻く環境の実態を現場の声から探る勉強会が開かれました。講演者は本学の大学院の卒業生と在学生の4名の方々。司書教諭や市立図書館職員など、それぞれの立場で図書館のあり方を見つめ、経験に基づく問題提起をおこないました。会は司会者が発表者に質問する形で進行し、講演後は聴講者との活発な意見交換がなされました。また、4名の講演終了後は「お悩み相談会」と題し、一般聴講者から図書館に関する課題を提示していただくことで、実社会の問題に即した勉強会が実現しました。ここでは4名の発表者ごとに、講演の内容をレポートします。

田中聖子さん(鈴鹿市教育委員会 勤務)

 司書教諭として働いていた田中さんは、「司書の視点から学校図書館を見つめたい」と愛知淑徳大学大学院へ入学。大学院では実践と研究を結びつけて考えることの大切さを実感したといいます。「私の中には現場で働きながら漠然と考えていた“理想の図書館”がありました。その後、現場を離れて大学院で学ぶうちに、その考えが学術的に研究されていたことを知りました。研究者の視点と実践者の視点、両方を持ちあわせて考えることで、よりサービスが豊かになることを実感しています」と田中さん。現在は、鈴鹿市の教育委員会で現職の教員を対象に、教育者として、ライブラリアンとして、図書館に関わる若手教員の育成に力を注いでいると語りました。

中西由香里さん(豊田市教育センター 勤務)

 平成19年から豊田市で学校司書として活躍。現在は、豊田市教育センターの学校司書として学校現場の教職員や司書教諭がおこなう図書館教育をサポートしています。図書館利用教育や図書資料を活用した学習の効果を検証したいと思い、教育学の視点から図書館を捉え、探求したいと大学院へと進みました。公共図書館と学校図書館を連携しておこなった取り組みや司書教諭の先生と協働で実施した授業などを紹介しながら、学校図書館だけにとらわれず、周りを巻き込みながら図書館教育を実施することで、子どもたちの学びに奥行きが出ることを伝えました。その橋渡しを担うのが、学校司書の務めだと、あらためて聴講者に訴えかける講演となりました。

西村飛俊さん(一宮市立図書館 勤務)

 西村さんが勤務する一宮市立中央図書館は、2013年1月に開館した比較的新しい図書館です。ビジネスマン向けの講座を開くなど、今までの図書館にとらわれない新しい取り組みを紹介しながら西村さんは「図書館がめざすべき方向は、自治体ごとに異なります。その目的やゴールに即したサービスの提供が必要です」と提言。その上で、「公共図書館は自治体のニーズをとらえて、市全体の社会教育や生涯教育、あるいはまちの賑わい創出や市民活動の支援など、多彩な要望にさまざまな形で貢献できるよう考えていかなくてはいけません。そのためにも、図書館だけでなく他の施設と横断的に連携する必要があると思います」と話しました。市民のニーズを形にできる図書館をめざしていると語りました。

高嶋志帆さん(国立国会図書館 勤務)

 今年の3月に大学院を卒業し、国立国会図書館(NDL)に勤務している高嶋さん。「著作権」に興味を持ち、学生時代は法学の視点から、時代の変化に応じた著作権のあり方について探りました。その中で文献を探すことで知識が深まることのおもしろさに気づき、さらに社会の電子書籍への注目の高まりに触れ、図書館情報学の道へ。大学院では「デジタルアーカイブの二次利用」をテーマに、海外の文化機関の調査分析をおこないました。この経験は憧れのNDLに就職した今も活かされていると高嶋さんはいいます。「大学では自分の進む道を模索するようにさまざまな知識を吸収しました。一方大学院は、いわば、持久戦。ひとつのテーマを突き詰めた経験は、自分にとってとても重要なことだったと思います」。