追究

2016年01月15日

交流文化学部主催 リンダ・オーハマ氏講演会 「映画 TOHOKU NO SHINGETU Before & After」

交流文化学部主催 リンダ・オーハマ氏講演会 「映画 TOHOKU NO SHINGETU Before & After」

平成27年11月13日(金) 星が丘キャンパス

困難を受け入れ、力強く生きる人々がいることを、
学生たちはリンダ・オーハマ氏の映画から教わりました。

 11月13日(金)星が丘キャンパスでリンダ・オーハマ氏の講演会を開催しました。リンダさんは、カナダ在住の日系三世で、数々のドキュメンタリー映画を手掛ける監督です。今回の講演会では全編英語で、東日本大震災の被害を受けた岩手県や福島県での撮影を開始した頃(Before)と現在(After)の様子を、映像や写真を交えて会場に訪れた学生たちに伝えました。
 日本時間の2011年3月11日、リンダさんはカナダのバンクーバーで東日本が甚大な津波の被害を受けたことを知りました。すぐに行動したのは、孫のエラちゃん。布に東北の子どもたちを勇気づける絵とメッセージをしたためました。さらに地域の子供たちがこの活動に加わり、たくさんの布をつなぎあわせた巨大な「クロス・レター(布の手紙)」が完成。リンダさんはその手紙を手に、岩手県閖上市の中学校を訪れました。閖上市の子どもたちはカナダからの手紙に勇気をもらったと言い、自分たちも返事を書きたいと、東北地方でもクロス・レターを制作することになりました。「“LOVE&PEACE&SMILE”と書いた中学校教諭の男性は、津波で亡くなった娘さんのことを笑顔で誇らしげに私に話しをしてくれました。“娘のおかげで、12年間も幸せな父親でいることができた”と。子供が亡くなってしまったことをただ悲しむのではなく、亡くなってしまった事実をマイナスからプラスへの思考に一生懸命変えようとしていたのです。私は彼に"ないものについて考えるのではなく、今あるものに感謝すること"を教わりました」と、リンダさんは東北地方の人々との出会いから多くのことを学んだと語りました。
 そして、リンダさんは約2年間かけて取材をして作った映画の一部を上映し、東北地方の人々の生の声を伝えました。“地元の人が故郷に戻ってきた時に寂しくないように”とヒマワリの種を蒔く男性、被災者の写真を復元しようと活動する人たち、福島で子育てに奮闘する若い母親たち、避難所で尺八の演奏をする男性。それぞれの立場で、東日本大震災に向き合う人々のたくましい姿に、会場は感動の涙に包まれました。リンダさんは最後に「今、被災者の皆さんが心の拠り所にしているのは、日本の文化や大切に受け継がれてきた伝統です。若い世代の人々はその素晴らしさを忘れがちですが、大事に守り続けてください」と伝え、「まもなく完成する映画を世界中の人に見てもらいたい、そして東北の人たちの声を聞かせたい。今の状況、彼らの夢、弱さも含めた力強さを伝えたい」と話しました。
 「東北を撮り終えた今も状況は変わりません。仙台などの都市では復興は進んでいますが、大槌町のような小さな町では、まだ仮設住宅で暮らす人が沢山います。その仮設住宅も傷み始め、そこに住む人の心もボロボロになってきています。まだ東北は大丈夫なんかじゃないんです。彼らが今一番恐れているのは世間から忘れられてしまうことです。今こそ彼らを心から抱きしめて支援する気持ちが必要なのです。」リンダさんの言葉は、文化を切り口に、世界に目を向け、学びを深めている学生たちの胸に響きました。