追究

2016年03月14日

教育学会主催 子どものためのミュージカル「まほうのふえ」

教育学会主催 子どものためのミュージカル「まほうのふえ」

平成28年2月4日(木) 長久手市文化の家 森のホール

モーツアルトの歌劇を子ども向けミュージカルにアレンジ。
「家族愛」をテーマに、学生たちが思いを込めて上演しました。

 総合芸術といわれるミュージカルは、演劇、音楽、ダンス、文学、美術などのあらゆる要素で構成されています。教育学科4年次に開講される「総合表現」では、毎年、ミュージカルづくりに学生主体でチャレンジ。脚本作成からステージ構成の考案、キャストやオーケストラのトレーニング、衣装・大道具・小道具制作のすべてを、仲間とアイデアや力を出し合っておこないます。その過程で、言葉や音楽、身体運動、造形などの表現力、企画力、実践力、リーダーシップなど多様な力を伸ばし、「教員になる」という夢を見据えて互いに切磋琢磨します。

 2015年度の履修者約50人は、モーツアルトの歌劇「魔笛」をアレンジしたミュージカル「まほうのふえ」の制作に約1年間かけて取り組みました。「魔笛」はモーツアルトが絶命する2か月前に作曲したオペラであり、完成したのは1791年。当時の言葉で紡がれるセリフは難解なため、学生たちは試行錯誤して子どもに伝わる表現を創り上げました。そして2月4日(木)、教育学会主催のイベントとして長久手市内の大ホールで上演しました。招待したのは、学校教育体験や教育実習、ボランティア活動でお世話になっている長久手市の小学校6校の児童。開演前からご家族と一緒に続々と集まり、会場には賑やかな声が響いていました。

 物語の主人公は、勇敢なタミーノ王子。夜の女王の娘であるパミーナ姫の救出をめざし、仲間と共にさまざまな試練を乗り越えていきました。個性豊かな登場人物たちの歌やダンス、各場面をドラマチックに盛り上げるオーケストラの生演奏、幻想的な世界観を形づくる舞台装置や衣装、その一つひとつに学生たちの思いが込められ、子どもたちを惹きつけるステージを生み出していました。タミーノ王子が争いを止めるために笛を吹くシーンでは、客席の子どもたちも参加して「きらきらぼし」を大合唱。会場が一体感に包まれたところで、感動のクライマックスを迎えました。敵対していた夜の女王、高僧・ザラストロ、パミーナ姫の家族3人が互いに素直な気持ちを伝え合い、笑顔で手を取り合う姿を通し、このミュージカルのテーマ「家族愛」を表現。「思いやりを大切にして、家族ともっと仲良くなろう」というメッセージを子どもたちに伝えました。

 ハッピーエンドで閉幕したミュージカルに、大きな拍手を贈った子どもたち。そのきらきら輝く表情を見た学生たちは、4年間の集大成となる舞台の成功を実感し、喜びや達成感を分かち合っていました。次の春からそれぞれ、新たなスタートラインに立ちます。小学校や特別支援学校の教員となる、教員採用試験に再チャレンジする、専門性を高めるために大学院に進学する、講師として現場経験を重ねる......進路は一人ひとり異なっていても、教育学科で仲間と共に学び、高め合った経験は、教職を志す彼らのパワーの源となるでしょう。

演出チーム 脚本担当
文学部 教育学科 4年 澁谷 明里さん

 モーツアルトが人生の最期につくり、時をこえて愛され続ける「魔笛」。その世界観や美しい音楽を活かし、子どもたちも楽しく観られるミュージカルを上演したいと考え、約50人のチームで全力を注いできました。浅田まり子先生に支えていただきながら、自分たちで台本を作成して練習を積み重ね、美術や衣装も手掛ける中で、教育学科で培ってきた柔軟な思考力や企画力、行動力などをさらに高めることができたと思います。また、それぞれの個性や能力を合わせると、大きな目標も達成できるとあらためて実感しました。教育現場に立つときにも、教員同士の連携を大切にしていきたいと考えています。

文学部 教育学科 浅田まり子 教授

 「魔笛」は複雑なストーリーであるため、子ども向けにアレンジするのは難しいのではと感じていましたが、学生たちは見事、子どもたちが笑顔になるミュージカル「まほうのふえ」を創り上げました。仲間と何度も話し合い、力を出し合って課題を乗り越えていく経験は、人として成長する糧になります。今回、舞台づくりを通して、学生たちは協働の楽しさ、尊さを体感し、教員への一歩を大きく踏み出したことでしょう。
 巣立ちゆく一人ひとりに伝えたいのは、「学ぶこころ」を大切に持ち続けてほしいということ。教員になってからも新しい知識を吸収し、視野を広く持って、子どもたちを希望あふれる未来へ導いてほしいと願っています。