追究

2016年04月06日

交流文化学会 第3回 研究大会

交流文化学会 第3回 研究大会

平成27年12月19日(土) 星が丘キャンパス

社会へ羽ばたく4年生が、研究の成果を発表。
「交流文化」を探究する素晴らしさを後輩に伝えました。

 「さまざまな文化的背景を持つ方々との交流を通してお互いに理解し合い、尊重し合う、そんな社会に貢献できる人材づくりをめざすのが交流文化学部の理念です。4月から社会人となる4年生はどのように学び、互いを理解し、社会へ羽ばたくのか、今日の研究大会を通じて感じ取ってください」と、交流文化学部長 谷沢明教授のあいさつから始まった交流文化学会 第3回 研究大会。第1部は学生たちに楽しみながら文化を学んでもらおうとボサノバ歌手 AMELIAさんのライブ、第2部は7会場に分かれ、27人の研究発表会が開催されました。参加者は興味のある発表を自由に聴講してまわることができ、言語、教育、地域貢献、国際理解・協力、観光など、交流文化の幅広いテーマと出会うきっかけとなりました。

第1部 「南米を知る~音楽とブラジル社会」
AMELIAライブ

・AMELIA(ボーカル)
・青木弦六(ギター)
・殿岡ひとみ(ビブラフォーン)
・Tito Monte(アコーディオン&ピアノ)

ブラジル音楽と共に感じる、人々の熱気と文化
~ブラジルの社会、文化、日本との関係性を学ぶ~

 商社に勤めていたキャリアウーマン時代、ブラジルに駐在し、ブラジル音楽の魅力に心奪われたAMELIAさん。帰国後、ブラジル音楽の普及のため歌手になり、現在、名古屋市を中心にライブ活動をおこなっています。当日は素敵な歌声とともに、ブラジル文化について学生たちに語りました。
 赤いロングドレスを身につけたAMELIAさんは「Tudo bem ?(お元気ですか?)」とブラジルの公用語、ポルトガル語であいさつ。その後、ボサノバの定番曲「イパネマの娘」でライブがスタート。ブラジルでいう民謡のようなジャンル「ショーロ」の歌や、現代流行歌のブラジルポップスや世界に波及したボサノバのリズムの音楽史を紹介。ボサノバの影響を受けている松任谷由美の楽曲の「やさしさに包まれたなら」をポルトガル語と日本語まじえて歌い上げました。曲の合間のトークでは、「ブラジル駐在時は、年率200%のインフレ時代。買い物をしにスーパーへ入るときと出るときでは通貨の価値がかわってしまうような社会情勢でした」「ブラジル人は陽気で親切。けれど道を尋ねると、知らなくても『知ってるよ!』と適当な道を教えてくれたりするので要注意」と、ブラジルにいた時の経験談も飛び出し、学生たちは興味津々と言った表情で、AMELIAさんの話に聞き入っていました。

第2部 研究発表会(抜粋)

若者の承認欲求はどこから生まれてくるのか ―いいね!でつながる人間関係―
交流文化学部 4年 河合 美祥さん

 若者はSNSをどのように活用しているのかを調査した河合さん。先行研究からさとり世代と呼ばれる90年代生まれの若者は承認欲求を強く抱いていると示し、その上で、自ら行ったアンケート調査の結果を伝えました。その結果、メッセージが届いてもすぐに確認しない、優先順位の高いものから返信していくなど、若者はSNSでのコミュニケーションにしばられないように、意図的にコントロールしていると考察。複雑化する現代のコミュニケーションの在り方に提言を投げかける研究となりました。

共生社会実現に向けた日本の在り方 ―愛知県在留外国人に関する結婚・離婚の問題を通して―
交流文化学部 榎田ゼミ

 この研究は、榎田ゼミに所属する4年生全員で取り組んだものです。在留外国人からの相談業務を担う愛知県国際交流協会へのヒアリングや在留外国人に直接インタビューをすることで、彼らが直面する問題点を浮き彫りにし、その解決のための提案をおこないました。ヒアリングの中から、全相談の約1割を結婚や離婚についての話題であることから、研究の主題としてピックアップ。出身国の特徴を踏まえた相談事例を集めたガイドブックを作成し、愛知県内の市町村に配布したことを報告しました。

住民主導の観光とまちづくり ―沖縄県竹富島―
交流文化学部 4年 武田 えりさん

 平成元年から平成26年の間で、観光客数が2.6倍になった竹富島を成功例として取り上げ、理想的な観光とまちづくりについて検証しました。「まずは竹富島の雰囲気を感じ取ってほしい」と、武田さんは自主制作のスライドショーを上映。その後、竹富島の観光開発の歴史を追って紹介し、「商業的な考えにとらわれず、自分たちらしい暮らしを守ることを再優先にすることで、島の魅力が磨かれ、結果として多くの人を惹きつける観光地として成長した」と、自身の研究結果を堂々と伝えました。

障がい児教育と障がい者の就労現状の日中比較
交流文化学部 4年 碓井 りえさん

 碓井さんは、大学3年次に教職の実習で、初めて障がい児と関わりました。はじめて障がい児の教育現場の実態に触れた碓井さんは、卒業の研究テーマとしてピックアップ。日本と中国の障がい児教育と障がい者の就労について調べ、検討しました。その結果、日本では障がい者の就労支援が行き届いていないことや、中国では独自の戸籍制度から国内で支援の差が生まれていることなどの問題点が浮き彫りに。制度をうまく活用できる仕組みづくりが大切だと、訴えました。

地域活性化とその理論について
交流文化学部 4年 永井 宏樹さん

 小林ゼミの取り組みのひとつ、「御園通商店街活性化プロジェクト」を研究の主題としてまとめた永井さん。活性化に成功した名古屋の大須商店街と高松市の高松丸亀町壱番街は、1.モータリゼーションという社会の変化に対応したこと、2.人気ブランドの誘致など消費者ニーズに対応したこと、3.地域住民を巻き込んだプロジェクトを実施したことが、活性化につながったと提示。その上で、御園通商店街ではどのような取り組みが有効なのか、交通量調査などのデータをもとに、示していきました。

「中国留学での学びと出会い」
交流文化学部 4年 立花 知香さん

 2年次の後期から3年次の前期まで、約9ヶ月間、交換留学生として北京師範大学で学んだ立花さんは、たくさんの写真をスクリーンに映しながら自身の経験を披露していきました。中国の交通事情や留学中に病気になった時の対処法、授業の様子など、具体的なエピソードが次々と語られる中、立花さんは「留学で自ら行動することの大切さを知った」と発表。帰国後、自らグランドスタッフのインターンを実施して欲しいと企業に掛けあうなど、留学で磨かれた力を存分に発揮し、活動していることを紹介しました。

まちづくりにおける大学生の引き起こすエンパワメント
交流文化学部 4年 藤本 涼子さん

 「まちづくりにおいて、大学生はどんな影響を与えているのだろう」。在学中にさまざまな自主活動に力を注いだ藤本さんは、活動を通じて抱いた疑問を卒業研究の題材に。まちづくりとは何か、大学とは何か、過去の文献からその概念に迫り、その上で、「大学生が地域で活動することで、より地域の魅力を磨くことにつながる」と結論づけました。この効果を「育て合う力」と称した藤本さん。「学生と地域が共に育て合える機会を提供できる社会人になりたいと思います」と宣言し、発表を締めくくりました。

知覚動詞see, look (at)およびwatchの振る舞いに関する研究
―コーパスに基づく研究と中学校英語教科書における使用例を比較して―
交流文化学部 4年 野田 夏央利さん

 see, look, watch。すべて「見る」を表す英語の動詞ですが、それぞれ、使われ方には特徴があります。その違いはどこにあるでしょう。そんな疑問に迫ったのが中郷ゼミの野田さん。中学校の英語教科書を題材に、3つの動詞に後続する単語を調べ、それぞれの動詞の特徴や文法的役割を検討。さらに主張の異なる2つの先行研究と比較し、あらためて「see, look, watchの使い分けの基準」を提示しました。先行研究と異なる結果が出たことから、教科書に掲載すべき英文も提案するなど、発見に満ちた卒業研究発表でした。