追究

2017年04月07日

メディアプロデュース学部 都市環境デザインコース 2017 卒業プロジェクト展

メディアプロデュース学部 都市環境デザインコース 2017 卒業プロジェクト展

4年間の集大成として作品づくりや論文執筆に力を注ぎ、
その成果を学外展で発表しました。

 メディアプロデュース学部 メディアプロデュース学科 都市環境デザインコース※は、建築、インテリア、街づくりなどさまざまな分野を学び、それぞれの表現方法を磨くことができるコースです。最終学年では4年間の学びの集大成として、卒業制作や卒業研究に取り組みます(卒業プロジェクト)。そして、この卒業プロジェクトの最後をしめくくるのが名古屋市民ギャラリー栄でおこなわれる「学外展」です。2月21日(火)~26日(日)におこなわれたこの展覧会には、学内審査で高い評価を受けた設計・制作と論文が展示され、会場に集った学生の家族や建築を学ぶ他大学の学生、さらに地域の方々の目を楽しませていました。さらに今年度からは著名な建築家が選出する「学外展賞」も設置し、2月21日(火)には賞の選出を兼ねた審査・講評会とミニレクチャーが開催されました。学生たちは自分自身の作品について直接プレゼンテーションをおこない、第一線で活躍する建築家の目から見た作品の改善点や評価ポイントをアドバイスとして受け取りました。
 ここでは学生たちの卒業制作・卒業研究、卒業プロジェクト展に対する思いを紹介します。

※2016年度より創造表現学部 創造表現学科 建築・インテリアデザイン専攻に改称。

卒業プロジェクトの流れ

学内展 1月12日(木)~1月13日(金)長久手キャンパス8号棟5階

メディアプロデュース学部 都市環境デザインコース 2017 卒業プロジェクト展

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 4年生の作品論文13編、設計23作品、制作8作品が展示された学内展では個性豊かな作品が集まり、仲間の作品を鑑賞する学生や後輩たちで賑わいました。

学外選抜者発表会 1月13日(金)長久手キャンパス8号棟5階

メディアプロデュース学部 都市環境デザインコース 2017 卒業プロジェクト展

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 教員陣の公平な審査の結果、名古屋市民ギャラリー栄でおこなわれる「学外展」に出展する作品が選出されました。今年は設計・制作16作品、論文10編が選出・発表されました。

最終講評会 1月27日(金)長久手キャンパス8号棟5階

メディアプロデュース学部 都市環境デザインコース 2017 卒業プロジェクト展

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 最優秀作品などを決めるための「最終講評会」では、学生たちが自らの作品についてプレゼンテーションし、教員陣からの鋭い指摘やアドバイスを心に留めていました。

学外展 2月21日(水)~26日(日) 名古屋市民ギャラリー栄

メディアプロデュース学部 都市環境デザインコース 2017 卒業プロジェクト展

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 名古屋の中心地・栄で、6日間開催しました。一般のお客様に対し、学生たちは自らの作品を解説するなど、学外展ならではの交流を味わいました。

メディアプロデュース学部 都市環境デザインコース 2017 卒業プロジェクト展

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 2月21日(水)におこなわれた「学外展賞」では、審査員を務めた建築家の西田司氏に対し学生たちがプレゼンテーションを実施。優秀作品が選出されました。

メディアプロデュース学部 都市環境デザインコース 2017 卒業プロジェクト展

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 さらに記念講演会も実施。西田氏が設計した実作やプロジェクトをレクチャーいただき、その作品に掛ける思いや発想のポイントについて講演していただきました。

論文

「ミースとレイモンド・ローウィにおける"less is more"概念についての研究」
髙橋 和佳子さん(論文・最優秀賞)

メディアプロデュース学部 都市環境デザインコース 2017 卒業プロジェクト展

 小さい頃からミッフィーが大好きで、その作者であるディック・ブルーナ氏について興味を持っていました。2年次の授業でインダストリアルデザイナーのレイモンド・ローウィ氏を知り、ローウィとブルーナがふたりとも、自らの表現に対する考え方として「less is more」という言葉を使っていることを知りました。「less is more」という言葉にどんな意図が込められているのか、建築家で同じくこの言葉を使っていたミース・ファン・デル・ローエ氏の三者を比較することで紐解こうとしました。そこから見えてきたのは、「究極のシンプルは、時代を超えて人々に愛される」ということです。これからも卒業研究で問い続けたように「人々に愛される提案」を考え続けます。

◎論文紹介
 「less is more」という言葉を使用している3人の表現者を、装飾・機能・デザインの3つのポイントから分析し、それぞれの共通点と相違点をまとめることで「less is more」の概念について迫りました。そこから「シンプルな表現の可能性」を考察しました。

「災害時における帰宅支援ステーションの役割に関する研究―コンビニの場合について―」
大橋 史弥さん(論文・優秀賞)

メディアプロデュース学部 都市環境デザインコース 2017 卒業プロジェクト展

 2年次の授業で看板が街の景観に大きな影響を与えていることを学びました。看板と同じように街に溢れていて、景観や街づくりに大きな影響を与えているのがコンビニではないかと思いつき、その役割について考えようと思ったのが研究のきっかけです。愛知県のコンビニは県と「災害時の帰宅支援ステーション」の協定を結んでいるのですが、ヒアリングを重ねる中でそれがきちんと機能できないかもしれないという問題点が浮かび上がりました。行政と民間、立場の違う人たちに直接会い、意見を聞くことで新たな発見に出会えることに気づけたので、これから市役所職員として働く上で、卒業研究での収穫を財産に変えて活躍していきたいと思います。

◎論文紹介
 災害時、コンビニはどのような役割を果たすのか、名古屋駅周辺のコンビニを回り、ヒアリングを通じてその実態を明らかにしました。さらに、名古屋市や愛知県にもヒアリングをおこない、行政と民間の協力体制についても切り込みました。

「コンクリートの乾燥収縮に対する鉄筋の拘束による影響に関する研究」
山田 幸奈さん(論文・優秀賞)

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 コンクリートは乾燥すると収縮しますが、鉄筋を入れるとその収縮が制限されることが知られています。その一方で鉄筋を入れることにより、コンクリートには収縮の際に歪みができてしまいます。論文ではその歪みに対して、定量的な評価をするための計算式を提唱しました。私は1,2年生のころから構造の授業が楽しく感じていたのですが、誰しも構造について詳しいわけではありません。そのため、専門的な内容をいかに一般の人にもわかりやすく伝えられるかを意識しました。執筆の際にも何度も表現方法を推敲しながら、論文を書き上げました。

◎論文紹介
 コンクリートの収縮を鉄筋で拘束する際に発生する「歪み」を評価しようと試みた論文です。実験ではなく、さまざまな計算式を組み合わせてその評価法を提唱。既存の計算式を一つひとつ紐解くことで、現在の研究では明らかにされていない定量的評価に挑みました。

設計・制作

「おくりがま」
瀧下 まりさん(設計制作・最優秀賞、学外展賞)

メディアプロデュース学部 都市環境デザインコース 2017 卒業プロジェクト展

メディアプロデュース学部 都市環境デザインコース 2017 卒業プロジェクト展

 インターンシップでお世話になった設計事務所では「人口減少をプラスにとらえられる新たな提案をしよう」とさまざまな建築物を設計していました。この考え方に触れ、思い出されたのが祖父母の住む多治見市市之倉の街のことでした。昔は作陶の街として栄えましたが現在は空き家問題が表面化し、課題となっています。この問題に対し、リノベーションなどをして「空き家を生かす」のではなく、新たな選択肢として「空き家を気持ちよくおくりだす」ことを提案しました。設計したのは「登り窯」をモチーフにした、「家を解体し、その廃材を燃やすことで最後のお別れをする施設」です。卒業設計を通じて、新たな価値観の提案に挑むことができたと実感しています。

◎作品紹介
 家をおくりだすための"火葬=焼却"をおこなう施設を設計。この施設では、家の所有者が廃材を仕分け、焼却する過程を経験できます。家をおくりだすことで、人々の記憶にとどめることができると考え、空き家問題を解決するための新たな選択肢として提案しました。

「Sea Terminal」
鈴木 利樹さん(設計制作・優秀賞)

メディアプロデュース学部 都市環境デザインコース 2017 卒業プロジェクト展

メディアプロデュース学部 都市環境デザインコース 2017 卒業プロジェクト展

 大学生になり日本各地を巡るうちに、私は「力の流れが見える建築」に惹かれることに気づきました。卒業制作ではぜひ、自分が好きなスタイルの建築づくりにチャレンジしたいと挑んだのが今回の作品です。偶然マスキングテープを触っていた時にできた形が素敵に思えたので、なんとかその形を建造物で再現できないかと、ゼミの先生と何度も試作を繰り返して、この作品を創り上げました。生まれ育った街の蒲郡に、今は希薄になった海と人々の暮らしをつなぐ建造物を作りたいという思いをひとつの作品として提案できたことは大きな自信となりました。この達成感を忘れず、社会人として設計をおこなうときも励みにしていきたいと思います。

◎作品紹介
 愛知県蒲郡市が設計の舞台です。高度経済成長期に多くつくられ、現在は余っている状態の埋立地を活用し、人々と海をつなぐ建築物として「図書館とコンサートホール」を提案しました。リボンのようなデザインが特徴の作品です。

「わじゅうがっこう」
坂口 杏菜さん(設計制作・優秀賞、学外展賞)

メディアプロデュース学部 都市環境デザインコース 2017 卒業プロジェクト展

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 私の実家のある大垣市は河川が多く、昔から水害が多い場所です。その対策として、高い土手で街の一部を囲い、氾濫した河川の水が入らないようにする「輪中」をつくって、水害を最小限に抑えてきました。現在は河川の補修などがあり、水害が少なくなる一方、局地的大雨が多くなり、輪中の存在が見直されてきています。そんな背景から、輪中を活用した建築物を提案したいと、避難施設としても活用される小学校・中学校を設計しました。課題に向き合い、一つひとつ乗り越えていった経験は、今、大きな自信に変わっています。4年間の学生生活で感じた仲間と協力することの大切さや最後まで諦めない姿勢は、きっと自分の力になっていると確信しています。

◎作品紹介
 小学校と中学校を輪中で囲い、安全性の高い施設として提案しました。輪中ならではの傾斜を活かした工夫が随所に見られます。自らの幼少期に輪中で遊んだ思い出や気持ちを振り返り、地域から愛される場所になって欲しいという願いが込められた作品です。

2017卒業プロジェクト展〈学外展〉実行委員代表
石川 雄規さん、本野 晴也さん(都市環境デザイン専修3年生)

メディアプロデュース学部 都市環境デザインコース 2017 卒業プロジェクト展

 来年、卒業制作や卒業論文に取り組む後輩として、先輩方の最後の展覧会を設営・運営できたことはとても誇りに思います。同じ作業スペースで制作にあたっていた先輩方の作品に真摯に向き合う姿勢や、時には苦労されている姿も目にしました。しかし、作品を創り上げたときの晴れやかな表情を見て「来年は自分たちも先輩たちのように力いっぱい、卒業制作や卒業論文に取り組みたい」と身が引き締まる思いがしました。また、この学外展は一般の方々に愛知淑徳大学の都市環境デザインコースを知ってもらういい機会だと思います。これからも自分たちで創り上げる伝統の展覧会として、後輩たちに引き継いでいきます。

※卒業プロジェクト実行委員では都市環境デザイン専修3年生計12名が任命され、学内展から学外展までの設営などを担いました。