追究

2011年12月22日

あいちITSワールド2011

あいちITSワールド2011

愛知淑徳大学の辻ゼミがブースを出展し、代表の学生がステージでプレゼンテーション。
「福祉のITS」に関する先進的な研究について多くの人々に伝えました。

人や自動車などが移動するときの安全性・快適性を高め、環境へのやさしさを実現するためのさまざまな研究開発が、世界各国で進められています。それが、カーナビゲーション、ETC、安全運転支援や歩行者支援のシステムなどに代表される「ITS( Intelligent Transport Systems:高度道路交通システム)」です。愛知県は、ITS推進協議会を国内で最初に立ち上げてITSを推進する活動に力を注ぎ、ITSに関するイベント「あいちITSワールド」をモーターショーとともに大々的に開催しています。平成23年は12月22日(木)から25日(日)に、名古屋市国際展示場 ポートメッセなごやにて開催されました。この一大イベントに愛知淑徳大学の辻ゼミ(2010年度以降に入学した人間情報学部の学生、2009年度以前に入学した現代社会学部の学生が所属)がブースを出展し、辻紘良先生と有志の学生8人が参加しました。

 辻先生は約40年前から株式会社豊田中央研究所で自動車の道案内システムの研究をおこない、国の大型プロジェクトにも携わってきました。その経験をベースに、愛知淑徳大学の教授となってからは「交通流のITS」「地域のITS」「福祉のITS」について研究しています。その中でも今回のイベントで紹介したのは、「福祉のITS」。約5年続けている「車いすナビゲーションシステム」の研究に関するパネル展示や車いすを使った実験のデモンストレーションをおこないました。
この研究の目的は、車いすを利用する人が安全・快適に移動できるよう支援する道案内システムの実用化です。辻先生は車いすでの移動時の「疲れ」に着目し、現在までに実際の道路で実験をおこない、腕の筋肉にかかる負担度を推定できるモデル式を生み出しました。また、「疲れ」を表すのは何色かを決定する実験なども実施。最も疲れない経路へ誘導するシステムの核となる基礎研究を進めてきました。その中で、疲れを色で表わすと「疲れない=青」「やや疲れる=黄」「疲れる=赤」という信号機と似た色感覚を示すことなど、興味深い結果の数々も得られたそうです。

 こうした研究内容をブースだけでなくステージプログラム「わたしたちのITSワールド ~大学研究室のITSプレゼンテーション~」においても発表しました。代表としてステージに立ったのは、現代社会学部現代社会学科3年の山内香奈さん。「車いすナビゲーションシステムの研究について、より多くの人々に興味を持っていただきたい!」という熱意を持ち、専門的な内容もわかりやすく噛み砕いてプレゼンテーションしました。発表後、コメンテーターや司会の方々から「愛知淑徳大学は地域での活動が盛んです。ぜひこの研究でもNPO団体などと協働して福祉のITSを地域へ広げていただけたらと期待しています」「実用化に結びつく研究を引き続き頑張っていただきたい」と応援の言葉が寄せられ、会場からも熱い拍手が送られました。
「あいちITSワールド」が開催された4日間、参加した学生たちはさまざまな企業やNPO、他大学などの人々と交流し、最先端の研究に挑む意義などを感じていました。今後、大学の授業やゼミでの研究に、より意欲的に取り組む原動力となる出会いや刺激に満ちたイベントとなりました。

プレゼンテーションをした学生のコメント

現代社会学部 現代社会学科

多くの人と思いを共有しながら研究に励みます。

大学1年生のとき、企業の方による学内講演会でITSについて知り、さらに2年生のときに辻先生が車いすのITSに関する研究をなさっていることを知りました。自転車通学している私は日頃から「走りやすいルートを検索できたらいいのに...」と感じていたため、ITSそのものや辻先生の研究に強い関心を抱き、辻ゼミへの所属を決意しました。以来、ITSに関する大学院生の発表を聴きに行くなどして勉強し、ゼミでは実験データの解析などに打ち込みました。ITSへの思いが強い分、今回、プレゼンテーションの機会をいただき、大きな喜びを感じています。また、発表を通じて、「伝え合うこと」の大切さも改めて実感しました。現在、インターネットから利用できる「障がい者・高齢者用ガイドマップ」はまだ1エリアのみ。これから他地域へ広げるには、より多くの人に興味を持っていただくことが大きな力になるでしょう。誰もが安心して移動できるシステムづくりをめざし、多くの人と思いを共有しながら研究を進めたいと考えています。

人間情報学部 教授 辻紘良先生からのメッセージ

人間情報学部 教授 辻紘良先生

ITSの研究を通して、学生に多くの知識や能力を身につけてもらいたい。

長年ITSに関する研究を続けていることから、愛知県ITS推進協議会の方に声をかけていただき、今回、初めて学生たちと共に「あいちITSワールド」に参加しました。
車いすのITSはまだまだこれからの分野です。より人の立場に立ったシステムを生み出すことができるよう、「疲れ」に対して心理面だけでなく身体面からもアプローチし、約5年間、実験を重ねて基礎技術を開発しました。今後、もう少し基礎研究を続け、土台をしっかりと築いてから本格的な実用化をめざします。その過程では、学生や院生など次代を担う若い人にも携わってもらい、社会で役立つさまざまな知識や能力を身につけてほしいと期待しています。
また、来年度から人間情報学部でゼミが始まります。現在、私が担当している「ユニバーサルデザイン論」の授業では、学生の多くが交通のユニバーサルデザインにも興味を持っています。ITSはまさに交通のユニバーサルデザイン。「人の自立的な支援のために」という研究目的を見据えて意欲的に研究に取り組むと、きっと得るものが数多くあるでしょう。

「あいちITSワールド2011 inポートメッセなごや(辻研究室)」での学生発表(動画)