追究

2014年02月23日

メディアプロデュース学部 都市環境デザインコース 2014卒業プロジェクト展

メディアプロデュース学部 都市環境デザインコース 2014卒業プロジェクト展

4年間の集大成として学生主体の卒業プロジェクト展を学外で開催しました。

 人や社会を取り巻く多様な空間設計を追究する、都市環境デザインコース。建築、インテリア、まちづくりなど幅広い分野で活躍するための力を培うことができます。その多岐にわたる講義や演習の集大成が、卒業プロジェクト展。4年生が自分の興味を突き詰め、約1年間かけて建築・インテリアの設計・制作や論文作成に取り組みました。
名古屋市民ギャラリー栄にて開催された「2014卒業プロジェクト展<学外展>」には、学内審査で特に高い評価を受けた設計・制作20作品と論文9編が出展。会場には、建築の仕事に携わる方や建築を学ぶ他大学の学生、地域の方々など多くの人が訪れ、学生たちが制作意図などを熱心に説明していました。この<学外展>の企画や会場設営、展覧会の運営も、学生たちが主体。4年間、互いに切磋琢磨した仲間と力を合わせ、一大イベントを創り上げました。
ここでは、卒業研究や卒業プロジェクト展に対する学生たちの思いを紹介します。

学内展

学外展

建築・制作

Works01 Slum clearance~住んで働く集合住宅~

◎作品紹介
カンボジアにあるスラム化した実在する集合住宅地に、あらたな集合住宅地を提案しました。ポイントは生活空間と働く空間、学ぶ空間をひとつの建物に共存させたこと。カンボジアに住む日本人有識者にインタビューをし、スラム街を見学して、研究を進めました。


発展途上国の支援やボランティアに興味があり、卒業制作ではぜひ、カンボジアをテーマにしたいと思い、まずは、現地で日本語を教え、教材づくりをしている日本人男性と、建築家として現地で活躍している日本人女性に「カンボジアの貧困に対して建築ができること」をテーマにヒアリングをおこないました。貧困を脱するには教育が大切だと考えていましたが、それ以前に生活基準を上げなければ、教育にたどり着かないと知りました。建築になにができるのか、スラム街を見学しながら考えた結果、生活空間と働く場所、学ぶ場所を距離的に近づけることを思い立ち、3つの要素を混在させた集合住宅の設計につながりました。卒業研究は貧困で苦しむ人々やスラム街を自分の目で見ることができたかけがえのない経験になりました。

Works02 みんなでつくるおまかないのまちー荒浜復興ー

◎作品紹介
現在、東日本大震災の影響で危険区域に設定されている仙台・荒浜。自由に建物を建築することができず、復興の遅れが懸念されています。法律に違反しないように復興の手助けになるため建造物を地域住民の復興活動である「あらはまフォーラム」で提案しました。


仙台、荒浜地区の復興活動「あらはまフォーラム」に参加しました。この地区は、東日本大震災の危険区域に設定されており、自由に建物を建てることができません。条件が制限された中、復興の中心的な存在になる建築物をつくろうと、地元の方々との交流を重ね、「情報の拠点」「にぎわいの拠点」「相対安全の拠点」「ふるさとの拠点」の4つからなる拠点づくりをプランニングしました。ただ建造物をつくるだけではなく、そこから発展し、復興につながることが最終目標。建物が生み出す価値や行動をイメージし、復興までのストーリーづくりに重点を置きました。あらはまフォーラムで発表した時は、地元の方々から「おもしろい!」という言葉をいただき、研究に打ち込んでよかったなと、達成感を得ることができました。

Works03 うつりかわる水を感じてー油ヶ淵水辺学習施設ー

◎作品紹介
碧南市と安城市に広がる、愛知県唯一の天然湖沼・油ヶ淵。下水道の整備が遅れているため生活排水が流入し、水質汚染が深刻化しています。美しい油ヶ淵を蘇らせることができるよう、「子どもたちへの環境学習」「水質浄化」「市民の意識向上」を目的とした施設を提案しました。


幼い頃から馴染みのある油ヶ淵をきれいにしたい。その思いを起点に、都市環境の視点から解決策を考案し、水辺の学習施設を設計しました。着目したのは、周辺エリアにおける、若い世代の人口増加。次代を担う子どもたちを中心に、地域の人々の意識を高め、浄化活動を進める拠点をつくろうと考えました。建てる場所は、油ヶ淵の上です。湖とつながる場所にあるワークショップ・スペース、水位変化を体感できるスペース、水質浄化をおこなう人工浮島......。油ヶ淵の「今」を感じ、「未来」を考える施設となるよう工夫を散りばめました。また、設計する際に大切にしたのは、行きたいと思える魅力的な建物にすること。先生に助言をいただきながら自分の理想を追求し、カタチにした経験は、4年間の成果ともいえる得難い学びになりました。

論文

Works04 伊勢の港町~大湊・神社港・河崎~

◎作品紹介
三重県の瀬田川沿いにある3つの町、大湊・神社港・河崎。すべて同じ「港町」ですが、それぞれ異なる特徴を持っています。古い地図と現在の地図を見比べ、実地調査をおこない、地域の人々と触れ合いながら町の歴史や進化・発展を探りました。


伝統工芸や古い町並みなど、昔から受け継がれてきた歴史を感じさせる文化や歴史が好きでした。卒業研究でもぜひこの興味を追求したいとテーマとして取り上げたのが、同じ「港町」でありながら、異なる特徴や発展をしてきた瀬田川沿いの3つの町。泊まりこみで現地調査をおこない、古い建造物を探しながら、町の散策を繰り返しました。研究の材料は古い地図です。現在の地図と照らし合わせながらどのように町が発展しきたのかを紐解きました。そして古い街を受け継ぐときの問題点も考察していました。撮影した写真は1000枚以上、論文のページ数は70ページ以上にものぼります。自分が納得するまで足を使って情報を集めた経験から、忍耐力が身につきました。卒業後も研究を通して得た力を活かしていきたいと思います。

Works05 HPシェルの効果的利用方法に関する研究

◎作品紹介
60年代に多く使用されていた「HPシェル」の新たな施工方法を提案。シェルのキレイさや運搬の容易さが特長の「合成コンクリートシェル」と、現場での工程が少なくコストダウンが見込める「フルプレキャストシェル」の2つの施工方法を提案しました。


現代にあった「HPシェル」の新たな施工方法を提案しようと研究を進めました。着目したのが、コンクリートをある程度工場でつくって、その後現場で組み立てる「プレキャストコンクリート工法」。現場での工程を減らすことでコストダウンにつなげることが可能になると考え、実験・模型制作を繰り返しました。仮設を立てて実験を繰り返しましたが、実験を終えるたびに課題がでてきてしまいました。最大の課題が大量生産。当初は大部分を工場でできるように考えていましたが、現場での工程を加える事で課題をクリアすることができました。難題が降りかかっても、視点をずらしたり、新しいアイディアを加えたり、工夫することでさらに研究が深まることを実感しました。4月から木造のプレカットの工場の営業として働きます。研究の成果を活かしていきたいと思います。

2014卒業プロジェクト展<学外展> 設営・運営スタッフ


都市環境デザインコースの仲間とともに、課題制作、建築展の会場づくり、ゼミ活動などに思いきり打ち込んだ、かけがえのない日々。その集大成となるのが、卒業プロジェクト展です。一人ひとりが自分の考えを作品・論文としてカタチにし、さらに学外の方々にも見ていただいて、大きな達成感や喜びを感じることができました。また、この展示会の企画や設営、運営などを学生主体でおこなったことも、貴重な経験となりました。先生方のサポートのもと、作品の搬入、展示する位置やライティングの調整、PR活動にメンバーが一丸となって取り組み、思考力や行動力が鍛えられたと思います。都市環境デザインコースで学んだ「仲間と協力しあうことの尊さ」を胸に社会へ踏み出し、それぞれの分野で活躍していきたいと思います。