追究

2015年02月25日

愛知淑徳大学 交流文化学会 第2回 研究大会

愛知淑徳大学 交流文化学会 第2回 研究大会

平成26年12月20日(土) 星が丘キャンパス

「交流文化」に関する幅広い研究が、
先輩から後輩へと受け継がれていきます。

 言語、教育、地域貢献、国際理解・協力、観光など、交流文化の幅広いテーマと出会う「交流文化学会 研究大会」。交流文化学部から初めて卒業生が社会へ羽ばたいた平成25年度から開催しています。2回目となる今年度は映画字幕翻訳者・太田直子氏による特別講演の後、学部の4年生、大学院生、卒業生が研究発表をおこないました。7会場にわかれ、総勢31人の発表者が大型スクリーンなどを使って研究成果をわかりやすく解説。参加者は興味のある発表を自由に聴講してまわることができました。この研究大会は、2年次開講の専門科目「キャリアデザイン(交流文化)」の集中授業と連動しています。2年生はもちろん3年生も積極的に参加し、自身の学修や研究を深めるヒントを得ました。国際社会や各専門分野の課題と真摯に向き合う研究姿勢も、先輩から後輩へと受け継がれたことでしょう。

第1部 特別講演
映画字幕翻訳者・太田 直子氏
「映画字幕屋の渡世奮闘記」

登場人物の"こころ"を、1秒4文字でどう伝えるか。


 『ボディガード』『天使にラヴソングを...』『コンタクト』『初恋のきた道』など、1000本以上の海外映画の字幕翻訳を手掛け、エッセイストとしても活躍している太田直子氏。映画字幕翻訳者として30年のキャリアを重ね、第一線を走り続けています。今回の特別講演では、学生からの事前質問にお答えいただくという形式で映画字幕翻訳の仕事の裏側、学生時代のエピソードなどを、語っていただきました。
 「字幕翻訳には『1秒4文字』という字数制限があり、意訳、要訳は当たり前。『He loves you』なら、『彼はきみを愛している』では長すぎるから『彼は本気』とします。登場人物の"こころ"をいかに端的な言葉で伝えるか。難しい分、おもしろさ、やりがいも大きいですね」と太田氏。映画字幕翻訳を通し、さまざまな国で生きる人々の文化、価値観、感性を共有し、新たな世界を垣間見ることが純粋に楽しいと語りました。
 学生時代はロシア文学を専攻していた太田氏は、映画関係のアルバイトがきっかけで進路を決めたそうです。「留学経験はなく、英語が得意だったわけでもありません。自分が『おもしろそう』と感じた道に進んで、読解力や日本語の表現力など必要な力を磨きました」。好きなこと、興味があることを突きつめ、仕事にする。自分らしい生き方を自然体で貫く太田氏のお話は、将来を真剣に考え始めた2年生・3年生にとって、大きな刺激になったことでしょう。

第2部 研究発表
発表の一部をPICK UP

「慣用的表現においてcome,goに後続する形容詞および副詞の特徴について」

 動詞come・goは「来る」「行く」という物理的な移動だけでなく、「My dream came true(夢がかなう)」のように人やモノの状態変化や抽象的な移動を慣用的に表します。この表現に着目し、先行研究の論文を読み解き、それぞれの動詞に後続する形容詞と副詞を分析。comeは好ましいと捉えられる状態、goは好ましくないと捉えられる状態を表す傾向があるものの、その反例が多いことも明らかにし、言葉の内部構造に関して考察を深めました。

「外国人単純労働者排除が生む問題と矛盾~アジア諸国の取組みから学ぶ~」

 日本経済を支える一端を担う、外国人労働者。彼らや家族の暮らしを守るには、低賃金、社会保険未加入、子どもの不就学などの課題が山積みとなっています。その解決策を探るべく、外国人労働者を取り巻く雇用形態・労働条件などの現状、日本政府の施策、台湾や韓国の外国人労働者の受け入れ・支援策などを調査。「グローバル社会」「多文化共生社会」を見据え、誰もが安心して生きられる日本の労働環境のあり方を多面的に考えました。

「ICTを活用した英語授業―生徒の英語コミュニケーション能力を高めるために―」

 中高生の英語コミュニケーション能力の向上をめざし、電子黒板やタブレット端末などのICT(Information and Communication Technology:情報通信技術)を学校現場にどう導入し、広めていけばいいのか、現役の英語教員へのインタビューやアンケート調査をおこないながら考察。「ITC整備の遅れ」「新しいことを実践しにくい日本の学校現場」「教員の多忙さ」など、現状の課題を明らかにし、次代の英語授業のあり方を模索しました。

「教員としてESDを学校教育に活かすためにできること」

ESD(Education for Sustainable Development)とは、持続可能な社会づくりをめざして世界中の人が共に考え、行動や変化を起こすための学習・活動です。子どもたちの「生きる力」を育むために、このESDの概念を学校教育にどう取り入れることができるのかを、小学校での調査などを通して追究しました。社会や世界の課題に目を向けて、子ども同士が学び合い、自ら考える参加型学習の重要性を指摘し、その実践を促す研究となりました。

「韓国社会における日本大衆文化接触による対日イメージの変化」

 歴史認識の違いなどにより、日本と韓国は「近くて遠い国」と称されてきました。日本の支配から解放された1945年から、韓国は自国文化の保護・発展に力を注ぎ、2004年まで日本大衆文化の流入を制限。現在では日韓の文化交流は活発となり、韓国人の反日感情にも変化が見られ始めています。この研究では韓国の文化政策の歴史、韓国人の対日イメージなどを調査。人と人をつなぐ「文化の力」で友好の道を拓くことの重要性を伝えました。

「オリンピックによる経済効果」

 「いかに儲けるか」という現代のオリンピックの商業主義に着目し、時代背景も探りながら歴代大会の運営を分析。「選手が最高のパフォーマンスを発揮できる環境が整っているのか」「オリンピックの理念や格式は維持されているのか」という課題を考察しました。開催前後での観光客の増加や経済・産業への影響などにも目を向けながら、2020年の東京オリンピックについて国民一人ひとりが考え、意見を持つことが必要だと結論づけました。

「旅行会社におけるSNSマーケティングの未来」

 旅行会社へのヒアリングをおこないながら、FacebookなどのSNSを活用したマーケティングについて調査しました。「国内外の観光地のレポートなど、旅行への意欲を高める情報発信がリアルタイムでできる」「双方向コミュニケーションで顧客への個別アプローチができる」「顧客情報をデータベースで一括管理し、新たなニーズを分析できる」などの利点を挙げ、SNSマーケティングによって「旅の新たな付加価値」が生み出される可能性を示唆しました。