追究

2015年09月16日

愛知淑徳学園創立110周年・愛知淑徳大学開設40周年記念行事 大学院文化創造研究科主催 連続講演会「文化創造と環境・エコ」

愛知淑徳学園創立110周年・愛知淑徳大学開設40周年記念行事 大学院文化創造研究科主催 連続講演会「文化創造と環境・エコ」

平成27年7月25日(土) 長久手キャンパス 10号棟1031教室

各種専門領域と"環境・エコ"が融合した講演会。
新しいエコの形が浮かび上がりました。

 7月25日(土)、学園創立110周年・大学開設40周年記念事業の一環として「大学院文化創造研究科 連続講演会」がおこなわれました。「文化創造と環境・エコ」をテーマに、5人の教授が自身の専門領域と環境を絡ませた講演を展開。一見すると環境とは関連が薄いように思われる領域も、教授のユニークな視点により環境やエコを考えるきっかけに。受講した在学生や高校生、保護者の方々も、新しいエコの捉え方を提唱する講演の数々に知的好奇心を刺激された様子でした。ここでは、各公演の内容をダイジェストで紹介します。

時代を超えるメッセージ ―古建築から学ぶ人間の知恵―

都市環境デザイン領域 河辺 泰宏教授

 建築学を専門とする河辺 泰宏教授。講演会では、国内外の建築物やそれにまつわる歴史を取り上げ、「昔の人や建築に何を学ぶのか、今の人は一体何ができるのか」を受講者に問いかけました。"現代日本建築の代表格スカイツリーの耐震構造は、五重塔にヒントを得ている"。"コーランに厳格に示されたアラブの街づくりの指針は、猛暑でも快適に過ごせる工夫に満ちている"。そのような事例とともに、最先端技術と伝統的な街づくりを融合したアラブのエコシティ「マスダール・シティ」を紹介。受講者は、「遥か昔に確立された建築ノウハウが現代に息づいている」ことを知り、過去からの知識の蓄積を現代に活かす重要性を学び取りました。

和歌と日本の恋 ―永久再生可能文化資源としての古典文学―

国文学領域 久保 朝孝教授

 久保 朝孝教授は講演会のなかで、古今和歌集のなかから恋を主題とした巻第十一から巻第十五の5巻分の巻頭歌と巻末歌を紹介。この5巻は、恋の始まりから恋人同士が別れた後まで、恋の歌が時系列に並びます。当時の文化や思想の解説を交えながら、計10個の和歌をひもとくうちに、現代人との感覚の違い、共通する心情が浮き彫りになりました。また、古今和歌集はそれ以降の作品に度々引用され、特に源氏物語は古今和歌集から数多くの歌を引用しています。久保教授は講演のラストを次のように結びました。「引用された歌は"引歌"と言います。古典というものは、それ以前の作品を引用しながら新しい作品を生み出す、エコロジーなものでもあります」。

日本のライフ・オブ・アート ―谷崎潤一郎『陰翳礼賛』を中心に―

クリエイティブ・ライティング領域 清水 良典教授

 「ライフ・オブ・アート」とは、2015年に没後50年を迎えた谷崎潤一郎が表明した「美的な生き方」を指す言葉。講演会では、谷崎の随筆『陰翳礼賛』を軸に、彼の生涯や生き方へのこだわり、鋭い美的感覚に清水 良典教授が迫りました。『陰翳礼賛』は灯りが乏しかった日本古来の生活のなかにある美的感覚を論じたもの。東日本大震災以降、文明の力のみに頼らない日本人らしい生活様式を伝えるものとして注目されています。このなかで論じられているのが「暗がりに隠れた美」であり、「この考え方は春琴抄や文章読本にも通じるものがある」と清水教授は力説。現代の文化のあり方を省みるきっかけにもなるこれらの作品に、受講者も大いに興味を持ったようでした。

サステナブルな情報サービスをめざして ―図書館情報学領域の人材育成―

図書館情報学領域 伊藤 真理教授

 日本の大学・大学院における図書館司書教育と愛知淑徳大学大学院の図書館情報学の学びについて紹介した後、ご自身の専門である音楽情報サービスを題材にライブラリアンの存在意義について語った伊藤真理教授。近年発見されたモーツアルトの新しい楽譜を例に挙げ、新しい譜面が見つかる前後の演奏を聴き比べたり、2つの出版社の譜面を見比べたり、それぞれの違いを検討しながら情報を正確に利用者へ提供することの大切を伝えました。「利用者はなぜ情報を必要としているのか、どのように情報を提供すると利用者に喜んでもらえるか考え、行動することが大切です。」と語った伊藤先生。情報サービスの根幹に迫った講義となりました。

環境をメディア化する ―あなたが捨てたものを崇める現代アート―

メディアコミュニケーション領域 小田 茂一教授

 19世紀の現代アートの発展と変遷を「廃棄物」をテーマに解説した小田 茂一教授。講演会の冒頭にフランスの思想家で美術批判家のロラン・バルト氏の「捨てたものを崇めるのが現代アートである」という言葉を紹介し、各年代の美術作品をプロジェクターに映し出しながら、現代アートをひもときました。「19世紀、芸術家たちは大量消費社会へと移り変わる中で、廃棄物は誰かの記憶であると捉え、活用し、アートとして発信してきました。今、情報社会が発達し、非物質的な社会になっている中で、アートがどのように発展していくのか、まだ見えてきていませんが、注目すべきことだと考えています」と、これからの100年に目を向けて、講演会を締めくくりました。