特別授業「ギリシア文学って何ですか?」レポート

2022年6月9日(木)特別授業〈「ギリシア文学」って何ですか?〉(※事前告知の〈「ギリシア悲劇」って何ですか?〉より改題)が開催されました。

 創作表現専攻の卒業生であり、現在は名古屋大学大学院の人文学研究科で西洋古典文学(古典古代末期の叙事詩)の研究をされている矢越藍子さんが、創作の道を志す学生に向けて「西洋古典の楽しさを伝え、創作に使えるレシピを増やすきっかけを提供したい!」と、企画してくださった特別講義です。清水良典ゼミの時間を特別開放したこの授業に、他学年も含めて30人以上の学生が集まりました。
「西洋古典」と聞くととっつきにくいように思えますが、『金の斧銀の斧』『ウサギとカメ』に代表されるイソップ童話をはじめ、児童書やゲーム、漫画、舞台作品など、ギリシア神話やその他西洋古典文学を題材とした作品はわたしたちの身近にあり、子どもから大人まで親しんでいます。それらの原典であるギリシア文学作品は何なのか、どういった要素が引用されているのか、矢越さんが「素材」と「レシピ」を解説してくれました。
 後半は原典であるギリシア文学がどのような成り立ちを持ち、発展していったのかの歴史や、矢越さんの研究テーマである「叙事詩」のひとつ『イリアス』を例に、ギリシア文字のアルファベットを読んだり、特徴的な韻律(リズム)「英雄六脚律」を実際に聞いてみたりと、ギリシア文学そのものに触れていきました。
 ゲームのキャラクターの題材であることは知っていても、原典のギリシア語にまで触れる機会はなかなか無いので、みなさん興味深く聞き入っていました。
 質疑応答の時間には、現在の演劇とつながりや「あいちトリエンナーレ」でも上演された作品『バッコスの信女』の解説、矢越先生の「推し」であるデュオニュソス神のお話なども聞くことができました。

参加者の感想

ギリシア神話のモチーフや人間関係の構造は、私達が目にするものの中にあふれているのだと感じ、調べてみたいと思いました。韻律が重要な要素であるというのは全く知らなかったので、面白かったです。そこには口承文芸であったという背景がとても大きく絡んでいるのだと理解できました。
古典をモチーフにしたり、再話したりするのはなんとなくハードルが高いと思っていたのですが、とても面白そうだと感じたので、一度挑戦してみたいと思います。

(創作表現専攻3年生 笠井さん)

 原典となるギリシア文学・神話そのものをより深く知ることで、キャラクターの名前や姿かたちだけでなく、背景にある登場人物の関係性や物語の構造も、創作の下敷きとして役立てられることを学びました。また、日本での西洋古典の研究者は
 何を「素材」にして、どんな「レシピ」で、自分の作品を生み出すか。アイデアのヒントは、古典の中にもたくさんあります。

(文責:助手・山田)