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2016年09月13日

福祉貢献学部 公開講座 子どもの日常から出発するプロジェクト型保育 ―スウェーデンと日本の取り組み―

子どもの日常から出発するプロジェクト型保育

平成28年7月5日(火) 長久手キャンパス324教室

スウェーデンと日本、それぞれの実践的な保育活動を知り、
子どもの興味や好奇心に目を向け、保育に活かす大切さを学びました。

 7月5日(火)、長久手キャンパスで福祉貢献学部主催の公開講座「子どもの日常から出発するプロジェクト型保育―スウェーデンと日本の取り組み―」が開催されました。講師としてスウェーデンからお招きしたのは、オルゴナ就学前学校に勤務するカミラ ストルトさんとエンマ リンドグレンさん。さらに名古屋市のあかつき保育園の保育者もお招きし、両国の実践保育の実例を紹介し合う報告会がおこなわれました。

子どもの日常から出発するプロジェクト型保育

子どもの日常から出発するプロジェクト型保育

 前半はスウェーデンのプロジェクト活動の報告。5年間という期間をかけておこなうプロジェクトでは、子どもの興味にあわせて内容が大きく変わります。入園したての子どもたちは体の大きさが異なる3匹のやぎが登場する童謡が大好き。特に大きさや重さなど、「数的概念」に興味をもっていることがわかり、保育者がアドバイスをすることで、積み木をつかって高さを測るプロジェクトに発展。さらに積み木で実在するテレビ塔の模型を作るプロジェクトへ。この模型作りでムービーを活用したことから、プロのアニメ作家の指導のもと、カエルを主人公にしたアニメーションづくりに発展し、卒園となりました。このプロジェクトの変遷と、子どもたちの成長を語ったカミラさんとエンマさんは、「私たちは子どもたちに"友だちや大人たちと一緒に自分自身の疑問を考えられる場"を提供したいと考えています。そのひとつが、プロジェクト活動。誰かと協力し合うことのすばらしさを知り、友だちと助け合う経験から、子どもたちの自尊心を育むことにつながればと願っています」と語り、保育者をめざす学生たちに「子どもたちの疑問や好奇心の芽を拾い上げ、育むことの大切さ」を伝えました。

子どもの日常から出発するプロジェクト型保育

子どもの日常から出発するプロジェクト型保育

 後半は、異年齢保育や障害児保育などを行っているあかつき保育園2クラスの報告。最初に報告したのはきりんチームの保育者です。子どもたちの興味は、病院ごっこからはじまり、段ボールやストローを使った注射器・聴診器づくりなどに発展。2月の作品展では、「おほしさまこどもクリニック」をつくりあげ、それぞれが病院のスタッフや患者の役になりきって本格的な病院ごっこに取り組みました。もう一班のぞうチームの子どもたちの興味は、船づくりから海づくりに変わり、海の色の変化を表現する取り組みから絵の具の色を混ぜ合わせることに関心を持ち、新しい色を発見しては「明太マヨ色」「お母さんゾウ色」「夕方の海色」など、思い思いの名前をつけて楽しみました。2月の作品展では、今までの活動の様子をまとめた写真を展示するとともに、舟とごちそうやケーキをつくって本物さながらの船上パーティーを開催しました。この2つの実践保育を支えた保育者たちは「子どもたちはプロジェクト活動を通じて、協力し合うことを覚えていったように思います。保育者として子どもたちが自らの力で成長していく姿を見ることができたことはとても大きな喜びでした」と語りました。2つの報告の後、愛知県立大学名誉教授の宍戸先生がスウェーデンと日本のプロジェクト活動について、総括。学習と遊びがうまく融合したプロジェクト活動の可能性を示唆し、講演会を締めくくりました。
 今回の特別講義を通じて、保育者をめざす学生たちは、文化や保育観の異なる2つの国の取り組みの中に子どもの日常的な興味や関心を発展させていく保育者の役割の共通性を見出すことができたことでしょう。