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ガバナンス・コード

第1章 私立大学の自主性・自律性(特色のある運営)の尊重

 私立大学の存在意義は、建学の精神・理念にあり、それに基づく独特の学風・校風が自主性・自律性として尊重され、個性豊かな教育・研究を行う機関として発展してきました。
 私立大学は、社会の発展と安定に不可欠な極めて厚い中間層の形成に大きく寄与してきました。また、私立大学は地域社会において高等教育へのアクセスの機会均等と知的基盤としての役割も果たしてきました。
 今後とも、学校法人愛知淑徳学園 愛知淑徳大学は、建学の精神に基づく、私立大学としての使命を果たしていくために、また、教職員はその使命を具現する存在であるために、日本私立大学協会の制定した「私立大学版ガバナンス・コード」を規範にし、適切なガバナンスを確保して、時代の変化に対応した大学づくりを進めていきます。
 また、中期的な計画を策定・公表し、学生をはじめ様々なステークホルダーに対し、私立大学の教育、研究及び社会貢献の機能を最大化し、価値の向上を目指していきます。

1−1 建学の精神

(1) 建学の精神と伝統

 愛知淑徳学園は、明治38年(1905年)、愛知淑徳女学校として開校されたのが始まりで、愛知淑徳女学校は、翌明治39年(1906年)、愛知県下初の私立の高等女学校である愛知淑徳高等女学校として設立認可されました。
 創設者の小林清作先生は、温良貞淑が女子の美徳とされていた時代に、「温良貞淑が女子の唯一の美徳と思わぬ。自覚したる女子は一個の人間であらねばならぬ」と主張し、「十年先、二十年先に役立つ人材の育成」を教育方針に掲げる一方、生徒には「淑徳魂」を説きました。「淑徳魂」とは、陰徳の精神と、逆境に屈せずに頑張ることであります。やがてそれは「謙譲優雅」、「質実剛健」の校訓となり、愛知淑徳学園の伝統精神となって、現在も脈々と流れています。
 戦後、日本の学校制度が大きく変わり、高等女学校は新制中学校と高等学校に分離され、愛知淑徳高等女学校も愛知淑徳中学校と愛知淑徳高等学校として再出発し、やがて時代の進展と社会の要請に応えて、愛知淑徳学園は、昭和36年(1961年)に愛知淑徳短期大学を開学し、昭和50年(1975年)に愛知淑徳大学を創立して、中学から大学までの女子教育を担い、その発展に尽くしてきました。

(2) 建学の精神と伝統に基づく人材像

 愛知淑徳大学は学園の建学の精神と伝統を継承して開学し、愛知淑徳短期大学とともに、女子大学として地域で高い評価を受け、短期大学、大学とも学部・学科を増設して期待に応えてきました。
 しかし、情報化、国際化、男女共同参画社会などの時代の潮流と社会の動向に鑑み、学園の建学の精神である「十年先、二十年先に役立つ人材の育成」を達成するために、新たな大学の理念を構築して新しい大学づくりに取り組み、新しい大学の理念を「違いを共に生きる」と定め、大学が目指し、学生が体得することとして、「地域に根ざし、世界に開く」、「役立つものと変わらないものと」、「たくましさとやさしさを」を掲げました。そして、大学が「異なる価値観を交換し合うことによって新しい価値観を生み出す場」として役立つことを期待しました。
 愛知淑徳大学は「違いを共に生きる」という理念のもとに、男女の性差だけでなく、国籍の違いを越え、外国人留学生や、年齢や世代の異なる社会人を受け入れているが、今後は健常者と障がい者が共に学ぶこと、自然環境との共生などを視野にいれてこの理念の一層の充実を目指しています。

1−2 教育と研究の目的(私立大学の使命)

(1) 建学の精神・理念に基づく教育目的等

1. 大学の教育目的及び研究目的

 日本の学校制度が大きく変わった戦後も、本学園は時代の流れや多様化する社会の要請に的確に応え、1975(昭和50)年に愛知淑徳大学を開学しました。その後「共生」が社会の大きな課題となる時代を迎えるとともに、1995(平成7)年創立20周年にあたって男女共学化を果たし、複数学部を擁する大学へと拡大していくことになりました。このような変化の中、学園創立以来の教育目標を継承、そしてより具体的、現実的に達成していくために、「違いを共に生きる」という理念を掲げるに至りました。さらにその理念は「地域に根ざし、世界に開く」「役立つものと変わらないものと」「たくましさとやさしさを」の3つの具体的テーマの形で表現され、ジェンダー・女性学研究所の開設、各種外国語教育や国際交流、コンピュータなどに代表される資格教育とボランティア活動をはじめとする体験教育の充実、さらにキャンパスのバリアフリー化などさまざまな教育体制の確立と教育実践に反映されています。「伝統は、たちどまらない。」というスローガンにこのような大学の進化の姿勢をこめて、愛知淑徳大学は、国籍、言葉、文化、性別、年齢、障がいの有無などお互いが違いを認め、すべての命と共に生きる道を探求し続ける、新たな時代の大学として常に躍進をめざしています。

2. 各学部の教育目的及び研究目的

1)文学部は、すべての学問の根本となる普遍のテーマである〈人間探究〉を基本理念とします。この理念に基づき、人類の過去の知的・文化的遺産を継承しつつ、同時に未来に向けた創造的思考力を身につけることにより、人間と社会に対する深い洞察力に基づく広い視野に立った課題探究及び解決能力を養成し、もって教員をはじめとする社会のあらゆる分野における有為の人材を育成することを教育の目的とします。

2)人間情報学部は、大学の理念である「違いを共に生きる」を念頭に、「人間理解」を基本理念として人間の心の仕組や行動、動作に至るまで人間の特性を明らかにしながら、ユニバーサルデザイン社会の実現に貢献できる情報技術と情報マネージメントの理論構築・開発・応用を、文系の知と理系の知の接続により教育・研究していくことを目的とします。この理念・目的は、合理的・論理的・科学的に思考する力、変わりゆく人間社会の未来を予測できる力、様々な情報資源を的確に活用できる力、そして人にやさしい情報社会に貢献できる人材の育成をめざすものです。

3)心理学部は、〈心の多様性と普遍性の理解〉を基本理念とし、人間行動のさまざまな現象を現代心理学の主要な領域から多角的な視点で総合的に究明する教育研究を行います。これにより、他者を尊重するとともに、自己を正しく表出しうる人材、さらには人間関係の中で生じる諸問題に適切に対処し得る人材を育成することを目的とします。

4)創造表現学部は、全ての表現活動の基礎となる創造力の涵養を基本理念とします。この理念に基づき、「言語」「メディア」「空間」といった多様な表現領域を包括した総合的な文化の構築や情報発信の担い手を育成することを教育の目的とします。

5)健康医療科学部は、言語聴覚学・言語聴覚障害学、視能矯正学・視能訓練学の専門家としての医療人の養成、心身の健康に関する広範な知識をもった教員を含めた生涯健康社会のリーダーの育成、そして、「栄養」、「食」の専門家として医療や健康科学の現場で活躍する人材の養成することを目的とします。

6)福祉貢献学部は、福祉に関する社会のしくみと対象の理解に必要な基礎知識を修得したうえで、対象者の求めと必要を理解し、総合的に判断・実践できる人材の育成することを教育の目的とします。

7)交流文化学科は、さまざまな文化的背景を持つ人々との交流を通して、広い視野から社会を眺め、多様な考え方、生き方、文化を受け入れることができる積極的な姿勢、そして新しい社会・文化を生成する力を育成するための教育研究を行います。

8)ビジネス学科は、グローバル化が進む現代社会において活躍しうる実践的専門性を備えたビジネスパーソンを育成するため、ビジネスに関する諸分野の教育研究を行うことを目的とします。

9)グローバル・コミュニケーション学部は、常に変化する国際社会を理解し、国内外の様々な事象を意識し、グローバルな視点を持てるようになるため、英語運用能力と幅広い教養を身につけるために必要な理論的、実践的な教育研究を行います。

3. 大学院の教育目的及び研究目的

 愛知淑徳大学大学院は、建学の精神に則り、高度にして専門的な学術の理論及び応用を研究し、その深奥を究め、文化の進展と人類の福祉に寄与する人材を養成することを目的とします。

4. 各研究科の教育目的及び研究目的

1)文化創造研究科は、高度の専門的学識の獲得と総合的な文化創造の両立を目指します。現代社会が要請する科学技術と精神文化との融合のあり方について、文化創造という観点から思索し、凝視し、発見し、提案していくことが、本研究科の使命であります。
そのために、人間の創造活動を幅広く捉え直して、文学(国文学専修)、図書館情報学(図書館情報学専修)、情報デザイン・システム(情報デザイン・システム専修)、文芸(創作表現専修)、メディア(メディアプロデュース専修)、造型デザイン(建築・インテリアデザイン専修)に関わる分野を統合して1専攻とする。広義における表象文化を対象に、各専修の専門的な研究を深めるとともに学際的研究視野をも身につけ、もって高次元の創造的表現を追究することを教育目的とします。

2)教育学研究科は、新しい時代の教育に対応できる教員をはじめとする教育界の指導的人材の育成を目指します。そのため、人間の発達及び教育に関する幅広く高度な専門的知識を修得し、それに基づいて、問題を論理的に分析し考察する研究能力を身につけるとともに、子ども一人ひとりの特性に応じたきめ細かな指導を行うことができる卓越した実践能力を培うことを目的とします。

3)心理医療科学研究科は、心理学、臨床心理学、社会福祉学、言語聴覚学、言語聴覚障がい学、視能訓練学、視能矯正学及びスポーツ・健康医科学に関する学問分野について、それぞれ高度な専門性をもって、社会の多様な専門分野における研究開発や実践活動に活用できる人材を育成するため、これらの異質でありながら相互に関連しあう諸分野の協働を視野に入れた教育研究活動を行います。

4)グローバルカルチャー・コミュニケーション研究科は、「言語文化コース」・「交流文化コース」の2つのコースを有機的に連携させることにより、学際的そして実用的な言語の運用能力を重視し、社会科学的な情報分析能力に裏打ちされた実行力で、グローバル社会で研究・実践に積極的に携わる人材の養成をめざしています。

5)ビジネス研究科は、企業等の実社会で活躍しうる問題解決能力を備えたビジネスパーソン、高度に専門的な職業人としての資格取得者、あるいは博士後期課程への進学者等となりうる人材を育成するための教育研究を行うことを目的とします。この目的に基づき、2つの専修「アカウンティング」「マネジメント&エコノミー」を置くとともに、2つの修了要件「専門的職業人コース」「研究者養成コース」を設けています。また、ビジネスの各領域に関わる、学問の発展・向上に寄与できる研究者もしくは特に高度な専門的知識を有する職業人を育成するための教育研究を行うことを目的とします。

(2) 中期的(原則として5年以上)な計画の策定と実現に必要な取組みについて
  1. 安定した経営を行うために、認証評価を踏まえて中期的な学内外の環境の変化の予測に基づく、適切な中期的な計画の検討・策定をします。
  2. 中期的な計画の進捗状況、財務状況については、大学運営委員会で進捗状況を管理把握し、その結果を内外に公表するなど、透明性ある法人運営・大学運営に努めています。
  3. 財政的な裏付けのある中期的な計画の実現のために、外部理事を含めた経営陣全体や、経営陣を支えるスタッフの経営能力を高めていきます。
  4. 改革のために、教職協働の観点からも事務職員の人材養成・確保など事務職員の役割を一層重視します。
  5. 経営陣と教職員が中期的な計画を共有し、教職員からも改革の実現に際して積極的な提案を受けるなど法人全体の取組みを徹底します。
  6. 中期的な計画に盛り込む内容
    ア 建学の精神・理念に基づき育成する具体的な人材像とこれを実現する教育目標
    イ 教育改革の具体策と実現見通し
    ウ 経営・ガバナンス強化策
    エ 法人・教学部門双方の積極的な情報公開
    オ 財政基盤の安定化策
    カ 設置校の入学定員確保策
    キ 設置校の教育環境整備計画
    ク グローバル化、ICT化策
    ケ 計画実現のためのPDCA体制
(3) 私立大学の社会的責任等
  1. 自主的に運営基盤の強化を図るとともに、本学の教育の質の向上及び経営の透明性の確保を図るよう努めます。
  2. 学生を最優先に考え、文部科学省、日本私立学校振興・共済事業団、教職員、学生父母、卒業生、地域社会構成員等他のステークホルダーとの関係を保ち、公共性・地域貢献等を念頭に学校法人経営を進めます。
  3. 私立大学の目的達成のためには、多様性への対応が不可欠との認識に立ち、男女共同参画社会への対応や、障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針(平成27年2月24日閣議決定)をはじめ、多様性への対応を実施します。

第2章 安全性・継続性(本法人の運営の基本)

 私立大学は、社会から、教育・研究及び成果の社会への還元という公的使命を負託されており、社会に対して説明責任を負っています。従って、その設置者である学校法人は、経営を強化しその安定性と継続性を図り、私立大学の価値の向上を実現し、その役割・責務を適切に果たします。学校法人は、このような役割・責務を果たすため、自律的なガバナンスに関する基本的な考え方及び仕組みを構築します。

2−1 理事会

(1)理事会の役割
  1. 意思決定の議決機関としての役割
    ア 理事会は、学校法人の経営強化を念頭におき業務を決し、理事の職務執行を監督します。
  2. 理事会の議決事項の明確化等
    ア 理事会において議決する学校法人における重要事項を寄附行為等に明示します。
    イ 理事会において議決された事項は、決議録に記録し、保管します。
    ウ 理事会へ業務執行者から適切な報告がなされるよう留意します。
  3. 理事及び大学運営責任者の業務執行の監督
    ア 理事会は、理事及び設置大学の運営責任者(学長、副学長及び学部長等)に対する実効性の高い監督を行うことを主要な役割・責務の一つと捉え、適切に大学の業務等の評価を行い、その評価を業務改善に活かします。 イ 理事会は、適時かつ正確な情報共有が行われるよう監督を行うとともに、内部統制やリスク管理体制を適切に整備します。
  4. 学長への権限委任
    ア 学長が任務を果たすことができるようにするために、理事会の権限の一部を学長に委任しています。
    イ 学長が副学長を置くなど、各々担当事務を分担させ、管理する体制としています。
    ウ 各々の所掌する校務及び所属教職員の範囲については、可能な限り規程整備等による可視化を図ります。
  5. 実効性のある開催
    ア 理事会は、年間の開催計画を策定し、予想される審議事項については事前に決定して全理事で共有します。
    イ 審議に必要な時間は十分に確保します。
  6. 役員(理事・監事)は、(ア)その任務を怠り、学校法人に損害を与えた場合、(イ)その職務を行う際に悪意又は重大な過失により第三者に損害を与えた場合、当該役員は、これを賠償する責任を負います。
  7. 役員(理事・監事)が学校法人又は第三者に生じた損害を賠償する責任を負う場合、他の役員も当該損害を賠償する責任を負うときは、これらの者は連帯して責任を負います。
  8. 役員(理事・監事)の学校法人に対する責任が加重とならないよう損害賠償責任の減免の規定を整備します。
  9. 理事会の議事について特別の利害関係を有する理事は、議決に加わることができません。

2−2 理事

(1) 理事の責務(役割・職務・監督責任)の明確化
  1. 理事長は、学校法人を代表し、その業務を総理します。
  2. 理事長を補佐する理事として、常任理事を置き、各々の役割のほか、理事長の代理権限順位も明確に定めます。
  3. 理事長及び理事の解任については、寄附行為及び同施行細則に明確に定めます。
  4. 理事は、法令及び寄附行為を遵守し、学校法人のため忠実にその職務を行います。
  5. 理事は、善管注意義務及び第三者に対する賠償責任義務を負います。
  6. 理事は、学校法人に著しい損害を及ぼすおそれのある事実を発見した場合は、これを理事長及び監事に報告します。
  7. 学校法人と理事との利益が相反する事項については、理事は代表権を有しません。また、利益相反取引を行おうとするときは、理事会において当該取引について事実を開示し、承認を受ける必要があります。
(2) 学内理事の役割
  1. 教職員である理事は、知識・経験・能力を活かし、教育・研究、経営面について、大学の持続的な成長と中長期的な安定経営のため適切な業務執行を推進します。
  2. 教職員として理事となる者については、教職員としての業務量などに配慮しつつ、理事としての業務を遂行します。
(3) 外部理事の役割
  1. 複数名の外部理事(私立学校法第38条第5項に該当する理事)を選任します。
  2. 外部理事は、学校法人の経営力・マネジメントの強化のため、理事会において様々な視点から意見を述べ、理事会の議論の活発化に大きく寄与し、理事としての業務を遂行します。
  3. 外部理事には、審議事項に関する情報について理事会開催の事前・事後のサポートを十分に行います。
(4) 理事への研修機会の提供と充実

 全理事(外部理事を含む)に対し、十分な研修機会を提供し、その内容の充実に努めます。

2−3 監事

(1) 監事の責務(役割・職務範囲)について
  1. 監事は、善管注意義務及び第三者に対する賠償責任義務を負います。
  2. 監事は、その責務を果たすため、事前に定めた監事監査規則等に則り、理事会その他の重要会議に出席することができます。
  3. 監事は、学校法人の業務、財産の状況及び理事の業務執行の状況を監査します。
  4. 監事は、学校法人の業務等に関し不正の行為、法令違反、寄附行為に違反する重大な事実があることを発見した場合、所轄庁に報告し、又は理事会・評議員会へ報告します。さらに、理事会・評議員会の招集を請求できるものとします。
  5. 監事は、理事の行為により学校法人に著しい損害が生じるおそれがあるときは、当該理事に対し当該行為をやめることを請求できます。
(2) 監事の選任
  1. 監事の独立性を確保する観点を重視し、理事長は評議員会の同意を得て理事会の審議を経て、監事を選任します。
  2. 監事は2名置くこととします。
  3. 監事の業務の継続性が保たれるよう、監事相互の就任・退任時期について十分考慮します。
(3) 監事監査基準
  1. 監査機能の強化のため、学校法人愛知淑徳学園監事監査規則等を作成します。
  2. 監事は、監査計画を定め、関係者に通知します。
  3. 監事は、学校法人愛知淑徳学園監事監査規則に基づき監査を実施し、監査結果を具体的に記載した監査報告書を作成し、理事会及び評議員会に報告し、これを公表します。
(4) 監事業務を支援するための体制整備
  1. 監事、公認会計士(及び内部監査者の三者)による監査結果について、意見を交換し監事監査の機能の充実を図ります。
  2. 監事機能の強化の観点から監事会を設置します。
  3. 監事に対し、十分な研修機会を提供し、その研修内容の充実に努めます。
  4. 学校法人は、監事に対し、審議事項に関する情報について理事会開催の事前・事後のサポートを十分に行うための監事サポート体制を整えます。
  5. その他、監事の業務を支援するための体制整備に努めます。
(5) 常勤監事の設置

 監事の監査機能の充実、向上のため、常勤監事を設置するよう努めます。

2−4 評議員会

(1) 諮問機関としての役割

 次に掲げる事項について、理事長は、評議員会に対し、あらかじめ、評議員会の意見を聞きます。なお、諮問事項に関して特別の利害関係を有する評議員は、議決に加わることができません。

  1. 予算、事業計画に関する事項
  2. 中期的な計画の策定
  3. 借入金(当該会計年度内の収入をもって償還する一時借入金を除く。)及び重要な資産の処分に関する事項
  4. 役員報酬に関する基準の策定
  5. 寄附行為の変更
  6. 合併
  7. 私立学校法第50条第1項第1号(評議員会の議決を要する場合を除く。)及び第3号に掲げる事由による解散
  8. 収益を目的とする事業に関する重要事項
  9. その他、学校法人の業務に関する重要事項で寄附行為をもって定めるもの
(2) 評議員から意見を引き出す議事運営方法の改善に努めます。
(3) 評議員会は、学校法人の業務若しくは財産の状況又は役員の業務執行の状況について、役員に意見を述べ、若しくはその諮問に答え、又は役員から報告を徴することができます。
(4) 評議員会は、監事の選任に際し、理事長が評議員会の同意を得るための審議をします。その際、事前に理事長は当該監事の資質や専門性について十分検討します。

2−5 評議員

(1) 評議員の選任
  1. 評議員の人数は、理事人数に対して十分な人数を選任します。
  2. 評議員となる者は、次に掲げる者としています。
    ア 当該学校法人の職員のうちから、寄附行為の定めるところにより選任された者
    イ 当該学校法人の設置する私立学校を卒業した者で年齢二十五年以上の者のうちから、寄附行為の定めるところにより選任された者 ウ 前各号に規定する者のほか、寄附行為の定めるところにより選任された者
  3. 学校法人の業務若しくは財産状況又は役員の業務執行について、意見を述べ若しくは諮問等に答えるため、多くのステークホルダーから、広範かつ有益な意見具申ができる有識者を選出します。
  4. 評議員の選任方法は、各選出区分により推薦された者について、当該候補者を理事会が選任する扱いとしています。
(2) 評議員への研修機会の提供と充実
  1. 学校法人は、評議員に対し審議事項に関する情報について、評議員会開催の事前・事後のサポートを十分に行います。
  2. 学校法人は、評議員に対し、十分な研修機会を提供し、その研修内容の充実に努めます。

第3章 教学ガバナンス(権限・役割の明確化)

 学長の任免は、役付教員の選考等に関する規程第2条に基づき、「理事会が行う」とあり、学則第9条において、「学長は校務をつかさどり、所属職員を統督する」としています。
 私立学校法において「理事会は、学校法人の業務を決する」とありますが、理事会は、理事会の権限の一部を学長に委任しています。理事会及び理事長は、大学の目的を達成するための各種政策の意思決定、副学長、学部長等の任命、教員採用等については、学長の意向が十分に反映されるように努めます。

3−1 学長

(1) 学長の責務(役割・職務範囲)
  1. 学長は、学則第2条に掲げる「学園の創立精神を基本として、健康で気品のある人格・不撓不屈の精神力、陰徳を心がける豊かな情操を涵養するとともに、学術研鑽とその創造的な活用に万全の努力を払い、あまねく真・善・美の真価を調和的に体得することにより、社会と文化の発展に貢献するすぐれた人材の育成する」という目的を達成するため、リーダーシップを発揮し、大学教学運営を統括し、所属教職員を統督します。
  2. 学長は、理事会から委任された権限を行使します。
  3. 所属教職員が、学長方針、中期的な計画、学校法人経営情報を十分理解できるよう、これらを積極的に周知し共有することに努めます。
(2) 学長補佐体制(副学長・学部長・研究科長・教務部長・学生部長の役割)
  1. 大学に副学長を置くことができるようにしており、学則第9条において「副学長は、学長を補佐し、その命を受けて大学の重要な事項についての校務をつかさどる。」としています。
  2. 学部長の役割については、学則第9条において「学部長は、学長を補佐し、その命を受けて学部内の教学運営業務を遂行し、業務を処理するとともに、学部に所属する教員を指揮監督する。」としています。
  3. 研究科長の役割については、学則第9条において「研究科長は、学長を補佐し、その命を受けて研究科内の教学運営業務を遂行し、業務を処理するとともに、研究科に所属する教員を指揮監督する。」としています。
  4. 教務部長及び学生部長の役割については、学則第9条において「教務部長及び学生部長は、学長を補佐し、その命を受けて大学に関する教学運営業務を統括する。」としています。

3−2 教授会

(1) 教授会の役割(学長と教授会の関係)

 大学の教育研究の重要な事項を審議するために教授会を設置しています。審議する事項については各学部の教授会規程に定めています。
 ただし、学校教育法第93条に定められているように、教授会は、定められた事項について学長が決定を行うに当たり意見を述べる機関であり、学長の最終判断が教授会の審議結果に拘束されるものではありません。

第4章 公共性・信頼性(ステークホルダーとの関係)

 私立大学は、常に時代の変化に対応した高い公共性と信頼性が確保されなければなりません。建学の精神・理念に基づき自律的に教育事業を担う私立大学は、こうした高い公共性と信頼性のもとでの社会的責任を十二分に果たして行かねばなりません。ステークホルダー(学生・保護者、同窓生、教職員等)はもとより、広く社会から信頼され、支えられるに足る存在であり続けるために、公共性と信頼性を担保する必要があります。

4−1 学生に対して

(1) 学生の学びの基礎単位である学部等においても、3つの方針(ポリシー)を明確にし、入学から卒業に至る学びの道筋をより具体的に明確にします。
  1. 学部ごとの3つの方針(ポリシー)
    ア 卒業認定・学位授与の方針(ディプロマ・ポリシー)
    イ 教育課程編成・実施の方針(カリキュラム・ポリシー)
    ウ 入学者受入れの方針(アドミッション・ポリシー)
  2. 自己点検・評価を実施し広く社会に公表するとともに、その結果に基づき学生の学修成果と進路実現にふさわしい教育の高度化、学修環境・内容等のさらなる整備・充実に取組みます。
  3. ダイバーシティ・インクルージョン(多様性の受容)の理念を踏まえ、ハラスメント等の健全な学生生活を阻害する要因に対しては、学内外を問わず毅然かつ厳正に対処します。

4−2 教職員等に対して

(1) 教職協働

 実効性ある中期的な計画の策定・実行・評価(PDCAサイクル)による大学価値向上を確実に推進するため、教員と事務職員等は、教育研究活動等の組織的かつ効果的な管理・運営を図るため適切に分担・協力・連携を行い、教職協働体制を確保します。

(2) ユニバーシティ・ディベロップメント:UD

 全構成員による、建学の精神・理念に基づく教育・研究活動等を通じて、私立大学の社会的価値の創造と最大化に向けた取組みを推進します。

  1. ボード・ディベロップメント:BD
    ア 常任理事は、寄附行為等関連規定並びに事業計画等に基づく責任担当事業領域・職務に係るPDCAを毎年度明示します。
    イ 監事は毎年度策定する監査計画と監査報告書を理事会並びに評議員会に報告します。
  2. ファカルティ・ディベロップメント:FD
    ア 3つの方針(ポリシー)の実質化と教育の質保証の取組みを推進するため、教員個々の教育・研究活動に係るPDCAを毎年度明示します。 イ 教員個々の教授能力と教育組織としての機能の高度化に向け、学長のもとにFD推進組織を整備し、年次計画に基づき取組みを推進します。
  3. スタッフ・ディベロップメント:SD
    ア 全ての教員・事務職員等はその専門性と資質の向上のための取組みを推進します。
    イ SD推進に係る基本方針と年次計画を定め、計画的な取組みを推進します。
    ウ 教職協働に対応するため、事務職員等としての専門性、資質の高度化に向け、年次計画に基づき業務研修を行います。

4−3 社会に対して

(1) 認証評価及び自己点検・評価
  1. 認証評価
    平成16(2004)年度から、全ての大学は、7年以内ごとに文部科学大臣が認証する評価機関の評価を受けることが法律で義務付けられました。本学も評価機関の評価を受審し、評価結果を踏まえて自ら改善を図り、教育・研究水準の向上と改善に努めます。
  2. 自己点検及び評価結果等を踏まえた改善・改革(PDCAサイクル)の実施
    教育目標や組織目標の実現に向け、それらの目標の達成状況及び各種課題の改善状況等に関する定期的な自己点検・評価を実施し、その結果を踏まえた改善・改革のための計画を策定し、実行します。
  3. 学内外への情報公開
    自己点検や改善・改革に係わる情報及び保有する教育・研究をはじめとする各種情報資源を、刊行物やホームページ等を通じて積極的に公開することにより、学内外の関係者及び社会に対する説明責任を果たします。
(2) 社会貢献・地域連携
  1. 資源を活用し、社会の発展と安定に貢献するため、教育・研究活動の多様な成果を社会に還元することに努めます。
  2. 産官学の組織的連携を強化し、「知の拠点」としての大学の役割を果たすとともに、産学、官学、産産等の結節点として機能します。
  3. 地域の多様な社会人を受け入れるとともに、時代の要請に応じた生涯学習の場を広く提供します。
  4. 大規模災害への対応として、日常的に地域社会と減災活動に取組みます。
  5. 環境問題を始めとする社会全体のサステナビリティを巡る課題について対応します。

4−4 危機管理及び法令遵守

(1) 危機管理のための体制整備
  1. 危機管理体制の整備と危機管理マニュアルの整備に取組みます。
    ア 大規模災害
    イ 不祥事(ハラスメント、公的研究費不正使用等)
  2. 災害防止、不祥事防止対策に取組みます。
    ア 学生・生徒等の安全安心対策
    イ 減災・防災対策
    ウ ハラスメント防止対策
    エ 情報セキュリティ対策
    オ その他のリスク防止対策
  3. 事業継続計画の策定に取組みます。
(2) 法令遵守のための体制整備
  1. 全ての教育・研究活動、業務に関し、法令、寄附行為、学則並びに諸規程(以下、法令等という。)を遵守するよう組織的に取組みます。
  2. 法令等に違反する行為又はそのおそれがある行為に関する教職員等からの通報・相談(公益通報)を受け付ける窓口を常時開設し、通報者の保護を図ります。

第5章 透明性の確保(情報公開)

 私立大学は、日本における高等教育の大きな担い手であり、公共性が高く、社会に質の高い重要な労働力を提供する機関であることを踏まえ、法人運営・教育研究活動等について、透明性の確保にさらに努めます。
 私立大学は、多くのステークホルダーから支持されることが必要ですが、大学の目的は教育・研究・社会貢献等多岐にわたっており、それぞれに異なるステークホルダーが存在することを踏まえた上で、法人運営・教育研究活動の透明性を確保します。
 私立大学は、高等教育を担う公共性の高い機関であることから、企業のように、利益を追求する「株主への説明責任である」との位置付けとは異なり、法人運営・教育研究活動の公共性・適正性を確保し、透明性を高める観点からステークホルダーへの説明責任を果たします。

5−1 情報公開の充実

(1) 法令上の情報公表

 公表すべき事項は学校教育法施行規則(第172条第2項)、私立学校法等の法令及び日本私立大学団体連合会のガイドライン等によって指定若しくは一定程度共通化されていますが、公開するとした情報については主体的に情報発信していきます。

  1. 教育・研究に資する情報公表
    ア 大学の教育研究上の目的
    イ 卒業認定・学位授与の方針(ディプロマ・ポリシー)
    ウ 教育課程編成・実施の方針(カリキュラム・ポリシー)
    エ 入学者受入れの方針(アドミッション・ポリシー)
    オ 教育研究上の基本組織
    カ 教員組織、教員の数並びに各教員が有する学位及び業績
    キ 入学者の数、収容定員、在学学生数、卒業又は修了者数並びに進学者数及び就職者数その他進学及び就職等の状況
    ク 授業科目、授業方法及び内容並びに年間の授業計画
    ケ 学修成果に係る評価及び卒業又は修了認定に当たっての基準
    コ 校地、校舎等の施設及び設備その他の学生の教育研究環境
    サ 授業料、入学料等の大学が徴収する費用
    ス 学生が修得すべき知識及び能力
  2. 学校法人に関する情報公表
    ア 財産目録・貸借対照表・収支計算書
    イ 寄附行為
    ウ 監事の監査報告書
    エ 役員等名簿(個人の住所に係る記載の部分を除く)
    オ 役員報酬に関する基準
    カ 事業報告書
(2) 自主的な情報公開

 法律上公開が定められていない情報についても、積極的に自らの判断により努めて最大限公開します。事例としては次のような項目があります。

  1. 教育・研究に資する情報公開
    ア 海外の協定校及び海外派遣学生者数
    イ 大学間連携
    ウ 地域連携並びに産学官連携
  2. 学校法人に関する情報公開
    ア 中期的な計画
    イ 経営改善計画
    ウ 学校法人が相当割合を出資する会社に関する情報
(3) 情報公開の工夫等
  1. 上記(1)A及び(2)Aの学校法人に関する情報については、Web公開に加え、各事務所に備え置き、請求があれば閲覧に供します。
  2. 情報公開に当たっては、対象者、方法、項目等を明らかにした情報公開方針を策定し、公開します。
  3. 公開方法は、インターネットを使ったWeb公開が主流ですが、閲覧者が多岐にわたることを考慮し、「大学ポートレート」を活用するほか、学校要覧、入学案内、広報誌、各種パンフレット等の媒体も活用します。
  4. 公開に当たっては、分かりやすい説明を付けるほか、説明方法も常に工夫します。

第6章 中学校・高等学校の運営

 学校法人愛知淑徳学園は、愛知淑徳中学校・高等学校を設置しています。
 中学校・高等学校においても、本ガバナンス・コードの理念を尊重するとともに、教育活動の規範とします。また、中学校・高等学校校長を本法人の理事として選任し、緊密な高大連携体制を構築します。

 愛知淑徳中学・高校は女子のみの学校であり、小学校や大学と異なり、青春期といわれる中学・高校生の時期は異性を日常的に意識しない別学の環境が能力の開発にふさわしいとされ、別学のメリットが大きいと考えられています。事実、アメリカやヨーロッパでは、優れた女性のリーダーを輩出している一部の女子校が高い評価を受けています。
 愛知淑徳中学・高校は、中高完全一貫教育体制への移行が決定した後、その教育の理念と目標を明確にするため、従来の教育方針を若干修正し、本校が理想とする人物像を、

広く深い視野を持ち、社会のさまざまな分野で活躍する女性
淑徳魂の「強さ」と「やさしさ」を持つ自立した女性
豊かな情操と教養を持ち、健康で明るく、主体的に行動できる女性

とし、その実現のために生徒が身につけるべき「7つの力」を次のように考え、教育の指針としています。

  1. 目標や夢に向かって行動できる自己表現力
  2. 国際化に対応する英語力
  3. 自分の考えを自分のことばで表現できる力
  4. 科学的な視野と論理的な思考力
  5. さまざまな分野で活躍できる自立した判断力
  6. 規律を重んじ、他を大切にする協調性
  7. 視線は世界へ。それぞれの希望の進路へ

 愛知淑徳中学・高校は、中高完全一貫教育体制における新しい教育方針のもと、教育内容および教育環境の充実を図るべく努力を続けていきます。