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インタビュー「違い」生きる環境を

「違い」生きる環境を

 明治以来の女子教育の長い伝統から一歩を踏み出し、男女共学化を図った愛知淑徳大。併せてユニークな学部を次々と開設し、この10年ほどで大きな変貌(ぼう)をとげた。「男女問わず、伸びる意欲のある学生はどこまでも伸ばす」と意気込む小林素文学長に、大学づくりの指針を聞いた。(中日新聞社会部 永井昌己氏)

 ―九年前に共学化という大きな転換を図った。

学長:中学・高校では男女別学に一定の効果があるが、大学では必ずしも当てはまらない。共学化とともに「違いを共に生きる」という新しい理念を掲げ、まず「男女の違い」を超えて自分自身を見つけてもらう場をつくりたかった。学生募集に困ったわけではない。

 ―学内や同窓会の反応は。

学長:二年ほど前から論議を重ねたが、若手の教員らが「方向性はいい」と賛同してくれた。同窓会からは「独自性がなくなる」と心配する声もあったが、新しい理念に納得してもらうことができた。現在は、この理念に沿った改革の真っ最中だ。

 ―共学化の後も「違いを生きる」ために行ったことは。

学長:校舎をバリアフリーにして障がい者と健常者がともに学べるようにし、今春からは医療福祉学部を開設した。国も文化も、いろんな「違い」を生きる環境をつくってきている。

 ―この十年ほどは学部増設の歴史でもあった。

学長:文学部の単科大から、最初に現代社会学部開設に踏み切った背景は、学生の「数」が欲しかったため。次いで短大をなくし、これに代わる学部を増設した。理系分野も取り入れようと医療福祉学部もつくった。

 ―理系といえば、文系中心の大学ながら建築士の資格を取得できる学部も設けたが。

学長:現代社会学部だ。もともと、建築は工学部で、というのは日本だけ。建築はアートでもあり、環境にも深く関与する。テクニックを学ぶ工学部だけにゆだねる必要はない。男子学生も多く、女子大の歴史の長い本学になかった新しい雰囲気が生まれている。

 ―資格や技能を重視する最近の傾向の中で「教養教育重視」という面がいまだ色濃いようだが。

学長:そうばかりでははない。「役立つものと変わらないもの」を、ともに大切にしている。「役立つもの」は、語学とコンピューター教育の徹底。大学が受験料を負担して国際的な英語能力検定のTOEICを全員に受験してもらう。学内での学生の評価もTOEIC。中国語もコンピューターもしかり。「変わらないもの」という点では、教養教育でも職業に直結しないボランティア活動でも、自分自身の見方を広げて時代を考える力を付けるよう、切磋琢磨させている。

 ―次のステップは。

学長:「フィールドスタディセンター」(仮称)を設け、現実に即した学問を組織的に取り組む場をつくりたい。学部間のネットワークをつくり、専門分野を超えた学内の連携も強めたい。

(中日新聞 2004.05.11 「改革の道のり」より)