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温故知新
(『リクルートカレッジマネジメント117号TOP INTERVIEW』より)

 愛知淑徳大学およびその母体である愛知淑徳学園が今日まで発展を遂げることができたのは、学園草創期以降、時代の流れや変化に的確に対応したきたからにほかなりません。
 そのことはまた、時代の先を読むことにもつながってきます。本学の前身で、1905(明治38)年に開学した愛知淑徳女学校は、時代の先を読むことの1つの理念として設立された学校でした。
 愛知淑徳女学校は、愛知県では最初の私立の高等女学校となりましたが、創立者の小林清作先生は温良貞淑が女子の美徳とされていた時代に、「温良貞淑が女子の唯一の美徳とは思わぬ。自覚したる女子は一個の人間であらねばならぬ」と主張していました。
 当時の女学校は、良妻賢母の育成を目指し、そのための家事・裁縫が教育の主流でした。しかし、淑徳では英語や理科を必須科目にし、スポーツに力を入れたり、制服を洋装にするなど他の女学校とは一線を画した学校として知られていました。
 女学校設立に当たって小林清作先生は「10年先、20年先に役立つ人材の育成」を教育方針に掲げ、一方生徒には「淑徳魂」を説いています。「淑徳魂」とは、人に知られぬように施す恩徳、つまり陰徳の精神と逆境に屈せず頑張ることです。
 こうした教育方針と「魂」は、もとより本学にも受け継がれ、学園全体の伝統精神となっています。
 1961(昭和36)年には、学園の伝統を高等教育にも生かそうと愛知淑徳短期大学が開学します。さらに‘75(昭和50)年には、時代の要請に応えるべく愛知淑徳大学を開学、‘95年(平成7)年には男女共学体制へと移行しました。

 大学では、当初国文学科と英文学科からなる文学部の1学部のみでスタートしましたが、現在では学部、学科構成も変化し、以下の学部、学科を擁する総合大学に発展しています。
 文学部は、国文学科、英文学科、図書館情報学科の3学科。現代社会学部は、現代社会学科の1学科ですが、「地域社会・国際社会・メディアプロデュ−ス・都市環境デザイン」の4コース制。コミュニケーション学部は、コミュニケーション心理学科、ビジネスコミュニケーション学科、言語コミュニケーション学科の3学科。文化創造学部は文化創造学科の1学科ですが、表現文化、多元文化、環境文化の各専攻に分かれています。
 本学の現在の学部・学科構成も、すべて時代の流れと要請に適応した形で展開してきました。
 展開の背景にあるのは、社会の国際化、高度情報化といっていいでしょう。また、急速な社会の変化に応じた生涯学習の必要性も時代の大きな背景となっています。
 この時代の流れと社会動向の中で、学園の建学の精神である「10年先、20年先に役立つ人材育成」と達成するために、‘95年(平成7年)の男女共学化とともに新たに大学として理念を掲げました。その理念とは、「違いを共に生きる」です。さらに、大学が目指し、学生が体得するものとして、「地域に根ざし、世界に開く」「役立つものと変わらないもの」「たくましさとやさしさ」の3つを掲げました。
 「違いを共に生きる」の理念を具体的に実践するべく、男女の性差だけでなく、国籍の違いを越えた外国人留学生の受け入れ、また年齢や世代の異なる社会人も大学院を中心に積極的に受け入れています。
 また、本学では「役立つものと変わらないもの」という2つの観点からカリキュラムが組まれています。「役立つもの」というのは、それぞれが自分の人生で役に立つ資格や能力を大学で獲得することです。
 「変わらないもの」とは、ゼミなどでの研究やふれあいを通じて、世の中を見る目を養い、自分らしい生き方を学べるような教育のことです。

 少子化と18歳人口の激減によって、いま大学経営は厳しい時代を迎えています。各大学では、そのための経営戦略などもさまざまに検討されていますが、私は「サバイバル」の決め手は、その大学に対する学生と社会の評価につきると考えています。
 まず、学生に満足してもらえる教育のプログラムをつくること。それによって、学生が幸せな人生を送ることのできるきっかけを大学が提示することが大事だと思います。
 ただ、そうしたきっかけを学生自身が見つけることができるかどうかは個人差があります。そのために、本学では学生にアドバイスしたり、サポートする仕組みをより強化していきたい。そして、学生には「親切で丁寧」な対応をすることを本学のモットーとしていきたいと思います。
 そのためには、何より、教職員には学生に対する愛情と熱意が求められるわけです。またこれらを実践するためには、私を含めて教職員全てが、学生を育てるという教育機関で仕事をしているのだ、という原点をみつめていることが何より大切です。
 昨今のように、社会動向の変化が激しいと先を見通すことはなかなか難しいのですが、2005年の学園創立100周年に向けて、星が丘キャンパスの再開発に取り組んでいます。ここでは、「違いを共に生きる」理念を具現化した開発、すなわち、バリアフリー、歩車分離、分煙を徹底し、環境にもやさしいものとしていきます。
 本学が21世紀を迎えてその役割を果たすべきモットーは、何も目新しいものではなく温故知新、まさしく創立者の掲げた「10年先、20年先に役立つ人造り」と「淑徳魂」、陰徳の精神と逆境に屈せず頑張ることにあると信じています。