大人の耳が聞こえにくい原因は?考えられる疾患と受診の目安
大人になってから「耳が聞こえにくい」と感じる背景には、耳垢のつまりのような一時的なものから、早めの対応がすすめられる疾患まで、さまざまな原因が考えられます。この記事では、大人の耳が聞こえにくくなる主な原因と関連する疾患、受診の目安、日常でのケアのポイントを整理して解説します。
監修
平山 肇愛知淑徳大学クリニック院長
約30年にわたり耳鼻咽喉科の診療に従事。大学病院で培った豊富な経験を活かし、聴覚障害やめまいをはじめ、幅広い症状や疾患に対応しています。 ■資格:日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会 耳鼻咽喉科専門医、日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会 補聴器相談医、日本めまい平衡医学会 めまい相談医
この記事でわかること
- 耳垢のつまりや騒音、加齢など、大人の聞こえにくさを招く主な原因
- 突発性難聴・メニエール病など、背景に考えられる疾患の種類
- 様子を見ずに耳鼻咽喉科を受診したほうがよいサイン
大人の耳が聞こえにくくなる主な原因
「聞こえにくい」と感じる背景には、耳の入口で音がさえぎられている場合と、音を感じ取る内耳や神経の働きが低下している場合があります。ここでは、大人に起こりやすい代表的な5つの原因を取り上げます。自然に戻ることが多いものと、早めの受診がすすめられるものがあるため、心当たりがないか確認してみてください。
耳垢・水・異物のつまり
耳垢が外耳道にたまったり、入浴やプールで水が入ったりすると、一時的に音がこもって聞こえにくくなることがあります。綿棒で奥に押し込むと、かえって悪化する場合があります。無理に取ろうとせず、続くようであれば耳鼻咽喉科での除去を検討するとよいでしょう。
大きな音・騒音による負担
コンサートや工事現場など大きな音を長く聞くと、音を感じ取る内耳の細胞が傷つき、聞こえにくさや耳鳴りが起こることがあるとされています。イヤホンで大音量を続ける習慣も負担になりやすいと考えられています。多くは一時的とされますが、繰り返すと回復しにくくなることもあり不可逆的な聴覚障害を引きおこす場合もあります。異変を感じた時は早めの受診を検討するとよいでしょう。
参考:ヘッドホン難聴(イヤホン難聴)について|厚生労働省 e-ヘルスネット
加齢による内耳や神経の衰え
年齢とともに内耳の細胞や聴神経の働きが低下し、高い音から徐々に聞き取りにくくなる傾向があるとされています。左右の両耳で進むことが多く、会話の子音を聞き分けにくくなりやすいと言われています。
ストレス・疲労・睡眠不足
強いストレスや過労、睡眠不足は自律神経や血流に影響し、耳の不調として現れることがあると考えられています。突発性難聴やメニエール病の引き金になる場合もあるとされ、体調管理は聞こえの維持にも関わると考えられています。
参考:突発性難聴について | 生活習慣病などの情報(e-ヘルスネット) | 健康日本21アクション支援システム Webサイト
気圧の変化・薬の副作用
飛行機の離着陸や高い山など気圧が急に変わる場面では、耳がつまって聞こえにくくなることがあります。また、一部の薬には聴力に影響する副作用が知られています。気になる症状が続くときは、服用中の薬を医師に伝えるとよいでしょう。
「聞こえにくい」の背景にある主な疾患
聞こえにくさが続く場合、その背景に耳の病気が隠れていることがあります。ここでは、大人にみられる代表的な疾患を取り上げます。なかには治療を始める時期が回復に関わるとされるものもあるため、当てはまる症状がないか確認してください。ただし、症状だけで病気を見分けることはできず、最終的な判断には医療機関での検査が必要です。
突発性難聴
ある日突然、片耳が聞こえにくくなる病気とされています。原因がはっきりしないことも多く、早めに治療を始めることが回復に関わると考えられています。発症からできるだけ早く、遅くとも数日以内の受診がすすめられています。
加齢性難聴(老人性難聴)
加齢にともない両耳の聞こえが徐々に低下する状態で、高音から聞き取りにくくなりやすいとされています。進行はゆるやかとされますが、放置すると会話や生活に支障が出ることがあります。補聴器などで聞こえを補う対応がとられることが多いようです。
メニエール病
回転するようなめまいを繰り返し、難聴・耳鳴り・耳のつまり感をともなうことがある病気とされています。内耳のリンパ液のバランスの乱れ(内リンパ水腫)が関わると考えられており、症状を繰り返すうちに聞こえが低下することもあるとされています。
参考:遅発性内リンパ水腫(指定難病305)|難病情報センター
滲出性中耳炎・慢性中耳炎
滲出性中耳炎は中耳に液体がたまり、痛みが少ないまま聞こえにくくなることがあります。慢性中耳炎は鼓膜に穴が残り、耳だれや難聴を繰り返すことがあるとされています。いずれも治療の対象となるため、早めの受診を検討するとよいでしょう。
耳管狭窄症・耳管開放症
耳と鼻をつなぐ「耳管」の働きが乱れる状態です。狭窄症では耳がつまった感じが続くことがあり、開放症では自分の声が大きく響いて聞こえることがあるとされています。開放症は急な体重の減少などが関わる場合もあると言われています。
こんな聞こえにくさは早めに耳鼻咽喉科へ
聞こえにくさの多くはすぐに命に関わるものではありませんが、なかには早めの対応がすすめられるケースがあります。ここでは、様子を見ずに受診したほうがよいサインと、受診したときの一般的な流れを整理します。当てはまるものがあれば、症状が軽くても相談してください。
すぐに受診すべき症状(急な難聴・片耳だけ)
「急に」「片耳だけ」聞こえにくくなった場合は、突発性難聴などの可能性が考えられ、早めの治療が回復に関わるとされています。時間が経つほど治りにくくなることもあるため、様子を見ずに早めの受診をおすすめします。
めまい・耳鳴りをともなう場合
聞こえにくさにめまいや強い耳鳴りが加わるときは、内耳の病気が疑われることがあります。転倒の危険もあるため、症状が強い場合は早めに相談するとよいでしょう。
受診する診療科と検査の流れ
耳の不調は耳鼻咽喉科が専門とされています。一般的には、問診のあとに鼓膜の状態を診る検査や、どの高さの音がどの程度聞こえるかを調べる聴力検査などを行い、原因に応じた治療を検討します。検査内容は症状によって異なります。
聞こえにくさを防ぐ・悪化させない対処法
聞こえの低下には、日々の音環境や生活習慣が関わるものもあると考えられています。ここでは、耳への負担を減らし、変化に早く気づくための3つのポイントを整理します。すでに聞こえにくさを感じている場合も、悪化を防ぐという意味で役立ちます。
大きな音・イヤホンの使い方に注意する
イヤホンは音量を上げすぎず、長時間の連続使用を避けることがすすめられています。周囲がうるさいと音量を上げがちなので、遮音性の高いものを選ぶのも一つの方法です。騒がしい場所では、耳を休ませる時間をつくるとよいでしょう。
参考:ヘッドホン難聴(イヤホン難聴)について|厚生労働省 e-ヘルスネット
ストレスをためず生活習慣を整える
睡眠を十分にとり、疲れをためないことは、耳の健康にもつながると考えられています。適度な運動やバランスのよい食事、禁煙なども、血流を保つうえで役立つとされています。
気になる変化は早めにセルフチェック
「聞き返しが増えた」「テレビの音量が上がった」などは、聞こえの変化のサインの一つとされています。気づいたら放置せず、必要に応じて聴力検査を受けることが、悪化の予防につながると考えられています。
80歳でも30dBの聴力を守る「聴こえ8030運動」とは
加齢による聞こえの低下は誰にでも起こり得ますが、「歳のせい」と受け止められ、相談につながりにくいという課題が指摘されています。ここでは、そうした背景をふまえて進められている国民啓発活動「聴こえ8030運動」と、その前提にある現状を紹介します。
「聴こえ8030運動」は、日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会が進める国民啓発活動です。80歳で30dB(補聴器を使った状態を含む)の聞こえを保つことを目標に掲げています。歯の健康を守る「8020運動」にならい、良い聞こえで高齢者の健康寿命を支えることを目指すとされています。
加齢性難聴と認知症・低い受診率という課題
加齢性難聴は推定約1,437万人とされ、60歳以上の3人に1人、70歳以上の約半数が該当すると推計されています。難聴は認知症のリスク要因の一つと考えられていますが、日本の耳鼻科受診率や補聴器の装用率は先進国と比べて低いことが課題として指摘されています。
「歳のせい」と放置しないことが大切
歳を重ねて聞こえが低下するのも「加齢性難聴」という一つの病気とされています。「歳のせい」と決めつけて放置せず、早めに耳鼻咽喉科へ相談することがすすめられています。
大人の耳が聞こえにくいに関するよくある質問(Q&A)
最後に、大人の聞こえにくさについて寄せられることの多い質問をまとめました。「受診すべきかどうか」で迷いやすいポイントを中心に整理しています。
一時的な聞こえにくさは放置してもいい?
耳垢や気圧によるものであれば自然に戻ることもありますが、数日以上続く、繰り返す、急に起きたといった場合は受診を検討してください。特に片耳の急な難聴では、早めの対応がすすめられています。
片耳だけ聞こえにくいのはなぜ?
耳垢のつまりのような軽いものから、突発性難聴やメニエール病などの疾患まで、原因はさまざまと考えられます。片耳だけ急に聞こえにくくなったときは、自己判断せず耳鼻咽喉科で相談するとよいでしょう。
補聴器はどのタイミングで検討すべき?
会話の聞き返しが増える、聞き間違いで困る場面が出てきたときが、検討の目安の一つとされています。まず聴力検査で状態を確認し、専門家に相談しながら選ぶことで、自分に合ったものを見つけやすくなると考えられています。
大人の聞こえにくさが気になるなら愛知淑徳大学クリニックへ
愛知淑徳大学クリニック(愛知県長久手市)の耳鼻咽喉科では、耳・鼻・のどの一般診療に加え、聴覚障害や補聴器の相談、めまい・平衡障害の診療に対応しています。
アクセス・診療時間
- 所在地:〒480-1146 愛知県長久手市片平二丁目1401(愛知淑徳大学長久手キャンパス隣接)
- 電話:0561-62-1222(代表)
- 診療時間:午前の部 10:00〜13:00(受付9:30〜12:30)/午後の部 15:00〜18:00(受付14:30〜17:30)
- 休診日:土曜・日曜・国民の休日、夏季休業(8月12日〜8月17日)、年末年始(12月29日〜1月3日)
- アクセス:地下鉄東山線・本郷駅から市バス「猪高緑地(愛知淑徳大学)」終点下車/藤が丘駅から名鉄バス「愛知淑徳大学」終点下車/Nバス「淑徳大学」下車。駐車場あり(高さ制限2.3m)
診療時間や担当医は変更される場合があります。受診の際は、最新の情報を公式サイトでご確認ください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、診断・治療を行うものではありません。症状や適切な治療は個人によって異なります。気になる症状があるときは、医療機関を受診してください。

