追究

2023年10月30日

高校生のためのスタートアップ心理学講座

2023年8月25日(金)長久手キャンパス 7号棟4階741教室

心理学部の教員による高校生を対象とした講座を実施。
さまざまな心理学の分野についてわかりやすく解説し、受講者の関心を高めました。

 心理学部では毎年「高校生のためのスタートアップ心理学講座」を開催しています。今年も心理学に興味を持つ高校生を対象に、心理学の魅力や本学で学ぶ内容、心理学を将来にどのように活かすかなどについて、本学の専任教員が講座をおこないました。

 この講座では、心理学部の学生もスタッフとして参加し、さらに創造表現学部の学生も映像制作担当として参加しました。

 今回は心理学講座の内容について、ダイジェストで紹介します。

1. 心理学とは/小川一美先生

 まず本学部の学部長・小川一美先生が、講座の導入として心理学の基礎を解説。「心理学とは何か」「どのように研究するのか」「どのようなテーマがあるのか」などをわかりやすく説明しました。心理学を学ぶメリットとして「人間の行動や心について理解でき、コミュニケーション能力や論理的思考力、問題解決力といった社会人基礎力を身に付けることができます」と、社会で必要とされる能力を養えることを説明。仕事だけでなく「人についてのスペシャリストになり、賢く生きる力が身につきます」と、心理学の学習が今後の人生にも良い影響を与えることを伝え、受講生の本講座に対する期待と学習意欲を高めました。

2. 社会心理学/平島太郎先生

 2限目は、平島太郎先生が「社会心理学」をテーマに社会や集団における人間の行動や心の特徴について話しました。まず、大小2つの三角記号と丸記号の計3つが、まるで意思があるかのように動く動画を見せ、受講生に動画の内容やストーリーを想像してもらいました。その後、「三角や丸はただの記号でしかありません。しかし単なる記号の振る舞いに対しても、人は自発的・自動的に心を読み取ってしまいます」と、人間の「他者の心を読み過ぎてしまう性質」を説明。そして心を読み過ぎてしまう人間が集まると、個人の本心と集団で生じた現実にズレが生じることがあるといいます。人々の相互作用によって生じた現実を「社会的現実」と呼び、社会心理学について理解を深めることで、正しい自己理解・他者理解につながり、社会的現実を変えることができると語りました。電車やバスで席を譲れない心理など、身近な問題が取り扱われており、受講生も納得の表情を浮かべながら先生の話に耳を傾けていました。

3. 臨床心理学/清瀧裕子先生

 臨床心理士や公認心理師を目指す上で必須となる臨床心理学。清瀧裕子先生は、臨床心理士や公認心理師の資格が求められ、高校生とも関わりのあるスクールカウンセラーについて詳しく説明しました。スクールカウンセラーの1日のスケジュールや仕事内容を解説すると、生徒や保護者のカウンセリングや先生からの生徒に関する相談・記録など、想像よりも業務量が多いことに驚く受講生も少なくありませんでした。また、高校生から寄せられる悩みとして「マスクを外すのが恥ずかしい」という声が多いことを紹介。コロナ禍ではマスク着用が当たり前となっていたために、マスクを外せるようになった現在も、「顔をさらけだすことで相手をがっかりさせてしまうのではないか」という不安や恐怖を抱いている人が増えているようで、その話に共感した様子の受講生もいました。このような悩みを抱える人に対して、励ましの言葉をかけてもうまくいかない場合は、専門家がじっくりと話を聞き、問題解決に導く必要があると語ります。そして最後に「臨床心理学は心理的な苦しみや悩み、不安を感じている人にどう援助するかを考える学問です」とまとめました。

4. 発達心理学/蒲谷槙介先生

 人々の人生を研究対象とし、幼少期の経験や取り巻く環境が個人の発達にどのような影響を及ぼすかを探究する発達心理学。今回、蒲谷槙介先生は胎児期や乳幼児期の発達を中心に解説しました。人は3歳以前の記憶を思い出せない人がほとんどなため、研究者は実際に「現役」の乳幼児を対象に実験や観察をする必要があります。蒲谷先生は、はやくも胎児の頃から「うれしい」「嫌だ」といった感情が顔に表れていることや、生後10か月もすれば他人への共感性が生じていることを示唆する研究結果を紹介。物心がつくまでの発達の過程に、受講生たちは興味津々といった様子を見せました。最後に蒲谷先生は「子どもが、いつ何ができるかを研究することで、家庭だけでなく国家規模でも子育てや教育方法に示唆を与えることができます」と、発達心理学の役割を伝えて締めくくりました。

5. 生理・認知心理学/丹藤克也先生

 認知心理学は情報処理の観点から人の心を研究する心理学で、丹藤克也先生は記憶やコミュニケーション、意識などの「誤り」から人の行動について分析しています。今回は認知心理学を体験的に学んでもらうため、動画や文章を活用したデモンストレーションを用意。丹藤先生から、「動画を見て、白シャツを着たグループがボールをパスした回数を数えてください」という指示を受けた受講生たちは集中してパスの回数を数えます。結果的に正しくパスの回数を数えられた人は多かったですが、本質はそこではありませんでした。実は動画内で、ゴリラの格好をした人が通り過ぎるという異様な事態が起きていたのですが、その違和感に気づいていた人は約2割しかおらず、ほとんどの人は数えるのに夢中でゴリラを認知していなかったのです。この結果について「人は集中すると視野が狭くなるため、歩きスマホには十分に注意してください」と話し、受講生は歩きスマホの危険性や認知の重要性について身をもって実感したことでしょう。

6. 心理学部の紹介/吉崎一人先生

 本講座の最後には、吉崎一人先生が本学の心理学部が目指す人間像や、目標達成のために必要なスキルなどについて紹介しました。心理学部では「人間の行動と心についての理解力」「実証的分析力・論理的思考力」「問題発見・解決力」「コミュニケーション力」の4つの力の習得を目標としています。これら4つの力を身に付けるために、カリキュラムが工夫されています。最終目標である卒業研究の作成のために、心理学の深い知識を学びながら、さまざまな研究方法を習得するカリキュラムとなっていることが説明されました。最後に本学の心理学部の強みとして「専任スタッフが多く、カバーする心理学領域が広いこと」「カリキュラムが充実していること」「施設や研究用器具が豊富であること」を伝え、6限に及ぶ本講座を締めくくりました。

 このスタートアップ心理学講座を通して受講生は、これまで曖昧だった心理学という学問の実態を捉え、「愛知淑徳大学の心理学部で学ぶ未来」について、より明確なイメージを持てるようになったのではないでしょうか。

 本学では現役生はもちろん、卒業生や未来の愛知淑徳大学の学生とのつながりを大切にし、彼らの活動や学びをサポートしていきます。