追究

2024年03月25日

「国文学演習Ⅱ(2)中古b」卒業論文報告会

2024年2月8日(木)長久手キャンパス1612・1616教室

平安時代の文学に関する卒業論文を発表。
個々の視点と鋭い考察が光る秀作がそろいました。

 文学部 国文学科では、日本の文学作品の分析・読解を通じて文章表現力や論理的思考力を鍛え、課題の発見から解決まで自分で導き出せる人材育成をめざしています。なかでも3年次から取り組む「国文学演習」(ゼミナール)では、学生たちはひとつの作品にじっくりと向き合い、様々な文献を調査したり、学生同士が作品について論じあうことで理解を深め合ったりしています。
 2024年2月8日(木)には、平安時代の作品を研究している中古文学ゼミ(外山敦子先生)の卒業論文報告会が開催されました。同じゼミに所属する3年生や来年度から所属する予定の2年生の前で、計17名の4年生が卒業論文の内容を発表。作中の表現や登場人物の関係性などから疑問点を見出し、その考察結果を報告しました。

 中古文学で最も有名な『源氏物語』は卒論の対象としても人気があり、テーマも様々でした。例えば登場人物の間で交わされる「手紙」に着目した研究。『源氏物語』は手紙の内容だけでなく、手紙に用いられた料紙の種類や色、折枝、筆跡に至るまで細かく描かれます。ある学生は、「鈍色」(にびいろ:灰色全般を指す)という紙の色に注目。鈍色の濃淡や色目の違いが送り手の微妙な心の動きを表したり、相手への強い意思表示として機能したりすることを明らかにしました。
 外山先生は「“鈍色”を選んだセンスは秀逸。論文としてのクオリティも高い」と評価しました。

 平安時代の作品そのものではなく、その作品を原作として二次創作された作品を取り上げた学生もいます。例えば、容姿が瓜二つの男君と女君がそれぞれ男装・女装して入れ替わる『とりかへばや物語』を原作とする1980年代の少女小説『ざ・ちぇんじ』。キャラクター性や物語の展開について原作と比較して、『ざ・ちぇんじ』の主題を明らかにしようと研究を進めたそうです。この作品には、原作にはないオリジナルストーリーが加えられており、原作よりもハッピーエンドとなっています。その理由について「原作を踏襲しつつも、初恋の成就という展開に変更されることで、想定読者である10代の少女が楽しめるようにした」と考察。“80年代の少女の考える幸せのひとつの形”を『とりかへばや物語』をベースとして表現することが、本作品の主題であると結論づけています。

 4年生の発表終了後は、外山先生が一人ひとりの論文の良い点を講評。視点の面白さや先行研究との違い、何重にも検証を試みた点など、個々の努力や考え方を高く評価しました。なかには外山先生も驚くほどの質の高い卒業論文を制作した学生もいたようです。最後に外山先生は「皆さんの論文は私が学生時代に書いた卒業論文より質量ともに勝っています。胸を張って卒業証書を受け取ってください」と温かいエールを送って、2023年度の卒業論文報告会を締めくくりました。

 およそ1年をかけてこれまでの学修の集大成となる卒業論文を手がけた学生たち。テーマ選びや膨大な資料の分析など、大変だったこともありましたが、この経験を通じて身につけた思考力や分析力などは、これからの人生において大きな武器となるでしょう。