追究

2017年02月21日

文学部主催 中古文学会50周年記念連携企画講演会 「晶子源氏」誕生秘話

文学部主催 中古文学会50周年記念連携企画講演会 「晶子源氏」誕生秘話

2016年12月9日(金) 長久手キャンパス741教室

源氏物語の現代語訳にかける晶子の思いを
講演会を通じ貴重な資料から読み解きました。

 12月9日(金)、愛知淑徳大学の文学部が中古文学会と連携し特別講演会を実施しました。中古文学会とは、主に平安時代の日本文学に関する学術研究団体のことで、2016年で創立50周年を迎えました。その節目の年を祝うため開催された今回の特別講演。古典学者であり、跡見学園女子大学の名誉教授でもある神野藤昭夫先生にご登壇いただき、「晶子源氏」について語っていただきました。

文学部主催 中古文学会50周年記念連携企画講演会 「晶子源氏」誕生秘話

文学部主催 中古文学会50周年記念連携企画講演会 「晶子源氏」誕生秘話

 今回の講演会の主人公は、『みだれ髪』の作者として知られ、与謝野鉄幹の妻である、与謝野晶子。彼女が取り組んだ3つの『源氏物語』の現代語訳について、神野藤先生は当時の初版本や与謝野晶子直筆の原稿、手紙などの資料を次々とスクリーンに映し出し、時代を追って与謝野晶子が源氏物語にかける熱い思いを紐解きました。
 与謝野晶子が初めて翻訳をしたのが、33歳から35歳の時。「この間、2人の子どもを出産し、さらに夫・鉄幹を追ってパリへ赴いたことから、驚異的なスピードで書き上げたことが伺えます」と語った神野藤先生。原文に対して、どれぐらいの文字量で訳されているかを示す「訳出率」をグラフ化した資料をスクリーンに表示しながら、原文との違いを指摘。一回目の翻訳『新訳源氏物語』は、与謝野晶子による語り直しであり、幅広い読者を獲得するきっかけとなったと位置づけました。

文学部主催 中古文学会50周年記念連携企画講演会 「晶子源氏」誕生秘話

文学部主催 中古文学会50周年記念連携企画講演会 「晶子源氏」誕生秘話

 2回目の翻訳は、与謝野晶子の執筆の遅れや関東大震災の影響で幻に終わります。晩年になって書かれたのが、その後、谷崎潤一郎などの源氏物語訳者に多大なる影響を与えたと言われる『新新訳源氏物語』。夫の死で執筆がとまり、一度は発行も危ぶまれましたが、最晩年、残された寿命と競うかのごとく、最後の翻訳本を書き終えた与謝野晶子。出版記念パーティーで身につけた着物や原稿の下書きなどを示しながら、神野藤先生は「与謝野晶子にとって源氏物語は命をかけて向き合った物語だった」と講演会を締めくくりました。
 貴重な資料の数々に触れ、与謝野晶子の人物像や彼女の人生を具体的に感じることができた講演会を通じて、学生たちはあらためて文学を読み解くおもしろさに気づけたことでしょう。