追究

2014年09月30日

メディアプロデュース学部 メディアプロデュース学科 都市環境デザイン専修 内藤廣展「アタマの現場」愛知巡回展

内藤廣展「アタマの現場」愛知巡回展

平成26年7月26日(土)~8月10日(日) 長久手キャンパス 8号棟5階 プレゼンテーションルーム

都市環境デザイン専修の学生が、展覧会づくりに力を注ぎました。

 都市環境デザイン専修では、毎年、学生が主体となって展覧会の企画・会場づくりに取り組んでいます。15回目となる今年は、建築とインテリアデザインの専門ギャラリー「TOTOギャラリー・間」(東京・乃木坂)で開催された内藤廣氏の展覧会を「愛知巡回展」として再構成。7月26日(土)~8月10日(日)までの16日間、学内で内藤廣展「アタマの現場」が開催されました。

 空間に新しい価値を生み出し続けている内藤氏のご協力のもと、会場プランの考案、施工、宣伝活動、展覧会の運営などに3年生32人が力を注ぎました。学生たちは展覧会のタイトル・「アタマの現場」を、「建築に対する思い」そして、「アイデアが生まれるまでの思考回路」と解釈し、表現。会場のいたるところに著書から引用した内藤氏の言葉を散りばめ、また、内藤氏がアイデアを固めるためにつくったいくつものスタディ模型を展示することで、内藤氏が建築を考え、製作に至る過程を来場者に伝えました。会期中は、建築業界の方や建築を学ぶ学生たち、オープンキャンパスに来た高校生が来場。さらに内藤氏も訪れ、「黒をベースにした会場は模型がよく映えて素敵です。家具の高さなど、細かいところまで工夫が感じられる展覧会ですね」と、学生たちの頑張りにあたたかな称賛を送っていました。ここでは、その建築展がどのようにつくり上げられたのか、ダイジェストで紹介します。

1st Stage 事前研修

 建築展を始めるにあたり、TOTOギャラリー・間でおこなわれた「内藤廣展 アタマの現場」を一部の学生が観覧。内藤氏の事務所をコンセプトに構成された会場を見て、アイデアをふくらませました。また、展覧会と連動した本も熟読し、内藤氏の建築に対する考えを学びました。

2nd Stage 研究パネル発表会

 32人の学生たちが6つの班に分かれて、内藤氏の過去の作品を3作品ずつ研究・分析。「安曇野ちひろ美術館」「とらや京都一条店」などには実際に現地に出向き、建築への理解を深め、A1パネル1枚にまとめてプレゼンテーション。まとめたパネルは、会期中、会場横の通路に掲示しました。

3rd Stage 会場プラン考案

 研究パネルの内容を元にチームごとに会場プランの考案。模型制作もおこない、コンペティション形式で各班の会場プランをプレゼンテーションしました。学生たちは先生方の厳しい指摘やアドバイスをしっかり受け止め、アイデアを集約するために話し合いを重ねていきました。

4th Stage 全体像の決定

 会場プランコンペティションを通して、最終的に残ったのは、内藤氏の思考回路を表現する案と、内藤氏の建築物で使われた構造体を軸に会場を構成する案。より自分たちの考えが来場者に伝わる空間にするために何度も話し合いを重ね、6月末に会場プランの全体像を決定しました。

5th Stage 設営準備

 会場に設置される家具を制作する班、水盤の上にそびえ立つメインオブジェ「言葉の壁」を制作する班、模型の展示スペースに暗幕を設置し、内藤氏の言葉をデコレーションする班、会場全体の骨組みをつくる班にメンバーを再構成。それぞれが最大限に力を発揮し、準備を進めました。

6th Stage 宣伝活動

 長久手キャンパス内で構内アプローチと連動した大型看板の取り付けやチラシの配布をおこない、展示会の開催をPR。また、ソーシャルメディアで準備の様子を細かくレポートするなど、学外のお客さまに向けた宣伝活動も積極的におこないました。

7th Stage 構内アプローチ

 内藤氏はあるブランドの赤ペンを愛用しており、ダイアグラムを描くときも、スケッチをするときも必ず同じペンを使用します。そのことから発想したのが、赤いラインで会場まで誘導する今回の構内アプローチです。

8th Stage 会場設営

 開催の1週間前、会場設営が本格的にスタート。会場に散りばめる内藤さんの言葉はピンセットで一つひとつ揺れる暗幕に張り付けてデコレーションしました。設営最終日に壁が倒れてしまうというアクシデントも乗り越え、最後に、発想の中心となった静岡県草薙総合運動場の模型をセッティングして、すべての会場設営を終えました。

9th Stage

 ついに展覧会の開催を迎えた7月26日(土)。学生たちは達成感に満ちあふれた笑顔を浮かべ、約4ヵ月間の努力を互いに称え合いました。この日は、オープンキャンパスも開催されており、多くの高校生や保護者の方が来場。「この展覧会、大学生がつくったの?」と驚きの声を上げていました。さらに7月30日(水)には関連イベントとして内藤氏による講演会も開催。直前に会場を見学した内藤氏は「自分たちの展覧会ととらえて、向き合ってくれた気持ちが伝わってきました」と最大級の称賛を送り、その後、座談会形式で学生たちと建築について意見交換をしました。

見どころPICKUP

メインオブジェ「言葉の壁」

 TOTOギャラリー・間でおこなわれた展覧会でも飾られた「言葉の壁」を愛知淑徳大学 長久手キャンパス内に再現しました。吹き抜けスペースの床に水盤を設置し、言葉の壁が映り込むよう工夫し、内藤氏のアイデアが際限なく広がってく様子を表現。内藤氏のアタマの中を象徴するオブジェになりました。

展示スペース

 例年の倍以上の数がある模型をどう見せるのかが、今展覧会の最大の課題。内藤氏の記した「闇は想像力を引き立てる」という文章から、展示スペースの方向性が決まりました。思考回路をなぞるかのような、スタディ模型の数々を見やすく展示するために、ひな壇の高さや配置にもこだわりました。

資料観覧ブース

 「アタマの現場」というタイトルを象徴するアイテムが、内藤氏が実際に使用した図面やパソコンで閲覧できる図面データ。「居心地のいい空間を提供することで、来場者が少し足を止めてゆっくりと閲覧するきっかけになれば」と、例年の展覧会では見かけなかった、観覧ブースを設置しました。

Interview

32人の仲間と創りあげた展覧会。
大きな自信となりました。

 内藤廣さんは、調べれば調べるほど「未知の人」。どうやって空間づくりをするか試行錯誤を繰り返す中で、「整理整頓されていない頭の状態」をすべて見せるのも、ひとつの方法としてありなのではないかとメンバーの意見がまとまってきた時に、ようやく道が見えてきました。課題は、内藤さんの思考回路を再現したかのような膨大な模型をどうやって見せるかどうか。TOTOギャラリー・間は白をベースに会場づくりをおこなっていましたが、私たちはあえて黒い空間をつくり、真っ白な模型をより目立たせるように工夫しました。ライティングや動線など、どうやったら模型がより良く見えるかを追求し続け、ひとつの形として完成できたことは私たちの32人の仲間、全員の誇りです。プロの建築家の方の展覧会を創りあげたことで、あらためて建築の可能性を感じることができました。仲間とともに経験したことを胸に、これからの学修や研究、卒業後の進路実現に挑んでいきます。