卒業プロジェクト学外展の様子

 

第16期生による「2018卒業プロジェクト展」を名古屋栄の市民ギャラリー栄で6日間開催しました。
建築関係の方から都市環境の卒業生、毎年展示を楽しみにしていただいている一般の方など600名近くのご来場を賜りました。

 

会場の様子。今年は設計制作16作品、論文8編を展示しました。


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ちいさなお客様

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2月24日には、第二回学外展の審査会を開催しました。学外展審査会は、学内審査とは別の評価軸を用いて優秀作品を審査・表彰することを目的としています。

今年は建築家の久野紀光氏と末光弘和氏に審査いただきました。実はおふたり、昨年の3年次設計演習「空間設計Ⅳ」において彼らの作品を一度審査頂いています。空間設計Ⅳ 最終講評会(2016)

 

1年という時を経て、いかに成長できたのか。集大成となる作品を講評頂きました。

 

 

まずは1人5分間のプレゼンテーションを行います。5分は長いか短いか。制限時間をどのように使ってプレゼンするのか。テンポ良く説明することが求められます。

 

しかしながら…時間の大半を使って建築の説明にたどり着けない学生がほとんど。むしろ建築の説明を省いているのかのような印象さえ受ける。意図的なのか戦略なのか。プレゼンテーションに挑む姿勢に喝が入ります。

卒業設計では、個人が概ね0からプログラムを組み立てます。提案の土台となるテーマを発見し、提案の道筋を地図のように描き、完成した地図の上に空間を構築します。それゆえ、全てのプロセスが重要なファクターであり、説明の一つでも切り捨てる事は大変難しい。と、作者は思ってしまいがちですが、そんなことはありません。

プレゼンテーションとは、伝えることです。共感や反感、様々な意見を引き出すことこそが大切です。そのためには、建築の分野ではやはり提案した空間に多くを語らせるべきなのです。

 

審査員のコメントをメモしながら、発表は続きます…

 

 

開始からおよそ1時間半、全員のプレゼンテーションが終了し、もう一度プレゼンテーションを行う学生を選出します。無事通過する作品、救われて通過する作品、合計5作品が選出されました。

 

no.14 鶴久 奈緒美「和紙と光のアート〜私が感じる枕草子の春夏秋冬〜」
清少納言の枕草子を舞台に、作者が感じた風景を春夏秋冬4つのテーマで照明を制作。たった一つ、唯一無二の作品であるが、素材に製品である既存の和紙を選択している点が残念。水紋を表現するため和紙を自ら漉くなど一歩踏み込んだ作品になるとより良かったとの評価。

 

 

no.11 磯部 沙帆「始まりの駅 ”山車、継承意識への一歩”」
愛知県津島市の600年余り続く尾張津島天王祭を若い世代に引き継ぐための山車に関連した施設を山車の通過ルートである津島神社〜津島駅間の”始まり”に位置する津島駅に設計した。一見ディティールまでこだわって設計しているようだが、模型に表現がなされていない。模型のスケールも提案内容に合っていないとの評価。

 

 

no.5 立松 まゆ子「絡まり、織りなす」
旧公団の大規模団地の残るエリアを敷地に、家族の単位を分解して捉え、シェアして暮らすことを目指した集合住宅。共有部である中庭の在り方に質問が集中した。中庭全てに屋根が架かっている点は、実際に日照などを考えるとマイナス要素にしか見えず、パースや模型で表現されているような楽しげな空間にはなっていないとの指摘。

 

 

no.7 丸山 郁「壁間の棲家」
新しい賃貸住宅のあり方を模索した集合住宅。ランダムに見えてあるルールを持った斜めの壁。その壁に囲われた部分に居住者が自由に屋根を架けるシステムを構築し、住民の有無により室内になったり屋外になったりを代謝していく。システムの矛盾が一部垣間見えること、システムの固さが逆に自由度や許容範囲を狭めており、自ら作り上げたシステムを壊すほどの勇気が必要だったのではと評された。

 

no.8 本野 晴也「終末に生きる」
日本三大ドヤ街である大阪西成地区。多くの日雇い労働者が集まるこの地に、日雇い労働者のための居住空間を設計した案。アイデアやプロセスはともかく、建築に現れていない。設計をできていない。去年(3年生)の設計課題で見た繊細な設計はどこへ行ってしまった?と厳しくもありがたい批評がつづく。卒業設計は卒業後もやり直すもの。多くのアドバイスを頂いた。

 

 

5名の発表が終了し、審査の結果、丸山さんの「壁間の棲家」が優秀賞に選ばれました。逆に言えば、1人しか選ばれなかったという結果に。

もうひとつ飛び越えてくる案はなく、さらにはその一歩手前の部分で手が止まった印象。各自、案に対する強い愛情は感じるが、いよいよ設計が面白くなりだすという局面で着地してしまった。今後どんな道に進むにしても、建築で学んだことは必ず生きてくると、久野先生、末光先生に叱咤激励いただきました。

 

 

講評会のあとは、おふたりに近作についてミニレクチャーをしていただきました。
雑誌で既に発表されているプロジェクトを直接聴くことができ、掲載されているテキストより何倍も膨らんだ情報量のレクチャーをみな熱心に聴き入り、あっという間に時間が過ぎていきました。
久野先生、末光先生、誠にありがとうございました。

 

 

これにて1年間かけて取り組んだ卒業プロジェクトは終了です。4年生は就職・進学をし、新たな一歩を踏み出します。

 

よく、卒業制作は一生覚えているものだといいます。結果がどうあれ、1年間悩み苦しみ付合った膨大な時間や思考はそう簡単に消えません。きっと彼らも今後、卒業制作のことを振り返る機会がふと巡るでしょう。

そのとき、彼らが何を思うのか。

何か進んだり停まったりするきっかけになるのであれば、嬉しいことです。