メディアプロデュース専攻って何を学べるの?

ー高校生にもわかりやすく教えてもらいました!(前編)ー

 

 

はじめまして!取材チーム4年の高谷です。
皆さんはメディアプロデュース専攻(以下メディプロ)で何を学べるのか、説明できますか?そう尋ねられると、実際に所属している学生でも回答に困ることがあります。私たち取材チームのメンバーもそうでしたので、メディプロに興味を持っている高校生やメディプロ新入生の皆さんなら、尚更でしょう。それなら詳しい方に聞いてみよう!ということで、メディプロに所属しているお二人の先生方に取材させていただきました。
今回はその前編と題して、メディプロの主任教授である村上泰介先生にお話を伺った内容をお伝えします。本題以外にも、今後メディアについて学ぶうえで必要なことをたくさん教えてくださいました。想定していた以上に濃密な内容になっています。ぜひご覧ください!

 

今回取材させていただいた流れは、以下の通りです。

・メディプロでは何を学べる?

・メディプロと専門学校の違い&4年生大学としての魅力とは?

・入学する前にやっておくと良いこと

・村上先生おすすめの一冊

・高校生へ村上先生からメッセージ

では、本編へどうぞ!

 

ーー「メディプロで何を学べますか?」と高校生に聞かれたら、いつもどのように回答されていますか?

村上先生(以下、同) 端的に「コミュニケーション」と言っています。でもそれは単なる「コミュニケーション」ではなくて、正式には「より高度なコミュニケーション能力」と言っているんですけど。
少し詳しく言うと、メディアを駆使することとか、メディプロの学生が学んでいるような写真や映像などのいろんなビジュアルも含めて表現することで、複雑な世の中で伝わらなかったようなことをきちんと伝えられるような「コミュニケーション能力」が身につきますよってことですね。

 

ーーなるほど、「より高度なコミュニケーション」というのは、ただ作品を作る、というよりも、どのような目的で届けたいかまでを深く考える、ということですか?

そうそう、そうですね。メディプロの場合、作品を作っている人たちばかりではないので。それに、専攻の名前が「プロデュース」ってなってますから。
だから、何か作品を作って公開したとして、その評価がどうかは気にしません、ということではないんです。こういうメッセージを伝えたくて相手に伝えた、その結果相手は心を動かされて、次の行動につながってくれる、という一連の流れまでちゃんと考えられるような人が育ってくれるといいな、と思ってます。

 

 

ーー専門学校との違いや、4年制大学の愛知淑徳大学ならではのポイントはなんでしょう?

多くの場合、専門学校は2年制なので時間に余裕がなく大変で、入学して夏休みが来たらもう就活のことを考えなきゃいけない。慌ただしいですよね。なので、どうしても技術に特化した教え方にする必要がある。もちろんそれが目的だと思うんですけど。
でも本学のメディプロの場合は、社会学をベースにしているので、今の社会で何が必要とされているのかということもちゃんと4年間の中で理解した上で、社会に散らばっている人たちをどうつないでいくのかとか、そこにどんなメディアが必要なのかとかを考えてもらいたいな、と思うんです。そこは多分大きく違いますね。

 

ーー入学する前にやっておくべきことはありますか?

いや〜・・・国語かな・・・正直に言うと(笑)

 

ーーやはり、それは論文を読める力、みたいなことですか?

いや! ものを作る上でね、国語力って大事だと思うんです。特に今の世の中は。
メディプロの学生が使う道具ってほとんどソフトウェアじゃないですか。その使い方ってマニュアルに全部書いてあるんですよね。読めばできるはずなんです(笑)。順番に読んで書いてあることをそのまま素直に理解する力っていうのが十分に養われてないと使いこなすことが難しいので、案外国語かな(笑)

 

ーーそれは意外かもしれませんね。メディアを勉強していると、デザイン力や発信力に意識が向きがちな中で。

デザイン力も発信力もある程度はどこかセンスが必要なんですけど、いいところまでは絶対、理論的な力で太刀打ちできると思うんですよね。(ここでの本質は)メッセージを伝えるということですから、わかりやすいデザインにするためにどういう手順を踏めばいいのかとかは、やはり論理力とかにかかってくる気がします。
広い意味で国語力を磨いてほしいなと思うので、いろんな本を読んでおいてもらうといいかな。

 

ーーでは、ちょうど本のお話がありましたので、おすすめの本をお聞きしたいです。

高校生には難しいかもしれないんですけど、イギリスのアーティストであるジェームズ・ブライドルが書いた『ニュー・ダーク・エイジ』という本ですね。

ジェームズ・ブライドル 著、久保田晃弘 訳、『ニュー・ダーク・エイジ テクノロジーと未来についての10の考察』、NTT出版、2018年(原著も2018年)

 

ーーどのような本なんですか?

ネットテクノロジーとか人工知能に繋がるようなテクノロジーと社会について書かれた本です。例えば、情報と呼ばれるものは実態がないようだけれどもあるんだ、という話をしてるんです。それは何かっていうと、ケーブルがないとネット上の情報って送受信できないし、電波を流さないと飛ばないし、ケーブルや電波で情報を扱うには電気を使った機械が必要ですよね。その機械の一つで情報を蓄積しているコンピューターサーバーは、アイスランドなどの寒い国のデータセンターにたくさん置かれていて、すごい熱を発するんです。すると、みんながYouTubeを1分見るだけでもかなりの氷が溶けるんですよ。で、それが進行すると水面が上がって、地球は温暖化していくんです。
環境に良い活動として、大半の人はゴミを捨てないとか、マイバッグを持つとかを思い浮かべると思うんですけど、この本には、そんなことよりYouTubeを見るのをやめた方がよっぽど地球環境を守るために役立つよ、みたいなことが書いてあるんです!
で、衝撃だったのは、僕も皆さんもメディアを作っているわけじゃないですか。見てほしいですよね、作ったら。でもそれをやると地球環境は侵されていくんですよ。この人(著者)自身もメディアに関係するアーティストなんですけど、「でもそこから目を逸らしちゃいけないよ」みたいなことを書いてくれていて。そういう意味で、これからメディアを学ぶ高校生の皆さんにちょっとした毒を込めておすすめします(笑)

 

ーー確かに、エコを啓蒙しているようで全然できてなかったりするかもしれない、と反省的に読めるというか・・・

うん、そうですよね。僕らはね、インフラを作る側ではなくて、そこに載せる情報を作る側なので、直接的には何もできないんですけど。そういう矛盾を抱えて自分たちの仕事は動いているっていうのはどこか覚えておいた方がいいかなと思うんですよね。
もちろん知ったからといって、何もアクションを起こさないという方がまずいので、知っててもなお、やっぱりどうにかしなきゃなっていうのは考えなきゃいけないかな〜とは思いますけど。

 

ーーそうなると、作る作品1つ1つに責任が持てますよね。

そうそう、そうですね。だからダダ流しの変なものは作らず(笑)、環境破壊に繋がるんだから見てもらう以上価値あるものを作ろうって思ってくれるといいな〜。はい、そういう本です。

 

ーーありがとうございます。最後に、高校生に向けてメッセージをお願いします。

これからの社会で、コミュニケーションって本当に重要なんです。というのは、社会ってすごく狭くなったというか、グローバル化していろんな国の人が一緒になったり、SNSとかを通じて誰もが情報発信できるようになったりしているので、これまでは耳を塞がれていたような声がみんなに届くようになってきたんです。ただ、その分フェイクニュースだとか、誹謗中傷など、ある人の強い恨みが社会を大きく動かしてしまったりとか、いろんな摩擦が起きてますよね。
(そのような状況下)でも、コミュニケーションの力で何か良くしていかないと、人間が滅びてしまうというか、そのぐらい深刻には僕も思っていて。何ていうのかな・・・最終的にメディアをいい方向に導いてくれるような人が育ってくれるといいなと思いますし、それは多分いち市民としてちょっとTwitterを上手に使うとか、そんなレベルでいいと思うんですよ。
例えば、みんなが間違った方向に行きそうだったら正しい道へ導いてあげるとか、草の根のレベルというか、職業としてじゃなくてもできるようになるっていうのはいいことだと思うし、そういう人が増えた方が良くないですか?
あ、でももちろんそれは深刻に伝えても仕方がないので、わかりやすく、ある意味楽しかったり、ハッピーになれるように伝えてほしいんですけど。だから高校生の皆さんの中でね、そういう思いに共感してもらえるんだったら、ぜひメディプロに来てほしいな、と思います。

 

ーーはい、ありがとうございました!

 


ー最後にー

最後まで読んでくださりありがとうございました!
皆さんにとって実になる記事になっていたでしょうか?この記事が皆さんの心を動かし、何か行動を起こす一助になれば幸いです。
ちなみに、私はさっそく、今回おすすめしていただいた本を読んで国語力を高めようと思います!
次号は後編! 同じテーマで松井広志先生にお話を伺いに行きます。村上先生とは専門の学問領域が異なっているので、また新たな視点のお話しを伺えるはずです。次号もお楽しみに!

 

取材日:2023年5月25日(木)
場所:アトリエ(アネックス)

[今回の取材担当] インタビュー / 加藤百華(4年生)
写真撮影&記事 / 高谷芽生(4年生)
写真補正 / 長谷川果穂(3年生)
※学年は2023年度のもの。