躍動

2026年03月16日

すべての子どもたちが、未来に希望をもてる社会に。 無料の学習支援教室を主宰する学生の試み。

vol.117

心理学部 心理学科4年

小中学生を対象にした、無料の学習支援教室を運営

 地元の知立市で、小中学生向けに「無料塾やま」という学習支援教室を運営しています。公民館を借りて、毎週土曜の午前中にスタッフが子どもたちの宿題を見るなどして、学校の勉強のサポートをします。スタッフは高校生から大学生、社会人、高齢の方まで幅広く、ボランティアで協力してくれています。立ち上げから約1年半、今では近所に住む小中学生40名ほどが登録し、毎週10名ほどの子どもたちが教室にやってきます。

 季節ごとにイベントも開催していて、夏休みの宿題のポスターをみんなで書いたり、冬は松ぼっくりでクリスマスツリーを作ったり、春には愛知教育大学附属高校の学生とコラボして科学実験教室をしたり。イベントをすることは、「無料塾やま」の広報活動にもなっています。

子どもたちが安心して勉強できる場所をつくりたい

 「無料塾やま」を立ち上げたのは、東京・八王子で無料塾を開いている小宮位之さんの著書をたまたま読んだことがきっかけです。そこには、著者が困窮した幼少期を過ごし、教育格差に問題意識をもった経験から無料塾を開いたことや、どんな境遇であっても頑張れば報われるという希望があることがいかに大切なのかが書かれていました。

 私自身、定時制高校出身で、家庭の事情などに翻弄される同級生をたくさん見てきました。途中で学校に来なくなる人も多く、卒業するのは半数ほど。そういった環境が当たり前だったので、大学に入って驚きました。落ち着いて学べる環境が目の前に用意されていて、多くの学生がそれを享受している。教育環境の格差に壁を感じ、何か行動を起こさずにはいられませんでした。小宮さんの著書には「無料塾に興味があれば会いにきて」と書いてあり、私は本を読んだ数週間後に友人と八王子まで話を聞きに行き、無料塾を開くことにしました。

学校の成績よりも大切なこと。「無料塾やま」の活動意義

 立ち上げの際は、やりたいことを周囲に理解してもらうのに苦労しました。多方面の方に協力してもらう必要がありましたが、自分の想いをストレートに表現しすぎてメッセージが過激に見えてしまったのだと思います。伝え方を試行錯誤し、塾の活動や自分のことを知ってもらうことで、支援者が徐々に増えていきました。

 活動方針も少しずつ変化しています。最初は子どもたちのテストの点数を上げることを目指していましたが、今は一人ひとりに寄り添いながら、ゆるく活動しています。成績を上げることより、勉強が苦手な子でも学ぶことが楽しいと感じたり、勉強することで人や社会とつながり、世界が広がったりすることの方が大事だからです。集中して勉強できる場所を求めている子、学校の勉強についていけず困っている子、経済的状況などで学習塾に通えない子、外からは見えない困りごとを抱えている子など参加者はさまざまですが、私たちは小中学生なら誰でもどうぞというスタンスで、こちらから詮索はしません。どんな子にとっても、安心して勉強できる居場所になればと思っています。

ゼミの学びを現場で活かし、大学院では教育支援のあり方を探求

 大学では清瀧ゼミで、子どものこころや心理臨床について学んでいます。無料塾で生身の子どもたちと向き合う経験と大学での学びが双方に作用していると感じています。また、清瀧先生がつくる学びの場の雰囲気がとてもいいので、先生がどうやって場をつくっているのか観察して学んでいます。

 この春大学を卒業し、大学院に進学します。大学院では心理学から少し離れて、教育や福祉について広い枠組みで学びたいと思っています。関西に行くことになるので、今までにように塾に顔を出すことは難しくなりますが、なるべく帰ってきますし、今では仲間や支援者がたくさんいるので、これまで通り運営していきます。塾の活動拠点を増やし、継続的な活動のためにNPO法人化することも検討しています。大学院で学びを深め、自分自身の活動をただ肯定するのではなく、役割を俯瞰して見られるようになることが誠実な姿勢ではないかと思っています。

心理学部のHPでも西さんが紹介されています。ぜひご覧ください。

■心理学科の学生が参加しているボランティア活動がメディアに紹介されました >