数々の体験を積みながら、幅広い視野を持つ建築士に。
高校時代は野球一筋の毎日でした。建築やインテリアに興味があるくらいで「これがやりたい」と具体的な将来像を描いていたわけではありません。そんな僕が現代社会学部に入学したのは、フィールドスタディやメディアプロデュース、都市環境デザインと幅広く学べることに魅力を感じたからです。
入学後、都市環境デザインが一番面白そうだという軽い感じで授業を選択していたのですが、いろいろ学んでいく中で、建築の魅力にぐいぐいと引き込まれていきました。お気に入りの授業は空間設計です。周辺環境をはじめあらゆる条件を考慮しながら、施設の設計を行うのですが、ただ設計をするだけではなく、いろいろな要素を考えながらコンセプトを練り上げていく。レポートのまとめ方はもちろん、プレゼンテーションの仕方など、多くのことを学ぶことができました。
今では、一級建築士が僕の目標です。大学での学びはもちろんのこと、大手建築設計事務所でのアルバイトや海外旅行など、様々な体験を積みながら、幅広い視野を持つ建築士を目指しています。
「街の真ん中にストリートチルドレンの学校を」
ベトナムとカンボジアの現地調査から導き出した、卒業制作のコンセプト。
旅行好きな僕がベトナムを旅行したことが、卒業制作のヒントになりました。ベトナムはインドシナ半島東岸に沿って南北に伸びる細長い国です。最南端にあるベトナム最大の商業都市のホーチミンから、中部の都市・フエまでバスで北上したのですが、そこで目の当たりにしたのは、貧しいストリートチルドレンの姿でした。ベトナムは今、国を挙げて近代化に取り組み、都市の整備を進めていますが、ストレートチルドレンは社会の片隅でひっそりと生活をしています。ストリートチルドレンの保護を目的に、NGOやNPOが組織を立ち上げ、活動を行っていますが、十分な成果を得るというところまでにはいたっていません。
大学を卒業してプロの建築士になり、多少ゆとりを持つようになったら、貧しい人々に対して、自分の技術で何かを提供したいと漠然と考えていましたから、卒業制作では、ストリートチルドレンのための公共施設をテーマに取り上げようと決めました。大好きな建築と海外旅行が、卒業制作という学生時代の集大成で一致したのです。
建築を構想するためには、現地調査が不可欠です。そこで僕は、コミュニティ・コラボレーションセンター(CCC)の紹介で、NPO主催のベトナムとカンボジアへのスタディ・ツアーに参加しました。子どもたちや障害者の福祉施設を見学し、実際に子どもたちと遊んだり、食事をしたりしました。貧しさにも関らず、子どもたちは明るく元気でした。膝の上に乗ってきたり、サッカーを教えてもらったり(笑)。子どもたちは本当に可愛かったのですが、半面、福祉施設の運営は火の車です。募金や寄付が底をついているような状況でした。

「近代化を実現するためには、街の真ん中に子どもたちの学校を」。現地調査から僕が導き出した、卒業制作のコンセプトです。街の中心に学校を創り、次代を担う子どもたちをみんなで育てていけば、国は活性化するし、国のイメージアップにもつながるはずです。それが社会の中にあるべき公共施設の姿だと考えました。
みんなの協力で創りあげた大作が、トリプル受賞の快挙!
ベトナムは路上に活気があって、路上で食事をしたり、テレビをみんなで見たりと、人々のコミュニケーションの場所にもなっています。一方裏道では、洗い物をしたり、洗濯を干したりと、プライベートな温かい雰囲気に包まれています。
道が発達した国なんですね。卒業制作では、この道をコンセプトに、街の中央にメインストリートを走らせ、そこに学校とマーケット、公園を計画しました。
僕の言う学校とは、職業訓練校に近いイメージです。ストリートチルドレンは学校でモノづくりを学び、子どもたちの作品をマーケットで販売する。そのマーケットや公園には多くの人々が集い、憩う。そうした複合的な公共施設の中に、路上の賑やかさと裏道の温かさを再現したいと考えました。
卒業制作のタイトルは、「Hoc・The Market ベトナムが目指す新しい国のスタイル」です。この理想を公共施設という建築物で表現するために、全体模型、店舗の模型、プレゼンテーションシートの3つを作りました。
全体模型では、メインストリートの中に公園とマーケット、学校という公共複合施設を表現しました。メインストリートの中央にはゆるやかな丘を創り、街と自然の共生を意識しました。丘の中のほこらには学校とマーケットを創り、トンネルのような道でつなぎました。いわば、裏道のようなプライベートな空間です。こうした濃密な空間と公園というオープンな環境を一体化させることによって、ベトナムの路上と裏道を再現させたのです。
人とシルエットを背景に階段状にしつらえた模型は、マーケットの店舗です。並べてあるのは、子どもたちの作品です。といっても、僕がベトナムやカンボジアで買ってきたTシャツなどですが(笑)。飾っている写真は、福祉施設で一緒に遊んだ子どもたちの写真です。みんないい顔しているでしょう。
ほぼ半年間かけて創りあげた卒業制作ですが、先生の指導はもちろん、都市環境デザインの後輩たちにもずいぶん協力してもらいました。
大勢の人たちの力を借りた作品が、「せんだいデザインリーグ2008卒業設計日本一決定戦」で特別賞を、「第5回東海地区卒業設計合同展「dipcolle」」では金賞を、そして「2008年都市環境デザインコース卒業制作展」で優秀賞というトリプル受賞の栄誉に輝きました。みんなには感謝の気持ちでいっぱいです。
将来は、ストリートチルドレンのための公共施設を手がけたい。
卒業制作で僕の理想を表現しましたが、実際に建築をするためには、実現不可能なものであってはなりません。理想により過ぎてあまり現実から離れてもいけないし、かといって、条件や制約に縛られて現実的なものになりすぎてもいけない。そこが難しいところですが、今回は卒業制作ということもあり、より理想に近い形としました。
卒業したら建築士として道を歩いていくことになりますが、自分の世界観を持った空間づくりを目指したいですね。今はその世界観もぼんやりとしか見えていませんが、海外旅行などの体験を積み重ねて世界観を創りあげ、いずれはストリートチルドレンのための公共施設を手がけるような建築士になりたいと思っています。