突発性難聴の症状とは?初期症状セルフチェックと受診の目安を解説
突発性難聴は、ある日突然、片耳の聞こえが低下する病気です。難聴だけでなく、耳の詰まり感や耳鳴り、めまいを伴うこともあり、程度は人によって大きく異なります。回復は発症からの経過時間に左右されるとされ、気づいた時点での行動が重要になります。本記事では、症状の特徴と受診の目安を解説します。
監修
平山 肇愛知淑徳大学クリニック院長
約30年にわたり耳鼻咽喉科の診療に従事。大学病院で培った豊富な経験を活かし、聴覚障害やめまいをはじめ、幅広い症状や疾患に対応しています。 ■資格:日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会 耳鼻咽喉科専門医、日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会 補聴器相談医、日本めまい平衡医学会 めまい相談医
突発性難聴とは
「突発性難聴」という病名は知っていても、どのような状態を指すのかは分かりにくいものです。症状を正しく理解するための前提として、この病気の定義と、発症しやすい人の傾向を整理します。
突然・片耳・原因不明に起こる「感音難聴」
突発性難聴は、内耳から脳へ音を伝える経路に障害が起きて生じる「感音難聴」に分類されます。耳あかの詰まりや中耳炎のように、音の振動が内耳まで届かないことで起こる「伝音難聴」とは仕組みが異なります。診断にあたっては、次の3つがそろうことが主症状の要件とされています。
- 突然発症:発症した日時や、そのとき何をしていたかを説明できるほど急に起こる
- 高度感音難聴:内耳から聴神経にかけての障害による聞こえの低下
- 原因不明:原因がはっきりしている難聴は突発性難聴には含まれない
「突発性」という言葉には、「ある日突然起こる」と「原因が分からない」という2つの意味が含まれています。多くは片耳に起こり、両耳同時に起こることは極めてまれとされ、その場合は別の原因による難聴が検討されます。なお診断基準上は「高度感音難聴」と表現されますが、実際の聞こえの低下は軽度から高度まで幅があります。
どんな人に多い?(年代・発症数)
突発性難聴は子どもから高齢者まで、どの年代でも起こる可能性があります。ただし、発症しやすい層には一定の傾向が報告されています。
- 年代:50〜60歳代での発症が多いとされる
- 性別:男女差はほとんどないとされる
- 発症数:2012年の全国調査では人口10万人あたり年間およそ61人、全国で年間約8万人が発症すると推計
決してまれな病気ではなく、働き盛りの世代にも起こります。「疲れているだけ」と自己判断せず、聞こえの異変が続く場合は耳鼻咽喉科で確認することが大切です。
参考:急性高度難聴に関する調査研究|厚生労働科学研究成果データベース
突発性難聴の主な症状
突発性難聴の症状は「聞こえにくさ」だけではありません。耳の詰まり感や耳鳴りが先に気になり、あとから難聴に気づくケースもあります。ここでは、実際に現れやすい4つの症状を、感じ方の違いとあわせて解説します。
片耳が急に聞こえにくくなる(難聴)
最も中心となる症状が、突然の聞こえの低下です。前触れがなく起こるため、発症した日時をはっきり覚えている人も少なくありません。気づき方には次のようなパターンがあります。
- 朝目が覚めたときに、片方の耳の聞こえがおかしいと感じた
- 電話を受けたとき、いつもの耳では相手の声が聞き取れなかった
- テレビや会話の音量が、片側だけ遠くに感じる
聞こえの低下の程度はさまざまで、ほとんど聞こえなくなる場合もあれば、耳の詰まった感じだけを自覚する程度の場合もあります。低下が軽い場合は日常会話に必要な音が聞こえているため、難聴に気づくのが遅れやすい点に注意が必要です。
耳が詰まった感じがする(耳閉塞感)
「聞こえない」よりも先に、耳がふさがったような違和感で気づく人もいます。これは耳閉塞感と呼ばれる症状で、次のように表現されることが多いものです。
- 耳に水が入ったまま抜けないような感じ
- 飛行機や新幹線で耳が詰まったときのような感じ
- 耳全体に圧迫感がある
難聴の程度が軽い場合は、耳閉塞感や耳鳴りだけが自覚症状となることもあります。「耳抜きをすれば治るだろう」と様子を見てしまいがちですが、鼻をすする癖を続けると中耳が陰圧になり、鼓膜が奥に引き込まれた状態が続いて滲出性中耳炎や真珠腫性中耳炎など別のトラブルにつながる恐れがあります。詰まり感が半日以上続く場合は、自己流の対処を繰り返さず耳鼻咽喉科で確認してください。
参考:中耳炎|慶應義塾大学病院 医療・健康情報サイト KOMPAS
耳鳴り・音が響く・二重に聞こえる
難聴に前後して、音の聞こえ方そのものが変化することがあります。具体的には次のような症状です。
- 「キーン」「ザー」などの耳鳴りが続く
- 周囲の音が響く、エコーがかかったように聞こえる
- 音が二重に聞こえる、音程がずれて聞こえる
耳鳴りをきっかけに受診したところ、検査で突発性難聴と診断される例もあります。片耳だけに起こる耳鳴りや音のゆがみは、聞こえの低下のサインとして受け止めることが大切です。
参考:突発性難聴|順天堂大学医学部附属順天堂医院 耳鼻咽喉・頭頸科
めまい・吐き気を伴うこともある
内耳は聞こえだけでなく、体のバランスを保つ働きも担っています。そのため障害の及ぶ範囲によっては、次のような症状が加わることがあります。
- 周囲がぐるぐる回るようなめまい
- 吐き気や嘔吐
- ふらついてまっすぐ歩けない
めまいを伴う場合は聞こえの低下が高度なことが多く、経過が良くない傾向があると報告されています。強いめまいや嘔吐がある場合は様子を見ず、早めに医療機関を受診してください。
症状が似ている病気との違い
突然の聞こえにくさや耳閉塞感は、突発性難聴以外の病気でも起こります。似た症状でも治療方針や経過が異なるため、区別が必要です。ここでは特に紛らわしい3つの病気との違いを整理します。
急性低音障害型感音難聴との違い
急に発症し、耳が詰まった感じを伴う点は突発性難聴とよく似ています。大きな違いは、聞こえにくさが低い音の範囲に限られることです。次のような特徴があります。
- 低い音だけが聞こえにくく、会話は聞き取れることが多い
- 低い音の耳鳴りや、自分の声が響いて聞こえる(自声強聴)
- めまいを伴わないことが一般的
- 繰り返し起こりやすく、20〜40歳代の女性に多いとされる(近年は中高年の報告もある)
突発性難聴が原則として聞こえの改善・悪化を繰り返さないのに対し、こちらは再発しやすい点も異なります。どちらかは聴力検査で低音域に限った低下かどうかを確認して判断されます。
参考:急性感音難聴診療の手引き 2018年版(日本聴覚医学会 編)|金原出版
メニエール病との違い
メニエール病の中心となる症状は、繰り返すめまい発作です。難聴や耳鳴りを伴いますが、症状の出方に次のような違いがあります。
- 誘因なく起こるめまい発作を反復し、持続時間は10分程度から数時間程度
- めまい発作に伴って難聴・耳鳴り・耳閉塞感などの聴覚症状が変動する
- 発作に伴って吐き気・嘔吐が起こることがある
突発性難聴では聞こえの低下が繰り返し変動することはなく、めまいも通常は一度きりです。ただし初回の発作だけでは区別がつかない場合があり、その後の経過をみて診断が変わることもあります。
参考:めまい疾患の診断基準|日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会会報(J-STAGE)
聴神経腫瘍など見逃してはいけない病気
突然の難聴が、内耳ではなく聴神経の病変によって起きているケースもあります。代表的なものが聴神経腫瘍で、最初の症状が突発性難聴と見分けにくい形で現れることがあります。
- 突発的な感音難聴として発症することがある
- 難聴を繰り返す場合や、片側の耳鳴りが続く場合は、この可能性も検討される
- 診断にはMRIによる画像検査が用いられる
診療の手引きでも、聴神経腫瘍に伴う難聴との鑑別のためにMRI検査を行うことがすすめられています。症状だけで自己判断することは難しいため、片耳の異変が続くときは耳鼻咽喉科で検査を受けてください。
症状が出たらいつ受診すべき?
突発性難聴は、症状に気づいてからの行動が回復の見込みを左右するとされています。「様子を見よう」と判断した数日が、その後の聞こえに影響することもあります。ここでは受診のタイミングの目安を、緊急度別に整理します。
発症から1週間以内、遅くとも2週間以内が目安
治療は早く始めるほど改善が期待できるとされています。目安として押さえておきたいのは次の2点です。
- できれば発症から1週間以内:この時期の治療開始が望ましいとされる
- 遅くとも2週間以内:これを過ぎると予後が悪くなる可能性があるとされる
土日や連休をはさむと、この期間はあっという間に過ぎます。「週明けまで待とう」と考えず、平日の診療時間内であればその日のうちに受診してください。なお2週間を過ぎていても、受診そのものに意味がなくなるわけではありません。ほかの病気が隠れていないかを確認するためにも、耳鼻咽喉科で検査を受けることが大切です。
1か月を過ぎると聴力が固定しやすい
内耳には音を電気信号に変えて脳へ伝える「有毛細胞」があり、ヒトを含む哺乳類では一度障害されると自然に再生することはないと考えられています。そのため時間が経つほど回復は難しくなります。
- 発症から約1か月で聴力が固定するとされる
- 固定した後は、治療を続けても大きな改善は期待しにくい
- 聴力が戻らなかった場合でも、耳鳴りや聞こえのつらさの相談、補聴器の検討はできる
「もう遅いかもしれない」と受診をあきらめてしまう方もいますが、その後の生活を支える選択肢は残されています。補聴器を検討する場合は、補聴器相談医のいる耳鼻咽喉科に相談すると進めやすくなります。
参考:補聴器のやさしい解説|一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
めまい・嘔吐を伴う場合は当日中の受診を
聞こえにくさに加えて強いめまいや嘔吐がある場合は、緊急度が高くなります。次のような症状があるときは、様子を見ないでください。
- 周囲が回るような強いめまいで立っていられない
- 嘔吐を繰り返す
- ろれつが回らない、手足がしびれる、意識がもうろうとする
めまいを伴う突発性難聴は聞こえの低下が高度なことが多く、入院での治療が必要になる場合もあります。また、後半に挙げた症状は脳の病気が原因の可能性もあるため、その場合は救急外来を含めた早急な受診が必要です。
参考:「聞こえる」を大切にする 「聞こえにくい」「聞こえない」に寄り添う|厚生労働省
片耳の聞こえにくさが気になるなら愛知淑徳大学クリニックへ
突発性難聴は、症状に気づいてから受診までの時間が回復を左右する病気です。「疲れのせいかもしれない」と迷っている段階で、一度聴力検査を受けておくことをおすすめします。
愛知淑徳大学クリニックの耳鼻咽喉科では、耳・鼻・のどの一般診療に加え、聴覚障害や補聴器の相談、めまい・平衡障害の診療に対応しています。
アクセス・診療時間
- 所在地:〒480-1146 愛知県長久手市片平二丁目1401(愛知淑徳大学長久手キャンパス隣接)
- 電話:0561-62-1222(代表)
- 診療時間:午前の部 10:00〜13:00(受付9:30〜12:30)/午後の部 15:00〜18:00(受付14:30〜17:30)
- 休診日:土曜・日曜・国民の休日、夏季休業(8月12日〜8月17日)、年末年始(12月29日〜1月3日)
- アクセス:地下鉄東山線・本郷駅から市バス「猪高緑地(愛知淑徳大学)」終点下車/藤が丘駅から名鉄バス「愛知淑徳大学」終点下車/Nバス「淑徳大学」下車。駐車場あり(高さ制限2.3m)
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※本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、診断・治療を行うものではありません。症状や適切な治療は個人によって異なります。気になる症状があるときは、医療機関を受診してください。

