追究

2024年02月15日

ジェンダー・女性学研究所 第42回定例セミナー 「価値創造につなげるダイバーシティ&インクルージョン」

2023年12月15日(金)星が丘キャンパス 42F教室

大企業が実践するダイバーシティ経営についてのセミナーで、
多様性がビジネスの成功に結び付いていることを学びました。

 本学のジェンダー・女性学研究所では、性別による役割分業や人権侵害などに関する情報の収集・研究を進めています。そして「男らしさ・女らしさ」といった性差から脱却し、多様性を認め合える社会の実現を目指しています。
 その一環として本研究所では、学生たちのジェンダーに関する意識を高めるため、定期的にセミナーを開催。2023年12月15日(金)には、大日本印刷株式会社の根本和子氏が講師としてご登壇。性別役割意識が根強く残る日本の伝統的な企業が、新しい価値を生み出すために重要となる「ダイバーシティ経営」についてご紹介いただきました。

 根本氏は「多様性に乏しく、同質性・均一性の高い組織では、新しい価値は生まれない」として、一人ひとりの違いを尊重する「ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)」の推進が重要だと話されます。たとえば、女性社員が活躍することは、各企業・団体の特許取得率を見ると、女性がいるグループのほうが取得率は高いといいます。この結果について「組織内に多様性が存在することで、致命的な失敗につながる盲点を見抜けるから」と根本氏は分析されていました。
 同社がD&Iを推進するために取り組んでいることとして「トップによる発信」「D&I推進活動の可視化」「事実やデータの周知」「意見を出しやすい環境の整備」などを挙げられました。企業の代表が発信することで、「多様性を尊重している」企業姿勢を見せることができ、安心感や信頼につながるといいます。もちろん、姿勢だけでなく実際の取り組みをデータとして発信することも大切だと語られています。
 D&I推進活動を推し進め、性別に関わらず社員が活躍できる職場環境を整えるためのカギが「オールド・ボーイズ・ネットワーク」です。これは男性中心の文化や人間関係を表す言葉で、「お茶出しは女性の役目」といった男性がつくってきた暗黙の了解などにつながっています。オールド・ボーイズ・ネットワークが強い組織では多様性が失われ、女性の活躍やイノベーションが阻害されてしまうため、女性の管理職を増やし、性別役割意識を改善していく必要があります。そのためには「女性だけに活躍を求めるのではなく、組織全体が理解し支援しなくてはなりません」と根本氏はお話しされています。実際に同社では、多様性が職場にもたらす良い効果を共有するほか、さまざまな社員に向けた研修や新入社員が気軽に相談できるメンター制度などを導入しており、老若男女問わず社員が伸び伸びと働ける環境づくりを図っているそうです。

 最後に根本氏は「D&I推進活動のキーワードは“対話”です。対話がなければ、多様性も公平性も生まれません。今後社会に足を踏み出していく皆さんには、どのような人に対してもまずは対話することを心がけていただき、ダイバーシティの一員として活躍されることを期待しています」と、メッセージを送られました。

 D&I推進活動が企業や社会にどれほどの好影響をもたらすかを丁寧に解説していただいた今回の講演会。女性の活躍がさらに期待される現代で、企業におけるダイバーシティの知識を学生たちが得られたことは、社会に出てから大きなアドバンテージとなることでしょう。ジェンダー・女性学研究所ではこれからも、学生たちのジェンダーや多様性についての理解を促進し、物事を正しく多角的に見ることのできる人材育成を目指していきます。