交流

2026年09月01日

ダイバーシティ共生センター主催  学外体験学習会 in 豊田市保見団地

2026年7月11日(土)豊田市保見団地

豊田市保見団地を訪れ、団地の住環境を見学したり、住民のお話をうかがうなど、地域の多文化共生について学びました!

 本学のダイバーシティ共生センターは、本学理念「違いを共に生きる」を生涯にわたって大切にできる学生の育成を目指し、2024年に開設されました。
 今年度も学外体験学習会「多文化共生にふれてみよう!」が開催され、学部や学科、学年を超えて集まった11名の学生たちが、外国人住民比率が約6割である愛知県豊田市の保見団地を訪問しました。

 学生たちはまず、保見団地内のフィールドワークからスタートしました。 かつてゴミの不法投棄が問題となったゴミステーションや住宅建物の壁にスプレー缶の落書きが問題となった場所を見学しました。この壁のある25号棟のピロティは、2019年に団地の住民や関係機関、多くの支援者を巻き込んで発足した保見アートプロジェクトによって生まれ変わり、今ではかつての姿はありません。アーティストの支援を受けながら、団地に住む多くの子どもたちと大人が壁の描画にかかわり、数々の協働を通して完成したそうです。壁の姿が変わるとともに、地域も一緒に変わろう!という「壁を使って壁をなくす」という願いと想いが込められた保見団地の象徴的な場所になっています。また、2023年に全国公開された役所広司さん出演の映画「ファミリア」の撮影舞台として使用されたスポットなどを巡りながら、地域の変化を肌で感じ取りました。

 続いて訪れたのは、ブラジル食材をメインに扱うスーパーマーケット「FOXマート」。ブラジル人の店長さんから日本では珍しいブラジルの食材や食文化についての紹介してもらい、買い物を楽しみました。また、多くの外国人住民が利用するスーパー2階にあるフィットネスジムも見学。わずかの時間ながら、地域に根ざした人々の暮らしを肌で感じることができました。

 見学を終えた午後は、「NPO法人トルシーダ」の活動拠点であるトルカーザへ移動。 ブラジル人にとって欠かせない大切な食文化である「シュハスコ(ブラジリアンバーベキュー)」を実体験し、ブラジル料理をみんなで味わいながら、学生たちはリラックスした雰囲気の中で現地のみなさんと交流をスタートさせました。

 シュハスコの体験後は、トルシーダの伊東先生に加え、保見団地の歴史とともに歩んできた3名のゲストスピーカーをお招きし、貴重な語りを聞かせていただく時間をもつことができました。

1. 地域に根ざした支援と、共に生きる土台づくり(NPO法人トルシーダ代表・伊東さん)

 言葉の壁などにより、地域社会から孤立してしまう外国籍の方々は少なくありません。長年地域に寄り添い続けてきたNPO法人トルシーダからは、外国にルーツを持つ子どもたちへの学習支援や居場所づくり、さらには高齢化する外国籍住民の方々への生活サポートなど、多岐にわたる活動が報告されました。多文化共生は、こうした地道で温かい「日常のサポート」によって支えられていることを学ぶ機会となりました。

2. 摩擦を乗り越え、少しずつ育まれる「相互理解」(保見団地に40年以上在住の元自治区長・平野さん)

 外国籍の住民が増え始めた当初、ゴミ出しのルールや生活音など、文化や習慣の違いによる日本人住民との摩擦や戸惑いは少なくなかったそうです。しかし、40年という長い歩みの中で変化が生まれています。

 近年は日本に長く住み続けたいと願う外国籍の方が増え、日本のルールを積極的に学ぼうとしたり、自治会の活動に参加したりする姿が見られるようになりました。かつての「対立」から、歩み寄りによる「相互理解」へと、地域社会がポジティブに変化している様子が語られました。

3. 「無意識の偏見」に気づくことの大切さ(ザンビアにルーツを持つ日本国籍の住民・渡辺さん)

 ご自身の生い立ちを通して語られたのは、肌の色や外見の違いから受けてきた差別の体験です。

 「日本人に差別している自覚がなくても、最初から『外国人だから』『日本人ではないから』と決めつけて接してしまう言動が、当事者を深く傷つけることがあります」という言葉は、非常に重いものでした。私たちの中に潜む「アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)」に気づき、一人ひとりをありのままに見つめることの重要性を強く問いかける時間となりました。

4.境界線で揺れるアイデンティティと、個に向き合う願い(ブラジルルーツの住民・園田さん)

 日本の小学校に通いながら、放課後はブラジル人のコミュニティで過ごす。そんな環境で育った幼少期に、日本の社会でもブラジルの社会でも「自分は外国人(よそ者)扱いされている」という葛藤と深い孤立感を抱えていたことが打ち明けられました。

 多様性が尊重される今の時代において、国籍やルーツという大きな枠組みで人を捉えるのではなく、「目の前にいる『その人』とどう向き合うべきか」という、学生たちの心に響く強いメッセージが投げかけられました。

教室から地域へーー「違いを共に生きる」未来を描く

 実際に現場の空気を肌で感じ、同じ食卓を囲み、地域で生きる人々の切実な声に直接耳を傾けた学生たち。

 「悪気のない無意識の決めつけ」がどれほど人の心を削るのか。そして、「どのコミュニティにいても『よそ者』として扱われる葛藤」がどれほど孤独なものなのか。当事者の方々から語られた生々しい体験談は、文字を追うだけでは決して得られない、多文化共生の「リアル」を突きつけました。

 「ダイバーシティ(多様性)」という言葉は、美しい理想として語られがちですが、その実現の背景には、異なる文化やルーツを持つ人々が、時に摩擦を経験し、悩み、それでも互いを理解しようと歩み寄ってきた尊い道のりがあります。

 今回の学外体験学習会は、学生たちにとって「違いを共に生きる」とはどういうことかを、他人事ではなく「自分自身の課題」として捉え直す大きな契機となりました。

 一人ひとりが無意識の偏見(アンコンシャス・バイアス)を手放し、目の前にいる人の痛みに想像力を働かせること。その小さな歩み寄りの連鎖こそが、誰もが安心して自分の居場所を感じられる社会をつくる基盤となります。

 ダイバーシティ共生センターでは、これからも学生たちが社会の多様な現実と出会い、境界線を越えて「違いを共に生きる」力を育むための実践的な学びの機会を創出していきたいと思います。

学生の声

文学部国文学科 小澤季生さん

 外国ルーツをもつ方や支援者の方のお話を直接伺い、「悪気のない無意識の決めつけ」が人を傷つけてしまう現実に驚くと同時に、自分自身の接し方を見つめ直すきっかけになりました。この気づきを自分だけで終わらせず、誰もが過ごしやすい社会にしていくために、次の世代の子どもたちにどう伝えていけばよいのか、これからも考え続けていきたいです。