追究

2026年09月08日

高校生のためのスタートアップ心理学講座

2026年8月20日(木) 長久手キャンパス7号棟741教室

心理学部の教員が高校生を対象に一日体験講座を開催。
専任教員がそれぞれの専門分野について紹介し、
受講生は心理学を学ぶ魅力を実感しました。

 本学の心理学部では、2026年8月20日(木)に「高校生のためのスタートアップ心理学講座」を開催。心理学に関心を持つ高校生を対象に、専任教員がそれぞれの専門分野の心理学について講義をおこないました。心理学の概要をはじめ、生理・認知心理学、臨床心理学、発達心理学、社会心理学と幅広いテーマの講義を受けることで、心理学の多様性と奥深さに触れる一日となりました。当日の講座内容をダイジェストでお届けします。

1限 心理学とは/吉崎 一人先生

 「この写真は何に見えますか」という問いかけから始まった吉崎先生の講義。提示されたのは、1976年にNASAの火星探査機で撮影された写真でした。当時は人の「顔」のように見えて騒動になったと紹介したうえで、この出来事には、何でもない形や模様が顔などの意味のあるものだと錯覚する心理現象「パレイドリア」が関係しているのだと解説しました。また当時、錯覚による噂は瞬く間に広がりましたが、この現象にも心の仕組みが関係していると話します。
 心理学に対するイメージとして「心を読む」「性格を当てる」「悩みを聴く」などが挙げられます。大学で学ぶ心理学の中心は、「心の仕組みを明らかにするために、自らチャレンジすること」だと吉崎先生は説きます。疑問から仮説を導き、その仮説を確かめるためにデータを収集し、結果をもとにさらに疑問を深める。このプロセスを繰り返すことから「心理学は科学の一つです」と強調しました。そのうえで、大学で心理学を学ぶことで、「自分や他人への理解」「批判的思考」「社会人としての基礎力」が身につくと説明しました。

2限 生理・認知心理学/丹藤 克也先生

 丹藤先生ははじめに認知心理学の特徴について説明しました。認知心理学では、知覚・注意・記憶・思考・言語などの認知に関わるさまざまな領域を扱います。人間の心をコンピュータに見立て、情報がどのように処理されるのか、そのメカニズムを解明することをめざすのが特徴です。具体的な研究対象として、注意や記憶、空間認知と心的イメージ、言語理解とコミュニケーションなどを挙げました。
 講座の中心となったテーマは「誤りから解き明かすこころの不思議」。会話の行き違いを実演し、コミュニケーションにおける「文脈」の重要性を紹介。さらに、その文脈を正しく理解するためには、物事を捉える枠組みとなる知識(スキーマ)が不可欠であると解説しました。また、別の実例として「注意力」についても取り上げました。最後に丹藤先生は「認知心理学を学ぶことで人間の誤りやすさを知ることができ、それがよりよい社会づくりのヒントになる」と締めくくりました。

3限 臨床心理学/浜本 真規子先生

 はじめに浜本先生は、臨床心理学を「人の心を支援するために心理学を応用する学問」と説明し、その学びに関わる職業として公認心理師、臨床心理士などを例に挙げました。さらに、役割の一つである心理カウンセリングでは、どのようなやり取りがおこなわれているのかを、日常会話との違いを比較しながら紹介。浜本先生は「相談者の気持ちを受け止め、相手に関心を持っていることを伝えることが重要」と解説します。実際のカウンセリングでは、話を受容・共感し、相談者の主体性を尊重しながら感情を明確にしていくため、特に「聴く」技術が重要だと強調しました。また、心理カウンセリングの目的は悩みをなくすことではなく、相談者が自分自身に気づき、今後の人生を自分の足で歩んでいけるよう支援することだとまとめました。

4限 発達心理学/蒲谷 槙介先生

 「発達心理学の対象は人生のすべて」だと話す蒲谷先生。その中でも、人生の早期にあたる乳幼児期を対象に研究を進めています。「ここにいる誰もが経験してきたはずの乳幼児期ですが、『幼児期健忘』によって、3歳以前の記憶はほとんどありません。だからこそ、その時期の子どもが何を経験し、どのように発達していくのかを解き明かすことに面白さがある」と語ります。
 研究の一例として、胎児期からの学習に関する調査を紹介。生後2~3日の新生児にさまざまな声を聞かせたところ、母親の声に強く反応したことから、胎児期から母語を学習している可能性が示されたと説明しました。また、新生児が母親の顔をより長く注視するという研究結果もあわせて紹介しました。
 さらに、同じ刺激に対する乳児の反応の違いから「気質」について解説。未知のものに遭遇した際、信頼する大人の表情を手がかりに安全かどうかを判断する「社会的参照」や、大人が乳幼児にとって安全な避難所となる「アタッチメント」についても触れ、こうした関わりが子どもの健やかな成長につながると説明しました。

5限 社会心理学/小川 一美先生

 はじめに小川先生は受講生に「あなたはどんな性格ですか?」と問いかけました。「身長や体重は物差しがあるが、一般の人は性格を測る物差しを持っておらず、他者との比較の中で判断していく」と説明し、人はあらゆる面で他者の影響を受けていることを解説しました。そうした人と人との関わりに着目した心理学が「社会心理学」だと紹介しました。
 そこで、受講生全員参加による実験を実施。転校生に関する情報が書かれたプリントが配布され、その転校生に対してどのくらい好感を持ったか、仲良くなれそうかといった印象が尋ねられました。転校生への好感度や親しみやすさを評価した結果、最初に得た情報や印象がその後の判断に強く影響を与える「初頭効果」について、身をもって体感する機会となりました。また、自分の意見や行動が他人と異なるときに、周囲の人に合わせるように意見や行動を変える「同調行動」の事例とその理由についても解説しました。小川先生は「生活の中に潜むさまざまな出来事の理由を解明することで、学ぶ人自身の役にも立つ学問です」とまとめました。

心理学部の紹介/吉崎 一人先生

 吉崎先生による心理学部紹介では、学びの特徴や卒業後の進路に関する説明がありました。本学心理学部は、卒業時の学生満足度アンケートで大学全体の1位を誇り、21名の教員のもと、幅広い領域を学ぶことができます。1・2年次では心理学の基礎を学び、データの扱い方や分析方法など研究方法の基礎を修得します。3年次からは、専門的な講義と実習、ゼミナールへの所属を通して、より深い知識と高度な研究法を身につけます。4年次には、学びの集大成として卒業論文の執筆・発表に取り組みます。また、30を超える実験・観察・面接のための演習室を備え、充実した設備のもとで実践的に学べるのも特徴です。吉崎先生は「心理学を4年間、ぜひ学んでみてほしい。さらには本学で皆さんと会えることを楽しみにしています」と、受講生に語りかけ、一日体験講座を締めくくりました。