阿部 卓也/あべ たくや

メッセージ

メディアプロデュース専攻について(何を学ぶところ?)
「メディア」や「プロデュース」を専攻するとはどういうことでしょうか? どちらも比較的新しい概念ですから、何が学べるのだろうと疑問に思う人もいるかも知れません。ましてや、この専攻を卒業したとき、皆さんはどのような段階に進めて、何者になれると保証されているのでしょうか?
しかし実は「文学」や「法律」や「工学」といった、より歴史ある学問分野を含め、どんな専攻であれ、いまや大学を卒業さえすれば自動的に次の社会的ステージに進める、というモデルは崩壊しています。そんな中で、いま大学に求められる役割とは、むしろ学生の皆さんが様々な知識をつなぎ、自分自身を客観的に認識して、新しい目標やキャリアを自覚する転機となるような、メディア(媒介)の役を担うことだと考えます。メディアプロデュース専攻も、皆さんが確かな知を学びながら、一人ひとり創造的な未来を自覚的にデザインできるような場でありたいと、わたしは願っています。

入学したみなさんへ(しぶとく行こう!)
いまは、あなたが進むべき道の価値や確かさを、社会や大人が保証してくれない、困難な時代です。そこでは、異なる他者を受け入れる多様性や、勝手な思い込みに捉われない柔軟性がもちろん必要ですが、何よりも自分の取り組みにこだわりや執念を持つことが、とても大切です。何かを「やる」べきか「やらない」べきか。どちらにせよ、もっともな理由は無限に発明できます(あなたが何もしなくても、別に誰も困らないのです!)。だからこそ私たちは、ひとりひとりが自分で考え抜いたことを信じて、諦めずに続けることによってしか、何かを成し遂げることはできないと思います。お互いに、頑張りましょう。

担当授業科目

アカデミックスキルズ
研究法概説
造形基礎
デジタルコンテンツ実習Ⅱ(CG動画)(2022年度より「モーショングラフィックス」)
デジタルコンテンツ実習Ⅳ(DTP)(2022年度より「プリントメディア」)
メディア表現論Ⅲ(ヴィジュアル・メディア)
デザイン史
演習Ⅰa
演習Ⅰb
演習Ⅱa
演習Ⅱb
卒業プロジェクト

演習(ゼミ)について

テーマ:デザインの理論と実践をつなぐ

私のゼミでは、理論(「それは何?」をきちんと言える分析的なまなざし)と実践(実際にやってみる、制作活動をする)という2つを横断することを、もっとも大切にしています。ゼミ生ひとりひとりが、テーマや目標を自分自身で決め、実現に向かって自力で作り進めるスタイルで進めます。同時に、合評を通じてお互いの活動にアドバイスをしたり、企画展示の実現など社会発信のためにメンバー全員で1つのプロジェクトに取り組むなど、他者と協働する力を育てることも重視しています。表現ジャンルありきのゼミではありませんが、具体的には、グラフィック(ポスター等)、イラスト、エディトリアル(編集や本)、映像(短編アニメや実験映像)、アート/インスタレーション、そして研究論文執筆などをテーマにする方が、これまでのところ中心です。

【ゼミ生の研究テーマ例】
名古屋コーチン協会とコラボし、地域特産品を活性化する「ゆるキャラ」アプリを開発する
時間操作の技法を活用した、映像表現を追求する
漢字の運筆や筆勢を立体物として表現したアート・オブジェを制作する
メッセージを伝える公共広告を制作する
子供の描いた絵が服の模様になる、プロジェクション技法を用いたワークショップの開催
プログラミングで自然の造形美を再現する動的アートを作る
図書館から除却、廃棄された本を素材に、棺と死者を象るアート・オブジェを作る
MS Officeと無料フォントを使い、誰にでも可能なデザイン改善を研究する
同じ映像フッテージを使って、2人の監督が異なる映画を作る
ジェンダーの多様性をテーマに、連作イラストを制作する
古今東西のアニメ映像を再編集し、アニメ史をトリビュートしたマッシュアップ動画を作る
日本の映画館の公共性と観客の鑑賞態度についての、歴史研究の論文執筆

【ゼミ全体でのグループワークの例】
3Dで構築した仮想空間を、来場者が回遊して謎を解く、ゲーム仕立てのVRグループ展示
360°カメラ映像でリアルとウェブを組み合わせた、ハイブリッド型のグループ展示
地域の公共文化施設を会場とする3年生、4年生の合同展示会

研究課題・活動など

研究領域:メディア論現代デザイン史デザイン論デジタルアーカイブ学記号論

デザインを、技術やメディアと社会の交錯する場という視点から分析し、実践することが私のテーマです。最近の研究活動としては、戦前から21世紀に至るまでの日本における文字と書物のデザインの歴史を、光学装置を中心にした技術史の視点から捉え直すという論考の執筆に取り組んでいます。

デザイナーとしても活動しています(たとえば以下のような仕事をしています)。海外のNPO研究組織や、大学図書館の改革事業などでも働いてきました。一見バラバラの活動に見えるかもしれませんが、研究も実務も、個人制作も社会連携活動も、キャラもマンガも活字の本も、全ては「文字とイメージのあいだ」あるいは「デザインとメディアのあいだ」、という際(きわ)への関心で貫かれています。

「仮面ライダークウガ」キャラクター(怪人)デザイン
©石森プロ・テレビ朝日・ASATSU D.K.・東映

 

テレビ局CI(マスコット)「ゴエティー」デザイン
©岩手朝日テレビ

 

装幀/装画/ブックデザイン
(慶應義塾大学出版会、東京大学出版会、新曜社ほか多数)

(著書)
編著・装幀『ハイブリッド・リーディング:新しい読書と文字学』(新曜社、2016年)
分担執筆・イラスト/ビジュアルデザイン・装幀『いろいろあるコミュニケーションの社会学』(北樹出版、2018年)
分担執筆『デジタル・スタディーズ2 メディア表象』(東京大学出版会、2015年)
分担執筆『知のデジタル・シフト:誰が知を支配するのか』(弘文堂、2006年)
単著『杉浦康平と写植の時代』(慶應大学出版会、近刊予定)

画集『平成仮面ライダー怪人デザイン大鑑 完全超悪』(ホビージャパン、2020年)

(論文)
単著「写真植字の「発明」をめぐって(上)」(『愛知淑徳大学論集 創造表現学部篇』11号、2021年)
単著「戸田ツトムと杉浦康平」(『ユリイカ 臨時増刊号 総特集 戸田ツトム』、2020年)
単著「杉浦康平の文字組みスタイルの普及と1960-70年代の日本語状況」(『愛知淑徳大学論集 創造表現学部篇』10号、2020年)
単著「「ナール」「ゴナ」あるいは大衆文化の中の文字」(『ユリイカ 特集=書体の世界』、2020年)
単著「和田誠と杉浦康平」(『ユリイカ 特集=和田誠』、2020年)
単著「写真植字の普及と杉浦康平の実践」(『愛知淑徳大学論集 創造表現学部篇』9号、2019年)
共著「アジア・環太平洋地域のナショナルデジタルアーカイブ政策」(『東京大学大学院情報学環紀要 情報学研究』92号、2017年)
共著「図書館におけるミニレクチャプログラムの開発と評価」(『大学図書館研究』107号、2017年)

略歴

(学歴)
武蔵野美術大学 造形学部 基礎デザイン学科 卒業
東京大学大学院 学際情報学府 修士課程 修了
東京大学大学院 学際情報学府 博士課程 単位取得満期退学

(職歴)
フランス・ポンピドゥーセンターIRI 招聘研究員
(参加プロジェクト:市民向けフリーソフトウェアの開発、公共イベントの企画とそのためのグラフィック/エディトリアルデザイン)
東京大学 大学院 情報学環 特任助教、のち特任講師
(主要業務:新図書館計画における図書館改革の実践。図書館での学生協働、教職連携によるスタッフディベロップメント等)
以上を経て現職(2020年度より大学院 文化創造研究科 メディアプロデュース専修 准教授を兼担)。

その間、
武蔵野美術大学 造形学部 デザイン情報学科(記号論基礎、大学院デザイン情報学特論)
明治大学 情報コミュニケーション学部(記号論)
成蹊大学 文学部 現代社会学科(メディア論、情報デザイン論、発信する武蔵野地域文化)
東京大学 教養学部 前期課程(記号論、学術俯瞰講義)
などで非常勤講師。

(所属学会)
日本記号学会、大学教育学会、日本デザイン学会、デジタルアーカイブ学会

(受賞・個人名義)
第15回 立命館 白川静記念 東洋文字文化賞 教育普及賞、2021年
静岡市クリエーター支援センター ニュークリエイターズコンペティション 2009 キュレーター部門受賞(映像インスタレーション。甲元賢治、林俊之との共作)、2009年
第4回竹尾賞 デザイン史研究論文部門優秀賞、2005年

(受賞・参加プロジェクト)
第59回 科学技術映像祭 教育・教養部門 優秀賞(出演した科学ドキュメンタリー番組「ガリレオ X 〜読書の小宇宙 本と人とのこれからの関係」が受賞した。受賞者:ワック株式会社)、2018年
第17回図書館総合展ポスターセッション最優秀賞受賞(クリエイティブ・ディレクション/デザインを担当。受賞者:東京大学附属図書館 新図書館計画 課題検討グループ)、2015年
2013年度グッドデザイン賞(装幀を担当した書籍『プレゼンテーション・パターン:創造を誘発する表現のヒント』が受賞した。受賞者:井庭崇 + 慶應義塾大学 井庭研究室)、2013年
第1回岩手県屋外広告物コンクール岩手県知事賞 (マスコットキャラクターのデザイン。受賞者:株式会社岩手朝日テレビ)、2009年

(詳しい研究者情報)
科学技術振興機構researchmap(リサーチマップ) https://researchmap.jp/abetakuya/
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